見出し画像

彼を死に追いやったのは…

 昔さ好きな人がいたんだけど、告白できなかったの。
 人気者の彼が私のことなんて好きな訳がないと思っていたし…それに何より、彼に嫌われるのが怖かったんだ。
 だから私は告白しないと決めて、それを"嫌われない為に必要なことだ"と自分にいいきかせて、本当の想いから目を背けていたんだろうね。
 でも、現実は私の浅はかな考えを嘲笑あざわらって、容赦なく目を覚まさせるの。
 卒業式の日に彼が手紙を残して、自室で首を吊り亡くったということを知らされたのは、翌日のまだ太陽も昇りきらない早朝のことだった。
 未だ開ききらない目をこすりながら、朝食を済ますためにリビングへ赴いた私は母から彼が自殺したらしいと言われて、気付いたら彼の家に向かっていた。
 
 彼の家に着き、彼の母に会ったら一通の手紙を渡されて"今はすこしお落ち着きたい"と帰されたの。今考えたらお母さんの言ったことは当然なんだけど、その時は彼に会えなくて凄く悲しかったわ。
 自宅への帰り道で渡された手紙を読んだんだけど、その手紙というのが〇〇(わたし)のことが好きだが、うまく伝えられないと友人に相談したら翌日からいじめられる様になった。という内容だったの。
 手紙にはもっといろんなことが書かれていたけど、間接的に私が彼を死なせてしまったと感じたの。今となっては全くそんなこと無いとわかるけれど、あの時はまだ若くて、卒業式の日に彼に告白していれば彼は自殺しなかったのかなとか、私が彼と出会ってなければ彼は死ななかったとか、どうしようも無いことをずっと考えてた。
 その後はしばらくして落ち着いたからそんなこと考えなくなって、普通の生活に戻って今はもう、彼の顔もはっきり思い出せなくなってきたの。
 なんで急にこんなこと話したかって?それは貴方が昔、彼の母が私に向けた様な顔をしてたから心配で…
 ねぇ、〇〇ちゃん、もし悩んでるのなら…そっか、もう彼は…力になれなくて、ごめんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?