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故障ばかりしていた僕が「ランナーが故障するメカニズム」を解説してみた。②

前回に引き続き、「ランナーが故障するメカニズム」について、実体験を基に解説していきたいと思います。なぜだか分からないけど、すぐに脚が痛くなるんだよなぁというランナーの方や「故障」について興味がある方、ぜひ最後まで読んでいってください。

前回のnote↓ 

故障ばかりしていた僕が「ランナーが故障するメカニズム」を解説してみた。①

前回は、故障までの過程を6段階(フェーズ)に分けて、脚が痛くなるメカニズムについて解説しました。それは次の通りです。

フェーズ0 フラットな状態(元の状態)
フェーズ1 単なる疲労・筋肉痛
フェーズ2 一箇所の強い張り(主原因)
フェーズ3 二箇所以上の強い張り(崩れた状態)
フェーズ4 軽度の痛み(主訴)
フェーズ5 故障 

そして、ハードなトレーニングを継続しつつ、脚が痛くならないための根本的なアプローチとは、フェーズ0〜フェーズ1をキープすることであるというお話しをしました。今回は、それについて考えていきたいと思います。

人間の身体はむずかしい

フェーズ0からフェーズ1を絶対的にキープする方法、それは残念ながらありません。

これは僕自身が痛感している事実なのですが、人間の身体はそんなに単純に出来ていないのです。つまり、これをしていれば、絶対に故障しないという方法は無く、どんなに気をつけていても壊れる時は壊れます。 

特にランニングは長時間同じ運動を繰り返すため、ちょっとしたズレによって、『エラー』が生まれ、特定の筋肉への負荷が知らず知らずに蓄積していきます。そして、身体を歪ませていきます。そのちょっとしたズレは、身体の意識の向け方やメンタルや自律神経や疲労などの様々な要因によって簡単に生まれてしまいます。それらを全て意のままにコントロールすることなど不可能です。 

痛みは不意にやってきます。どんなにケアに気をつけていたとしても。その時を待ち構えていたように「お前の身体はそんなに丈夫じゃないんだぞ」と警告してきます。 

フェーズを移行させる要因を考える

では、何をすればいいのか。それはトレーニングによって「フェーズを移行させる要因」を一つ一つ考えていくしかないんだと僕は思います。

まず前提として、あらゆるトレーニングにはメリットとデメリットが必ず存在します。この場合のトレーニングとは、ランニングのトレーニングだけでなく、補強運動やドリルやストレッチなどの全ての運動を指します。どこかの筋肉を動かそうとする時、デメリットとして、代償運動や過負荷による不具合を発生させるリスクがあるということです。だから僕は「やらないよりはやった方がいい」というトレーニングの考え方は非常に危険だと思っています。あらゆるトレーニングには危険(デメリット)があります。そして、「あるトレーニングに対してデメリットを考えるということ」は、すなわち「フェーズを移行させる要因を考えること」だと僕は考えています。

「フェーズを移行させる要因」を分かりやすく説明するために、「走る・休む」サイクルを簡単に図式化してみました。

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僕たちは「走る」と「休む(ケア)」のサイクルによってパフォーマンスを向上させようとします。「走る」という動作によって大なり小なり生じたエラーが積み重なって、身体のバランスが崩れます。そのため、「1.筋肉をほぐす、2.関節可動域を出す、3.動きを矯正する」といった「休む(ケア)」をすることで、このサイクルを回し続けます。

つまり、このサイクルに破綻をきたす時にフェーズが移行します。言い換えれば、トレーニングのデメリットを少なくし、エラーを少なくすることが出来れば、フェーズは移行しないということになります。

トレーニングのメリット・デメリット

では、ランニング時のメリットとデメリットを考えていきます。

例1.インターバルトレーニングを行う

【メリット】
・最大酸素摂取量(VO2max)が上がる
・乳酸性作業閾値(LT値)が上がる
・脚筋力が上がる 

【デメリット】
・オーバートレーニングによる故障のリスクがある
・間違った身体の使い方をしたことによってエラーが生まれ、身体のバランスが崩れる  

次に、休む(ケア)の「3.動きを矯正するトレーニング」のメリットとデメリットを考えていきます。

例2. 中臀筋が弱いため、骨盤が安定せず、ニーインしてしまう選手が中臀筋を強化する補強運動を行う。 

【メリット】
・中臀筋が鍛えられる 

【デメリット】
・既に中臀筋が固まっている状態の場合、その固まりをより強固にしてしまうリスクがある
・鍛えたいはずの中臀筋でない筋肉を使って補強運動を行ってしまうリスクがある
・中臀筋を鍛えているが、その他の場所(大腿四頭筋や広背筋など)を固めているリスクがある 

などなど…   

このように、あらゆるトレーニングにおいて、フェーズを移行させる様々なデメリットが考えられます。次は、これら一つ一つのリスクへの対処法を考えていきます。

リスクに対してどう対処するか? 

