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キラキラアイドルが書いた小説なんてと思っていたけど

お笑い芸人やアイドルの方が本を出版することはよくあると思います。

小説を書いている方もいらっしゃいますよね。個人的に、芸能人の方が書いた本はそれだけで話題になるので、天邪鬼な私は読む気がしなかったりしていました。

しかし、それはただの私の偏見であったということに気付いた本に出会いました。

それは、ジャニーズでありNEWSのメンバー、加藤シゲアキさんの『チュベローズで待ってる』という作品です。この小説は2部作で構成されています。あらすじは以下の通りです。

「ホスト、やるやんな?」就活に惨敗し、自暴自棄になる22歳の光太の前に現れた、関西弁のホスト・雫。翌年のチャンスにかけ、就活浪人を決めた光太は、雫に誘われるままにホストクラブ「チュベローズ」の一員となる。人並外れた磁力を持つ雫、新入りなのに続々と指名をモノにしている同僚の亜夢、ホストたちから「パパ」と呼ばれる異形のオーナー・水谷。そして光太に深い関心を寄せるアラフォーの女性客・美津子。ひとときも同じ形を留めない人間関係のうねりに翻弄される光太を、思いがけない悲劇が襲う―。
第一部帯より引用
「君の意思なんかどこにもないんだよ」2025年。ゲーム会社に就職した光太は、気鋭のクリエイターとして活躍しながらも、心に大きな喪失感を抱えていた。そんな彼の前に、再び現れたチュベローズの面々。折しも、不気味な女子高生連続失踪事件が世間を騒がせ、光太が心血をそそぐプロジェクトは大きな壁にぶつかろうとしていた。停滞した時間が一気に動き出そうとするなか、否応なしに過去と向き合った末に、光太がたどりついた10年前の恐ろしくも哀しい真実とは―。
第二部帯より引用

昨年、友人から誕生日プレゼントでこの本をもらいました。加藤シゲアキさんの活躍こそ知ってはいたものの買おうと思ったことはありませんでした。普段あまり自分が読むようなジャンルでもなかったということと、やっぱり「アイドルが書いた小説」というフィルターが私の中にあったために、手に取ることはありませんでした。

しかし読んでみると読み始めた手が止まらないくらい夢中になって読んでしまい、あっという間に読了しました。

内容についてここではあまり触れませんが、設定も登場人物も魅力的で、本当に面白かったです。(現在再読中)

そして何より、私が感じたことは
文章が妖麗で、その世界に引き込まれる、ということです。

ホスト×ミステリー
という題材のこの作品ですが、ハラハラドキドキする展開の中でも、ホストという世界の妖麗さみたいなものが文章の中で失われずに書かれている。
色っぽさのある文章がこの小説の良さを引き立てているというか…。もちろん設定に合わせていると思いますが、それがすごく私にとって非日常な世界(ホストという世界)を感じさせてくれる、そんな文章だなと感じました。なんというか、すごくその世界を文章に込めるのがうまい、と言ったら上からになってしまいますが…自然だなと思いました。自然すぎてまるでその世界に自分も入り込んでしまう(その世界を知っているかの)ような感覚を味わえました。

加藤さんの作品はこれしか読んでいないのですが、他の作品でも、作品の世界に読者を引き込むような文章を書くのではないかと感じました。凄く他の作品も気になります。

私は世間で大々的に話題になっている本というよりかは、まだあまり世間に見つかっていないけど実は面白いという本を自分で探すのが好きで、芸能人というだけで話題になってしまう彼らの小説は正直、どこか敬遠していました。(おそらく書いている本人らからしたら一番それが不安要素やネックな部分になっているのではないかと思います)
でも加藤さんの作品を読んでみて思ったことは、他の人とは違う選ばれた者だけが立てる舞台や世界で生きてきた彼らだからこそ書ける魅力があると感じました。
表舞台に立つ人間なんてこの世のほんの一握りで、ましてや国民に顔を覚えてもらってるくらいの有名人なんてもっともっと少ないと思います。そんな彼らが生きている世界でしか感じない感情や感覚、体験といったものが彼らの書く文章に現れるのではないかと思います。それがまた他の作家さんと違う魅力があって、読者の心を掴んでいる。「アイドル・お笑い芸人・俳優が書いた小説」というフィルターは時に過去の私のようにどこか敬遠してしまうような部分もあると思います。ですが、彼らが書く小説だからこそ彼らにしか書くことができない文章がそこにあって、それがその本の魅力を形作る要素になっている。だからそういったフィルター越しにでもいいから読んでみてほしい。そのフィルターのことなんてきっと忘れてその世界に入り込んでいくと思うから。

キラキラアイドルが書いた小説なんて所詮、キラキラしたことしか書いていなんだろうなと思っていた私ですが、いざ読んでみると
キラキラアイドルが書いた小説だからこその魅力に気付かされました。
もし私みたいな天邪鬼さんがいるならば、食わず嫌いせずに読んでみるといいかもしれないですね。

あと全然関係ないですが、この加藤さんの本は友人からプレゼントでもらったことがきっかけで読んだのですが、人に小説を選んでもらうのも新鮮でいいなと思いました!

最後までお読みいただきありがとうございました。



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