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記者が挑んだ あばら家リフォーム【1】「崩落寸前の天井」

宮城県川崎町の蔵王山麓に一軒のあばら家があります。まだ国内の景気が良かった1973年、多賀城市の建設会社が保養目的で建てたのですが、バブル崩壊後は大して手も入れられず、だいぶ老朽化していました。そんな折、この建設会社が東日本大震災の津波で被災。経営不振が深刻化し、利用する人がいなくなりました。建築当時の社長は記者の祖父。2017年に亡くなり、母が相続することになったので久しぶりに見に行くと、建物はささやぶに覆われ、荒れ果てた姿をさらしていました。「これが唯一残った形見だから」。母の一言で再生を決意したものの、素人リフォームは苦難の連続でした。まだ途上ですが、2年近くにわたる廃屋との格闘をつづります。

(生活文化部・桜田賢一)

「3・11」以降手つかず

震災後、最初に屋内へ足を踏み入れたのは2019年4月でした。

あの「3・11」以降、誰も利用していないと聞いていましたから、少なくとも8年間、空気の入れ替えもされずに放置されていたことになります。人が使わなくなった建物は荒れる。よくそう言われます。ご多分に漏れず、子どもの頃から親しんだ建物は言葉を失うほどの状態になっていました。

雨漏りでもしているのか、居間の天井は今にも落ちてきそうです。湿気がものすごく、ふすま紙もはがれ落ちています。昔ながらの聚楽壁にはカビが繁殖し、手を触れるとぼろぼろと崩れます。風呂場の脱衣所も床がベコベコで、ちょっとしたことで踏み抜いてしまう恐れがありました。

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最もひどかったのが居間の押し入れ。恐らく、この上の屋根が破損しているのでしょう。雨水が柱を伝って染み込んだのか、床が腐り、穴が開いてしまっています。「うわあ…。地面が見えるよ」。人が使える状態に戻せるのだろうか。暗い気持ちになりました。

押入れ

業者さんに見積もりを依頼

とはいえ素人判断は禁物です。とりあえず専門家に見てもらうことにしました。業者さんに知り合いなどいません。でも、今は本当に便利な時代です。まるで中古車の一括査定のように、リフォーム箇所と希望金額などを書き込むと向こうから連絡してくるインターネットサイトがあると聞き、早速利用してみました。

「天井と床の張り替え、トイレの改修を希望。200万円前後に収めたいです」

記入すると、名乗りを上げてくれたのが5社。それぞれに建物の状態を見てもらい、見積もりを出してもらうと、150万~800万円と大きく幅があります。雨漏り対策をどうするかで違うらしく、最高額を提示した業者さんは屋根をすべて葺き替えることを提案していました。

プロに頼むのは最低限に

確かに屋根は葺き替えた方がいいのでしょう。でも800万円はとても出せません。テレビのリフォーム番組では1000万円、2000万円といった請負金額が提示されますが、あれは住宅のリフォームです。「普段住まない建物にそこまでお金は掛けられない」。プロにお願いするのは最低限にとどめ、残りは自分で施工することにしました。

ただ、どの業者さんにお任せするかは迷うところ。金額もそうですが、建物の状態の見立てもまちまちです。中には「これは雨漏りではなく、ハクビシンのような小動物のおしっこの可能性があります。人がいない家屋の場合、屋根裏に忍び込んで粗相するケースがよくあるのです」という業者さんもいました。

「いやいや、ハクビシンの尿で床に穴開く?」

心の中でそう突っ込んでみたものの、専門家に言われたら信じる人もいるに違いありません。記者の経験上、リフォームはトラブルの温床になりやすいと知っていましたが、こういうことなのですね。

2020年3月スタート!

結局、5社のうち過去に河北新報に取り上げられたA社に依頼を決めました。取材する側にいると時々感じるのは、堂々と取材に応じる人には確かな仕事を積み重ねてきたという自負があるということです。そういう会社は信頼できると考えました。

当初、手の施しようもないと思われたあばら家の再生は2020年3月、こうしてスタートしました。

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