銅色の鍵

高校の司書です。この仕事は地味で一般の人にわかりにくいようで、図書館内の仕事場面を入れ…

銅色の鍵

高校の司書です。この仕事は地味で一般の人にわかりにくいようで、図書館内の仕事場面を入れた小説を書いたら、こんな仕上がりになりました。 個人差があるので、これが全てではありませんし、書かれた小説はフィクションで、実際の人物や団体とは一切関係がないことをはじめにお断りしておきます。

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【小説】いつか扉が閉まる時(1)

あらすじ 高校の司書の先生が突然亡くなった。先生と親しかった図書委員の私はショックを受ける。ある日、先生が書いた日誌を偶然読んでしまい、自殺だったのではないかと疑う。  しばらくして図書館が再開されたが、先生の代わりは仕事をしない司書さんで図書館が荒れ始め、私は図書館の平穏を守るために奮闘を始める。将来の仕事をどうするか、働くって何なのか、考えながら高校2年の3学期を終える、私の物語。 ………………………………………………………………  うちの学校の司書の先生が、亡くなっ

    • これからも、この物差しだけで測り続ける社会のままなのか。(エッセイ)

         この方の記事を読んで、考えてしまった。  ※勝手に埋め込んで良いのでしたっけ(ご本人様に通知が行くらしいです)。書かれた主旨と違っていたり何か失礼だったりしたら申し訳ありません。以下も上の方の文章から引用しています。  学生時代に図書館がいつも近くにあったおかげで、より豊かな人生になったというエッセイを書いた。  それが答えだと思っていた。  図書館は、数値で測ることができない価値だと。 例えば、進学先について  進学校や塾なら、名門高校や名門大学への合格者数

      • 学校司書をスペシャリストのままで(エッセイ)

         公務員減を加速させるトップランナー方式のせいか、これまで高い割合で正規職員だった我が都道府県立高等学校司書も、非正規の割合が増えてきた。  それでも以前は非正規でも「司書」や「司書教諭(教員免許保持者が取れる)」資格持ちの経験者が常だったが、最近はそれすら崩れていて「学校あるいは図書館で働いたことがない、未経験の人」が充てられることも散見され、周りの学校司書に戸惑いが広がっている。  司書にも異動や退職、また病休・産休・育休があるが、自分が抜けた後に誰が来るかは大変重要

        • 10年以上前の本は存在価値がないのか〜学校図書館図書廃棄規準〜

          公益社団法人全国学校図書館協議会が2021年に改訂した規準。  学校図書館に新しい本が必要なのは、よくわかるのです。  でも、やはりこれ、機械的に実施されると学校図書館が成り立たないなあと日々本棚を眺めながら思っています。  これはあくまでも「平均」で、私の知る限り、予算が300万円という高校もある傍ら、30万円しかない高校もあります。  予算が数十万円しかない学校図書館では並ぶ本が古く、半分以上が10年以上前の本だと言っても過言ではありません。だからと言ってすべて

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        【小説】いつか扉が閉まる時(1)

          何でもかんでも捨てれば良いわけではない〜学校図書館図書廃棄規準〜

           公益社団法人全国学校図書館協議会が2021年に改訂した規準です。 (引用はすべて公式HPより)  この学校図書館協議会(SLA)には多くの都道府県・自治体の学校が会費を払って加盟しているはずです。  その通りです。   ◆そう、あくまでも 「拠り所」 です。  これを基に、自校図書館の蔵書を客観的に見直してみてね?ということであって、ケースバイケース、蔵書のバランスや利用状況を無視してまでこの通りにしなさい、ということではないはずです。  ただこの条文が独り歩き

          何でもかんでも捨てれば良いわけではない〜学校図書館図書廃棄規準〜

          【まとめ漫画】いつか扉が閉まる時③

           パート1はとりあえずこんな内容です。  学校図書館に限らず「仏作って魂入れず」みたいなことが日本のあちこちで進行している気がします。  法人化され非正規講師が増えて研究機関としての機能が難しくなった大学、ハローワークで働く人が不安定雇用の非正規、奨学金という名の借金に何十年も縛られ苦しむ人々。  各地に増える子ども食堂。数人に1人が貧困児童と言われて何年も経つのになされない改善。生活が苦しい中、搾り取られる税金…。  根っこはすべて同じところに繋がっている気がします。

          【まとめ漫画】いつか扉が閉まる時③

          【まとめ漫画】いつか扉が閉まる時②

          ※ワールドメーカーで作成しました。まだまだ慣れない… レファレンスについて 図書館ではレファレンスという、利用者の調べたいことを手助けする業務があります。  「この本ありますか?」みたいなものはさほど時間はかかりません。  しかし抽象的な上にこれまでその学校では無かった「急ぎの」問いがあると、対応できる本がほとんどないことがあります。予算が豊富だった別の学校図書館ならちょうど良い本があったのにと思うことも。結局限られた本棚の本とネット両方当たって探して、時間がかかる(数時

          【まとめ漫画】いつか扉が閉まる時②

          【まとめ漫画】いつか扉が閉まる時①

           world makerで作ってみました。NOTEなら場所を選ばず読めそうだし、このアプリ面白くて、つい…。でもまだ使い方はよくわかっていません。

          【まとめ漫画】いつか扉が閉まる時①

          漫画作成アプリ「World Maker」を、パソコンで使ってみた(エッセイ)

