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「自分の頭で考える」を考えてみた。

「自分の頭で考えなさい。」

スポーツや部活動の場で、誰もが一度は言われたことがある言葉ではないでしょうか?

僕も言われたことがあります。

当時、思考力が皆無だった僕は、その言葉の意味がまったく分からず、トンチンカンな解釈をしてよく怒られていました。泣

ですが、今になってようやく、その言葉の意味を理解できるようになった気がするんです(おそい)

そこで今回は「スポーツの場面において、自分の頭で考えるとはどういうことか」について、自分なりに考えていきたいと思います。

以下の順序で考えていきます。

1.「考える」とは何か?
2.「パフォーマンスを上げる考え方」
3.「考えないこと」を考える
4.「自分の頭で考えなさい」の本当の意味

1.「考える」とは何か?

そもそも「考える」とは、どういう意味なのでしょうか。

ユングによれば、人の心には「4つの心理機能」が備わっているそうです。それは「思考」「感情」「感覚」「直感」です。人はそれぞれのフィルターを通して、物事を認知します。最も強く働く心理機能がその人の性格のタイプを表すそうです。

①思考(thinking)
客観的な視点で、物事を論理的に捉える。

②感情(feeling)
感情、気持ちを最優先に考える。

③感覚(sensation)
五感が感じたものをありのままに捉えて判断する。

④直感(intuition)
ひらめきで直感的に本質を捉えようとする。

これを文字通りに受け取れば、
考える → ①思
感じる → ②情、③覚、④直

となり、「考える」とは「思考の機能を使うこと」と言えそうです。ですが、僕はもっと広い意味での「考える」があるのではないかと思っています。

結論から言うと、それは「すべての心理機能(思考、感情、感覚、直感)を場合に応じて、意識的に使い分けること」です。

そもそも、ユングは「心理機能による性格のタイプ分け」を論じました。ですが、こと競技スポーツにおいて、「パフォーマンスを高めるために自分の身体をどう動かすかを考える」場合、得意不得意に関わらず、「思考」以外の機能を使わざるを得ません。それどころか、敢えて「思考」偏重にならないように「考える」必要さえあります。(つまり、「考えるな感じろ」ということを「考える」必要があるということです。)

例えば、試合の場では主に「直感」と「感情」にフォーカスします。なぜなら、頭で考えるよりも早く、「直感的に」身体を動かす必要があるからです。また、己の限界に挑戦するには敢えて「感情」に身を任せることも必要です。

しかし、心身一如という言葉にもあるように、そのような「直感」や「感情」は、「鍛えられた身体」あるいは「整った身体」の土台によって得られるもののように思えます。そして、その身体の土台を作るのは「思考」や「感覚」なのではないでしょうか。

「なぜ上手くいかなかったのか」、「どうすれば上手くいくのか」を「思考」し、本番に繋がる様々な負荷を身体に与えて、それを「感覚」で感じながら身体を鍛えていきます。

例えば、アメリカの大学陸上(長距離)の世界には身体の「感覚」に意識を向ける「in control」という考え方があるそうです。

“アメリカでの練習では高い負荷をかけることはあっても、常にin controlであること、つまり速く動かしながらもフォームや呼吸を極力乱さないことを意識するように言われる。”

このように、多くのアスリートは「思考」の上に成り立った「感覚」に意識を向けることでパフォーマンスを向上させようとします。

また、「課題を達成したら、あるいは勝てたらどんな気持ちになるのか」を「思考」することでポジティブな「感情」を引き出そうとします。いわゆるメンタルトレーニングと呼ばれているものです。

以上のように、アスリートはスポーツの場面に応じて、意志を持って「心理機能」を選び取ることでパフォーマンスを高めようとしていると言えます。先述したように、その行為そのものが広い意味での「考えること」なのではないか、と僕は思っています。