リスクへの対処法は次の3つです。

①どのようなリスクがあるのかを分析する。
・なぜ、エラーが生まれるのか。
・なぜ、偏った筋肉の張りが生まれるのか。
・なぜ、疲労が蓄積されていくのか。
・なぜ、正しい動きが出来ないのか。
②リスクを出来るだけ軽減させる
・身体がフラットな状態でトレーニングを行う。
・正しくトレーニングを行う。
・適切な負荷や量でトレーニングを行う。
・リスクを軽減するためのトレーニングを行う。
③リスクが許容可能かを決定する。
・トレーニングをやりながら負荷を修正する。
・場合によってはトレーニングを回避する。
・適切な処置をした上でトレーニングを行う。

そして、これらのリスクを減らすために必要な知識は次の通りです。

リスクを減らすために必要な知識とは? 

①「人間そのものを知ること」 
 ・人間の構造を知る。(機能解剖学・運動生理学)
・人間本来が持っている身体の使い方を学ぶ。
・脚が痛くなるメカニズムを知る。
・パフォーマンスを低下させる行動を知る。
・リカバリーの仕組みを知る。(栄養・休養) 
②「自分自身を知ること」 
・現状の自分のおおよそのパフォーマンスを知る。
・自分の身体の状態を知る。
・自分の実際のランニングフォームを知る。
・自分のメンタルの状態を知る。
・自分が故障をするパターンを知る。
・自分の弱さを知る。 

このように「あるトレーニングに対してデメリットを考え、対処すること」は、特定の筋肉への負荷を減らすことになり、それはすなわち「フェーズを移行させるリスクを減らすこと」になります。これは故障を回避するために最も重要なことだと思います。

そして、トレーニングのリスクへの対処はケースバイケースです。だからこそ、人間を知り、自分を知り続けることが必要なのです。競技者であり続ける限り、その探求に終わりは無いはずです。

冒頭で「人間の身体はそんなに単純に出来ていない」と言ったように、人間の身体は様々な要素が複雑に絡み合って形成されています。それらを把握することはとても難しいです。でも、だからこそ「伸びしろ」があるんじゃないか、とも僕は考えています。 

しかしながら、ここまできて堂々巡りの様になるのですが、リスクを恐れてばかりではハードなトレーニングを行えません。また、全てのランナーがここまで考える必要があるのか?と問われれば、決してそんなことはないと思います。「脚が痛くなる人」や「故障をしてしまう人」でなければ。 

ただ、僕は違いました。日々、身体のケアに気を遣っているのにも関わらず、ハードなトレーニングをする度に脚を痛めていました。だから、徹底的に自分の身体と向き合う必要がありましたし、自分の身体の専門家である必要がありました。それだけでなく、本来トレーナーに求められる能力(原因を見つけて、解して、整えて引き出す)でさえ、自分自身である程度、身につける必要がありました。『何も考えなくても故障をしない彼らとは違うんだ』と、はっきり認識せざるを得なかったのです。

そんな風に考えることで、僕はなんとかここまで走ってこられました。逆に言えば、僕にはこうするしか道がありませんでした。そして今、ようやく自分自身の身体を変えることが出来そうな予感がしています。だから、ここから絶対に変わってみせたい。そんな風に考えています。 

まとめ

最後にまとめると、 

故障を防ぐためには、フェーズを移行させる要因を考えることが必要。 

→フェーズを移行させる要因を考えることは、あるトレーニングに対してデメリットを考えるということ。 

→デメリットとは、トレーニングによって生まれる様々なリスクの事であり、それぞれのリスクに対して適切に対処することが必要。 

→リスクに適切に対処するには、「人間そのものを知ること」と「自分自身を知ること」が重要。 

ということになります。     

以上、2回に分けて書いた「脚が痛くなるメカニズムとその対処方法」は、あくまで経験則に基づくものです。これは僕がずっと知りたかったのにも関わらず、誰も教えてくれなかったことでもあります。一考察ではありますが、自分と同じように、故障で苦しむ誰かの参考になれば幸いです。

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