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記者が挑んだ あばら家リフォーム【11】 襲い来るカビ

今にも抜け落ちそうな天井を覆い尽くす白カビ。20センチ大の白カビや黒カビの斑点が浮き出た聚楽壁。カビで腐食が進み、はがれ落ちたふすま紙。2020年3月にあばら家の再生を始める時、一番心配していたのがこれらのカビでした。

カビにとっては天国…

どれだけ手を入れたとしても、カビだらけでは安心して使うことができません。あばら家がある地域は蔵王の麓。山あいだけあって雨が多いですし、すぐそばを小川が流れているため非常に湿気が多い土地柄です。普段は人がいない建物なのでカーテンを閉めきっていて、日光が差し込むこともありません。あばら家はやつら(カビ)にとって天国のような空間でした。

天井はプロの業者さんにリフォームしてもらった(第1話参照)ので早々に片付きました。聚楽壁だって2カ月以上掛かったものの、しっくいを塗ることで再生できました(第4話参照)。残るはふすまです。しかし、これがまた、とんでもなく時間が掛かりました。

古いふすま紙をはがした状態

4月末、まずは、べろんとはがれ落ちたふすま紙を撤去しました。あばら家には合計16枚のふすまがあるので、垂れ下がったふすま紙をすべてはがします。強烈な湿気とカビによる腐食で、のりの効果はほぼ消えうせていて、簡単に取ることができました。

いったんは白く復活したが…

新しいふすま紙を貼りました

薄いベニヤ板のような下地材がむき出しになったところで、新しいふすま紙を貼っていきます。もちろん、もうカビが生えてこないようにと、紙ものりも防カビ剤入りの物を購入。のりを下地材の四隅に塗り、ふすま紙を貼り直しました。最後に丸い取っ手をくっつけたら完成。枚数が多いし、他の作業もあったので2カ月ほど掛かりました。

この頃、聚楽壁にしっくいを塗る作業も完了。カビの生えた薄汚れた聚楽壁と下地材が丸見えのふすまが白くよみがえり、部屋の中が快適になりました。

…と喜んでいたのは数日だけでした。時はまさに梅雨シーズン。あばら家が1年で最も湿気にさらされる季節です。次に作業に訪れると、のりを塗った部分に青カビが浮き出ていました。しかも、すべてのふすまに。防カビ剤入りの最新資材を物ともせず、のりを栄養分にして成長するカビ。まだまだ他に直す箇所があるので、あばら家を訪れるたびにカビをぬぐう応急処置でごまかすしかありませんでした。

すぐに浮き出た青カビ

最悪を想定し濃い青を選択

2021年3月になり、最大の懸案だった庭のコンクリート敷き(第8話参照)が一段落したことを受け、再度ふすま対策に乗り出すことにしました。ただ、ふすま紙を貼り直したところで、また同じことの繰り返しになる可能性があります。ここは思い切って別の方法を試そうと、壁紙の上にも塗れるという内壁用の塗料を使うことにしました。

ふすま紙と同じ白い塗料も検討したのですが、また青カビが浮き出てきたら目立ってしまいます。最悪の場合を想定し、青カビが目立たない濃い青の塗料を選択することにしました。もちろん、防カビ剤入りです。

一度目を塗ったふすま(左)

まず、ふすまを外し、四隅の木枠が汚れないようマスキングテープを貼ります。取っ手もマステで隠したら塗装スタート。はけでひたすら塗っていきます。どんな場合もそうですが、塗装のポイントは二度塗り。下地が白いから一度目は色が明るくなるし、塗りむらも出ます。二度塗りすると説明書通りの濃い色になり、塗膜もより均一になるのです。

二度塗りすると、きれいな青色になりました

塗料が乾かなければ二度塗りはできません。このため、全て塗りおえるのに1カ月ほど掛かりましたが、白いしっくい壁に青いふすまが映え、想像以上にきれいな仕上がりになりました。

トータルで1年を要したふすま再生。さて、今年の梅雨時は、どうなっていることやら。もし駄目だったら、カビを生かしてチーズ作りでもやろうかな。(生活文化部・桜田賢一)


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