それらを踏まえて、「パフォーマンスを高めるような考え方」をするには、どのようなマインドが必要なのでしょうか。

それを考えるために「心理機能」とパフォーマンスの関係について考えていきます。

2.「パフォーマンスを上げる考え方」

ここまで「心理機能」について見てきましたが、これらが具体的にパフォーマンスにどう影響するのでしょうか。

前提として、パフォーマンスに直結するのは「行動」です。

よくスポーツでは気持ち(感情)が大事だと言われますが、多くの場合、感情の先にある「行動」がボトルネックになっている場合が多いのではないでしょうか。

例えば、燃えるような情熱(感情)があるため、人よりもたくさん練習ができる。あるいは、燃えるような情熱(感情)をコントロール出来ないため、練習をし過ぎて故障する。

このように、感情の先にある「行動」が良い選択なのか、あるいは悪い選択なのか、それは紙一重だったりします。何が言いたいかというと、あくまで重要なのは、感情の先にある「行動の正しさ」ということです。その正しさがパフォーマンスに直結します。

「感情」だけでなく、その他の心の機能(思考、感覚、直感)の結果として、選び取る行動は微妙に変化するでしょう。

例えば、あるトレーニングを行うとき。

試合と同じ負荷を与えたい」と考えて、行う。
身体がどう動いているか」を感じて、行う。
その場に集中すること」を考えて、行う。
身体をこう動かす」と考えて、行う。
直後の苦しさ」を考えて、行う。
今の楽しさ」を感じて、行う。

それぞれによって、トレーニングを行う際のモーションや力感に微妙な変化を生み、「見た目が同じように見えても、その中身が異なる」という現象を引き起こします。極論を言えば、ランニングの一歩一歩にかかる身体への負荷が変わります。つまり、考え方によってトレーニングの質(行動の質)が変わるわけです。今回は分かりやすい一例として、トレーニングを挙げましたが、栄養や休養の取り方についても同様です。

最大パフォーマンスに結びつく、最良の選択

たとえ同じように見える行動であっても「4つの心理機能」の選び取り方によってパフォーマンスが変わるということを考えてきました。

以上を踏まえ、仮にパフォーマンスを上げるための「最適な行動」が存在するのであれば、無限にある選択肢の中から、その時の最良の選択肢を選び取ることによってパフォーマンスが最も向上します。

それが「最大パフォーマンスに結びつく、最良の選択」と言えるでしょう。

アスリートはこのような「最良の選択」を目指して、4つの心理機能の中から「正しいと思われる選択」にフォーカスします。繰り返しになりますが、それが広い意味での「考える」行為なのだと僕は思います。

しかし、「最良の選択」を求めるあまりに、「選択のトライアンドエラーを繰り返すこと」は良策とは言えません。なぜなら、自分の中にある限られたリソース(意思力、集中力、体力、時間など)が分散されるからです。そもそも、多過ぎる選択肢は「最良の選択」を選ぶ難易度を上げてしまいます。

だからこそ、「より良い選択」を考えるためにも「先に選択肢を絞ること」を考える必要があります。

3.「考えないこと」を考える

選択の優先順位を決め、自分にとって本当に重要な選択を絞る思考」について書かれた『エッセンシャル思考』という書籍の中には、「膨大な選択肢の中から、重要ではない選択肢を手放す方法」がいくつか書かれています。

その中の一つとして、「20%の努力が全体の80%の成果を生んでいる」という「パレートの法則(80:20の法則)」が紹介されています。

パレートの法則に当てはめると、正しい選択(成果)のためには「80%の考えられる選択肢」を手放す必要があります。むしろ、20%以上を考えることは「考え過ぎ」だとも言えるでしょう。

80%を手放すためには以下のような手段が必要になるでしょう。

①最初から考えない(無意識に委ねる)
②考えなくてもできるように習慣化する
③信頼する他者に代わりに考えてもらう

トップアスリートはエッセンシャル思考が出来ている

トップアスリートの共通点として、「自分にとって必要な20%を考えることに長けている」という特徴が挙げられると僕は思いました。

少なくとも僕が見てきたトップアスリート(が上手くいっている時)は「自分が何に集中すべきか」を分かっている(=エッセンシャル思考が出来ている)ように見えました。

それは、事実として「彼らが集中する項目」と「パフォーマンス」が直結しているからだと思います。逆に言えば、それ以外の部分は案外テキトーに見えたりします。(どこか抜けていたり、無頓着だったり。)

