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ふふふの遺産(エッセイ)

 図書館での「前(さらに前、前々)任者」たちからの「負の遺産」を書いてみたくなりました。当時はあんまり笑えませんでしたが。

◯書庫にある本たちの上の謎の白い粉 


「(口に含んで)ぷっ(と吐き出し)、シャブだ」


 とかではもちろん無く、ある学校図書館の書庫では、積もり積もったホコリとカビが本の上にこんもり(5ミリ程度)と乗っていました。
 何校か異動して学校図書館を見てきましたが、そんなに掃除されていなかった書庫は、覚えている限りそこだけです。
 (ただ、本が床に適当に積まれていたとか分類通りに並んでないとか、そもそも書庫が汚かったという話は残念ながら聞きます。
 ⇒物置ではないので、それもあってはならない負の遺産…)

 
 長年積もったホコリは微粒子となっており、たまたまいた工事関係者の方から「吸い込まないほうがいい。掃除するなら粉塵マスクをつけて!」と言われたほどでした。


 今ネットで検索したら「防じん(塵)マスク」という名称で出てきました。自腹で購入した粉塵マスクは、プラスチックの枠と分厚い不織布の組み合わせでできていて、装着すると密着して耳は痛いし息苦しい。

 小さなモップで本の上をぬぐうと、光の中に小さな粒が美しく舞いました。


 一体どれだけ掃除してなかったんだ。


 その教訓もあって私あるいは掃除担当生徒は、定期的に書庫の本の上も必ずミニモップで掃除します。


◯大きさが30m(メートル)の本

 司書は書籍データも作成します。今はダウンロードできる図書館ソフトがたくさんありますが、昔は手書き、その次はパソコンに手入力でした。
 
 書籍データとは
(ここから面倒な人は次の★マークまで飛ばしてください)

「登録番号(その学校での本の通し番号)、請求番号(本の背のラベルと同じ)、書籍とフリガナ、著者名とそのフリガナ、出版社、出版年月、内容、件名(内容を単語にしたもの)、大きさ、ページ数、何費で購入したか、所在はどこか(文庫コーナーとか、書庫とか)、値段」

 などで、すべてが大事なデータです。

 
 件名、内容、シリーズ名、副書名(サブタイトル)が入力されていると、本を探す時、キーワード検索で引っかかるので助かる。
 入力された情報が少ないと、キーワード検索にすら引っかからない。せっかくある本なのに役立たないということになります。
 だから可能な限りデータ情報を入れるのです。

 
 大きさやページ数は本を見つける手がかりの一つです。
 
 例えば異動したての図書館では本を探すのに手間取ります。

 閲覧室内だけでも、スペースの関係で同じ分類の本が
・文庫コーナー
・新書コーナー
・大型本コーナー
・辞書辞典コーナー
・郷土コーナー
・進路関係コーナー
・そして一般書架(上に当てはまらない、いわゆる普通サイズの本)

 などに分かれていることが多々ありますが、所在情報が細かく設定されている学校とされていない学校があります。

 
 別置コーナーがたくさんあるのにも関わらず、データ上の所在情報がざっくり「閲覧室内」だけの場合、そして請求番号に場所の違いがわかるようになっていない場合、(「文庫」は請求番号の前に「B」をつける、新書は「S」をつけるなど)

★司書は自分が見たことのない本を探す時に「書名」「著者名」「請求番号」だけでなく、「大きさ」「ページ数」を手がかりにします。


 だから大きさやページ数が入力されていないと時々困ります。
 その本が大型本コーナーにあるのか、一般の本棚にあるのか、それとも文庫?新書?と1冊の本を探すのに、数か所探さないとなりません。

 で。

 過去の手入力データ時代に、大きさが一切入力されていない学校に当たったことがあります。

 困ったのが蔵書点検時。
 100冊に1冊の割合で入力ミスが起こるという、貧乏が故に性能の悪いバーコードリーダーを使っていたので、点検後に出力した不明図書リストが「点検時の入力ミス」なのか本当の「紛失」なのかわからない本、約100〜200冊ほどの現物を探さないといけないのですが…

 
 1冊の本を探すのに、それぞれ最高で7箇所見ないといけませんでした。

 
 そのため私は未入力のデータを埋める作業を、仕事の合間に何年もすることになるのですが、過去の入力ミスも多々ありました。

 その中でこの章のテーマがありました。
 当然ながら

「30cm」

と入力したかったのでしょうね。
 
 30メートルの大きさの本なんかあったら、ギネスものだよ!と一人でふふっと笑いました。