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手つかずの豊穣な大地のように … 、未来の時間が眠っている

 まずは、自分自身で『若者の顔』を表現する一文を思い描いてもらいたい。
 いきなり、そう言われても難しい。綺麗、未熟、発展途上、無謀、未来……等、まあ、不完全と未来とが、ごちゃ混ぜになった存在を表現する単語が羅列されるだろう。
 
『若者の表情はもともと物足りないものだ。人生の試練に直面していない顔には、大人の様に歳月が刻み付けた個性が表れないからである。しかし、その分若い可能性がある。手つかずの豊穣な大地のように先につながる未来の時間が眠っている。』
 
 上記の一文は、ある直木賞作家の作品の中のものである。絵仏師の主人公が若者の顔を描き表す際に感じた印象を、書いたものでいる。
 人によって評価は分かれるだろうが、わたしは感銘を受けた。これほどまでに若者の現実と未来を端的かつ明晰に表現した一文には、未だかって出会ったことがない、というと言い過ぎかもしれないが、それくらいに恐れ入った。
 目の前に、人が分け入ったことのない緑豊かな平野を見て、その大地が包含する豊かな未来と、切り開くための困難を想像する事はてきるだろう。
 しかし、初めて会った目の前にいる若者から、彼の現実と未来を判別するのは難しい。
 それを、優しく厳しく、そして、その未来を豊かに表現できるようになりたい。

創作活動が円滑になるように、取材費をサポートしていただければ、幸いです。