           学校図書館の話を漫画で描きたいと思うものの、絵の練習すらしない私、こんなアプリがあったとは!と飛びついてみました。  でもITに弱い私には難問でした…。  さて【小説】「いつか扉が閉まる時」、自分で書いておいてなんですが導入部分が明るくなくて、素人小説なのに余計に致命的な感じ…。  もちろん「2」以降のシリーズに有難くも「好き」を押してくださる方、ビューの数もまあまあありましたが、実際に最後まで読んでくださった方が果たしてどれだけいるのか。  私が「あなたの記事、好き

          漫画作成アプリ「World Maker」を、パソコンで使ってみた(エッセイ)

          ふふふの遺産(エッセイ)

           図書館での「前(さらに前、前々)任者」たちからの「負の遺産」を書いてみたくなりました。当時はあんまり笑えませんでしたが。 ◯書庫にある本たちの上の謎の白い粉  「(口に含んで)ぷっ(と吐き出し)、シャブだ」  とかではもちろん無く、ある学校図書館の書庫では、積もり積もったホコリとカビが本の上にこんもり(5ミリ程度)と乗っていました。  何校か異動して学校図書館を見てきましたが、そんなに掃除されていなかった書庫は、覚えている限りそこだけです。  (ただ、本が床に適当に積ま

          ふふふの遺産(エッセイ)

          『交換ウソ日記2』をいち学校司書が読んでみた(エッセイ)

          「読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?」  テキストを書こうとするとnoteで勝手にそんな言葉が出てきました。  お世話になっているnoteさんのご期待に応えられず申し訳ありませんが、これから書くことは「そこまで」感想ではありません。  今回は「2」を読むことになった経緯と、「2」の登場人物についての考察です。   学校司書の役割の一つとして、自校の蔵書を知ることが挙げられます。  勤務時間中は文庫の裏のあらすじを見るくらいですが、かなり前に先輩ベテラン司書に言わ

          『交換ウソ日記2』をいち学校司書が読んでみた(エッセイ)

          司書の仕事が楽だと思われるのは、なぜだろうか(エッセイ)

           何も知らない一般の方のSNSのみならず  人によりますが事務室とか教育委員会の態度とか、司書の待遇の全国的な悪さを見ていると「楽だ」と勝手に決めつけられている節があるようです。  司書の仕事に理解があるのは同業者(で仕事できる人)か、ご家族に司書がいる方が多かったです。  もちろんわかっている、あるいはわからないなりに「司書は別に楽ではない」と思ってくださる事務職員や先生方もたくさんいますが  そうでないケースがあり、それが待遇の悪さに直結しているようなので、私なり

          司書の仕事が楽だと思われるのは、なぜだろうか(エッセイ)

          司書は学校に1人は必要だ(エッセイ)

          ◯「学校図書館が救世主」 私の子供〜学生時代  我が家には絵本や子供用の百科事典があった。買ったか誰かからいただいたもので、読み聞かせもしてもらっていた。  そのおかげか幼い頃から本好きだった私は、やがて家にある本では物足りなくなる。しかし本屋に行っても、私の膨大な読書欲に対して少ししか本を買ってもらえない。  「需要」に対して「供給」があまりに少なすぎた。  そんな私の救世主は学校図書館だった。  小学校の図書館には頻繁に通った。  司書の先生との思い出もある。

          司書は学校に1人は必要だ(エッセイ)

          【小説】いつか扉が閉まる時 3年生・秋から冬にかけて(6)最終回

           私は気になって次の日も放課後、図書館に行った。後輩たちが本にフィルムをかけていたのが見えて、安心して帰る。  確かに共通テストまで間がない。  でも。  謎の衝動にかられながら私は毎日、放課後の図書館に向かった。  司書室を覗いて図書委員が作業をしていたらそのまま帰り、していなければ先生に声をかけて少しでも受け入れを手伝う。  そんなある日、久保が図書館に向かう私に声をかけた。 「最近、よく図書館に行ってるんだって?」 「なんで知ってるの」 「何人かの目撃情

          【小説】いつか扉が閉まる時 3年生・秋から冬にかけて(6)最終回

          【小説】いつか扉が閉まる時 3年生・秋から冬にかけて(5)

           期末テストは午前中で終わるので、その後、図書館に行ってみた。  扉には鍵がかかっており、司書室も暗い。  見ると図書館入口のカレンダーのテストの日すべてに、閉館を示す「×印」が付いていた。  多良先生ファンの男子の話では、昼休みは最近では田辺先生が1人で開けていることもあるそうだ。放課後の開館日は概ね多良先生がいるらしいけれど。  現状を確認したくて、2年役員を探しに教室まで向かう。  すると副委員長の園田君が廊下にいたので声をかけ、図書館のことを聞いてみた。園田

          【小説】いつか扉が閉まる時 3年生・秋から冬にかけて(5)

          【小説】いつか扉が閉まる時 3年生・秋から冬にかけて(4)

           久保のクラスの駐輪場には、自転車はもうあまり無かった。 「うちのクラスはさっさと帰るから」と自転車に鍵を挿す。 「で、さっきの話だけど、あのさ…藤井先生が亡くなった時、紗枝さん、先生の日誌見て泣いてたろ。それから増野先生とか結城先生の時とかさ、図書館を何とかしようと頑張ってたじゃん。だから、そうかなって」  私は久保の話を聞きながら、顔が真っ赤になるのを感じた。  見られてたの?気づかれてた?  確かに当番は久保と一緒だったけれど、日誌を読んで泣いていたことは誰に

          【小説】いつか扉が閉まる時 3年生・秋から冬にかけて(4)