いずれにしても、トップアスリートは成果を生まない努力をやめることが上手いとも言えるでしょう。

80%を手放すために、まず100%を考える

先述した『エッセンシャル思考』によれば、「非エッセンシャル思考の人は、何でも頑張ろうとし過ぎる」そうです。

それは当然で「自分にとって何が重要な選択かが分からないのであれば、手当たり次第に手を尽くすしかない」からだと思います。ただ、そのような(僕を含む)凡人は、「一旦、100%を考えて、20%に絞り込むというマインドセット」を持つ必要があるということです。

だからこそ、「正しく考えるためのマインドセット」として、以下のような手順を踏む必要があると思います。

①重要な20%を集中して考える。
②上手くいく。
or
③上手くいかない。
④100%を考えて認識世界を広げる。
⑤選択の優先順位を決める。
⑥重要でない80%を思考停止させる。
⑦重要な20%を集中して考える。

逆に言えば、このようなマインドセットがない状態での「知識を得るだけの学び」や「新たな行動」によって、闇雲に認識世界を広げることは、むしろ正しい選択を遠ざける危険性が高まるでしょう。なぜならリソースが分散され、本来集中すべき選択に集中出来なくなるからです。

以上から、「考える」以前に、先述したようなマインドセットを意識する必要があると思います。また、そうすることで身近で起こった突発の出来事に対しても、即座に優先順位を決められるようになるとも思います。

4.「自分の頭で考えなさい」の本当の意味

自分にとって重要な20%に集中する。
その中から正解を選び取る。
それだけでも容易なことではありません。

だからこそ、100%を考えるのではなく、正解が含まれるであろう、20%に神経を研ぎ澄ませる必要があります。冒頭の言葉、『自分の頭で考えなさい』の真意はここにあったのだと僕は思います。

僕に『自分の頭で考えなさい。』と言って下さった方は、おそらく僕の代わりに100%を考えてくれていたのだと思います。

僕のひとつひとつの言動から、

僕のどんな思考が
僕のどんな感情が
僕のどんな感覚が
僕のどんな直感が
僕のどんな行動が

僕のどんな練習が
僕のどんな能力が
僕のどんな動きが
僕のどんな機能が
僕のどんな技術が
僕のどんな道具が
僕のどんな環境が

僕の過去の
僕の現在の
僕の1週間後の
僕の1ヶ月後の
僕の1年後の
僕の5年後の
僕の10年後の

パフォーマンスを上げる上での
ボトルネックになる部分を分析した上で、

「最優先に集中すべき選択」を優先させるためには
どのようなタイミングで
どのような言葉がけが適切なのかを考えた上で、

その時のタイミングの適切な言葉として

『まずは、自分の頭で考えなさい。』

と言ってくれていたのだと思います。

さいごに

人は1日に60000回思考し、そのうちの95%は同じことを考えているそうです。だから「人の思考は固まりやすい」と言われたりします。

スポーツにおいても同様です。

もし、思い通りにいっているのなら、そのままでも構わないと思います。

ですが、もし、思い通りにいっていないのであれば?

僕は、いつもの思考の枠組みを越えて「考える」必要があるんじゃないかと思います。

考える」ということは、選択を真正面から捉え、問いを立てて、リーダーシップを持って、正しさを見出すことです。

その選択は間違っているかもしれない。
事態を悪化させるだけかもしれない。
落とし穴にハマるのかもしれない。

たとえそうだとしても、「自分の頭で考える」という行為を通して、新たな視点を獲得できるはずです。そして、それはいずれパフォーマンスを高めることに繋がるはずだと、僕は信じています。

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以上、今回は「スポーツの場面において、自分の頭で考える」ということを考えてみました。

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