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『交換ウソ日記2』をいち学校司書が読んでみた(エッセイ)

「読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?」

 テキストを書こうとするとnoteで勝手にそんな言葉が出てきました。
 お世話になっているnoteさんのご期待に応えられず申し訳ありませんが、これから書くことは「そこまで」感想ではありません。
 今回は「2」を読むことになった経緯と、「2」の登場人物についての考察です。
 

学校司書の役割の一つとして、自校の蔵書を知ることが挙げられます。


 勤務時間中は文庫の裏のあらすじを見るくらいですが、かなり前に先輩ベテラン司書に言われたのは

「自校の書籍はすべて目を通しておきなさい。読むのが無理ならあらすじか目次だけでも。特に自分が司書である時に買った本についてはなおさら」

 です。なるほど。

 自校の書籍を知らなければ「面白い本ありませんか」「こんな本ありませんか」という非常にざっくりした利用者さんからの問い合わせに答えることができませんものね。
  

ですが2,3万冊ある本を全部読むのは無理です。


 司書経験の積み重ねがあるからこそ、利用の一番多い分野「小説」で館内にあるものなら、こんな話だよと「あらすじ」は言えそうです。
 ミステリー、時代小説、ホラー、恋愛、ファンタジー等「小説のジャンル」程度しかわからないものも結構ありますが。

 もちろん図書館には科学、法律、商業などあらゆる分野の本がありますが、それらは背ラベルとタイトル、そして著者を見れば大体の内容はわかります(多分…)。
 なお自分が図書館用に本を買う時は、書店で現物を確認したりネットで予めリサーチしてなおかつ取捨選択してからなので、ある程度の内容は頭に入れています。あくまでも「ある程度」ですけれど。


 本当は館内すべての本を詳しく把握しているのが望ましいのですが、それはやはり難しいです。なぜならプライベートな時間を使うことになるから(当然、貸出手続き後の持ち帰り)で、そして自校の生徒向けなので私の趣味とは違う本がかなりあります。
 なぜ自分の自由な時間に、好きでもない本を読まないといけないのだ?なんて気持ちもあるからです。

 ただ。
 本好きの悲しい性なのか、ある程度読みやすい本なら意外と楽しく読めてしまい、そして読み始めたら最後まで読んでしまったりします。(読まないで結末だけ見ることも結構ありますが…)

今回『交換ウソ日記2』(櫻いいよ/著 スターツ出版)を読んだ理由

  
 映画化されて人気の『交換ウソ日記1』が貸出中で、新刊コーナーに『2』が残っていたからです。

 私は映画が公開されてから(映画は見ていないが2023年7月公開)「1」をさらっと読んで内容だけ把握しました。(当然持ち帰り)

 タイムリーだから「2」しか無くてもPRしたいが大丈夫か?という内容確認で読みました。

 こっちの話は丁寧に読んでしまいました。
 結論から言うと「1」を読んでいた方が登場人物の人となりはわかりやすいけれど、「2」から読んでも問題なしでした。
「2」は「1」の主人公の友人、つまり別の主人公の話だからです。

 

主人公の江里乃ちゃんが良かったです。

 生徒会副会長をしていてしっかり者。自分にも他人にも厳しい。
それ故に小さなトラブルもあって、悲しんだり傷ついたりしている。

 今回はそのトラブルの話を少し。
 完全に内容に触れますので、ネタバレが嫌な人はこのページから去ることをおすすめします。意味があるかわかりませんが、一応、江里乃以外はイニシャルにしておきます。

 ちなみに学校職員からすると設定が「?」と思ったところもありますが、こういうのは地域や、公立と私立によって違うのかもしれないので、そこは無視しています。

  ◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇

 生徒会に書紀のSさんという1年生がいる。
 この子が江里乃に「先週」頼まれていた資料を先生にもらうのを忘れていた。その資料がないと江里乃の仕事ができない。
 Sさんはへらへらと笑いながら謝る。
 江里乃はSさんに「じゃあ次の月曜日には用意しておいて」と、さらに幾つかすべき仕事を確認のために伝える。Sさんはメモも取らず「わかりました!」と返事だけは良い。
 生徒会長は予定していた仕事ができないから帰ろうとする江里乃に、なぜかSさんの仕事を手伝うように言う。
 江里乃はなぜ?と問い返し、「助けてばかりじゃSさんも成長しない」と言ってその場を去る。

 で、次の生徒会の集まりの日、やはりSさんは頼まれたことを忘れていた。それを江里乃に指摘されるとSさんは泣きそうになって謝るばかり。Sさんに「謝るよりも改善策を」と求める江里乃。しかし生徒会長はSさんをかばい、逆にSさんを指導した江里乃を責めるような言い方をする。

  ◆◇◇◇◇◆◇◇◇◇

 ちょっと省きましたが、概ねこんな感じ。
 江里乃のSさんへのセリフは、指導者だったら普通に言う内容だと感じました。そしてそれを生徒会長から「そんな言い方しなくても」など指摘されるほどでもないのではと感じました。
 本人の能力を蔑んでいるのでも罵倒しているのでもない。
 
 ・先週頼まれていたことを忘れていた。その時は許してもらって「じゃあ次の月曜日までに」と言ってもらった。
 ・なのに次の週も指摘されるまで忘れていた。

 ⇒それはSさん、先輩に叱られても仕方ないよなあ?


 生徒同士だからか(それとも話の都合上か)、江里乃の方がなぜか責められる展開になっただけで、職員からの指導だったら何ら問題がなさそうです。 そんな風に思うのは、自分が指導する側の人間だからでしょうか。

 世間的に常識やマナーとされることでも、誰が注意したかによって、相手の反応が変わるのはどうかと私は常々思っています。


 学校の先生相手なら言うことを聞くけれど、知らない人に言われたら反抗するとか、生徒同士で言われたらムカつくとか。もちろん注意のされ方や相手との関係性も絡みますし、ケースバイケースなので何とも言えない場合もありますが。

 このケースでは頼まれたことが個人の裁量を超えて荷重すぎたわけでもなく、生徒会の職務として正当性がありました。そのすべきことを忘れた人に対して、今後のことを考えたら指導しない方がおかしい。

 それなのに、そしてフィクションとは言え、たとえ先輩後輩であっても生徒同士だと角が立つのか〜、10代同士って大変だなあとなぜか考えさせられた一コマでした。
 
 Sさんに悪気はないのでしょうが、この子は他でも提出物を出さない、忘れ物が多いなど似たようなことをやらかしているはずだから、大勢の職員からの継続的目配りが必要だとかまで思ってしまいました。

 …このように本の感想にはなりませんでしたが、個人的には好きな話でした。大人が読んだら甘酸っぱくて懐かしくなるかもしれません。
 そして10代や20代ならスッと本の世界に入り込めそうです。 
 
 高校の学校図書館は卒業するまでの数年間しか使えません。そして本は意外とすぐに絶版になるので、読み返したい本であれば自分で買うこともついでにおすすめしておきます。