ワーママ@休職 飛び立つ決意
どうやら私は、復帰を待たれていない。上司から異動を望まれている。
たぶん私に聞かせるつもりはなかったことを、ほとんど事故のようにして、私は知ってしまった。
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抑えても悔し涙はぽろぽろこぼれた。
そりゃそうだもん、だって好きだったんだ。
仕事が。工夫をこらして感謝されることが。
夜の家事は、ほとんどうわのそらで、できなかった。
夜のとばりがおり、
しーんとする部屋のなかで、私は冴えてしまった頭をもてあまし過ごした。
それでも明け方に少し寝られたのは、育休復帰してから私なりに鍛えたメンタルのおかげかもしれない。
朝のひかりはいつものように変わりなく、カーテンの隙間から差し込んだ。
重いからだ、こころにむちうって、娘を保育園に送った。
その後は布団に沈みこんだまま、動けなくなった。
呪いは、ぐるぐると胸を締め付けた。
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こんなときは気持ちを吐き出すにかぎる。
いままでの苦労を全部話してきたばあばと、長ーい電話を。体から呪いをできるだけだした。
ノートを取り出して、いまの気持ちを日記に書いてみた。
ワンコイン銭湯に繰り出して、ほかほかになったからだに冷たい牛乳を流し込んだ。
つかの間のカタルシス。
はた、と、私は気づいた。
あれ、
これって、
もしかして、
チャンスなのでは?
娘と一緒に見た、ロケットの打ち上げ映像がまぶたのうらにひろがる。
整備士は着々とロケットを組み上げている。
打ち上げのときに向かって。
私はなにか大事なことに気づこうとしている。
すると、
ずきん!
別のイメージが一転ひろがった。胸を突き刺す呪いの光景が。
呪いの黒い炎は、這いつくばらせようと私を包む。
はっと我に返った。
私はすかさずイメージ。
脳内でバズーカをかまえ、アメコミばりにぶっぱなした。
こちとら10年以上修羅場をくぐった開発屋。
痛み、恐怖、プライドを折られること。それにへこたれるようでは、システムをリリースにもっていなれない。
私はふいに訪れたロケットのイメージの先がどうなるか、そっちをみてみたい。
また呪いがやってきた。
ワタシはそれにバズーカを打ち込む。
回転キックをくらわせる。
気を抜くと呪いはやってくる。
わたしは力をこめて手榴弾を投げつけた。
そうだった。
思い出してきた。
わたしのこれまでやってきたことは無駄なことなんかじゃなかった。
私は事を通して、大切なことを学んできた。
ポリシーをもって、熱心に仕事をする。私は小さな仕事も、その先にある笑顔を想像して励める。
それって誰にでも持ちうる心境でないらしい。
これまで仕事で感謝された記憶もよみがえってきた。自分でいうのもあれだけど、わりと指名をもらえるほうなのだ。
なんだ。
評価資料には空白かもだけど、ちゃんとあるじゃない。
他人のなかじゃなくて、
私のなかに、
価値は刻まれている。
胸に息を一杯に吸い込むと、
まぶたのうらでロケットエンジンに、火が入った。
エンジンの火はどんどん白く、強くなるようだった。
過去のnoteを読むと会える、頑張っていた私に触れるたび。
脳内で呪いにバズーカを打ち込むたび。
襲ってくる苦しみは、
むしろエンジンを鳴らす燃料に変わっていく。
そう、これはチャンスだ。
いなくてもいいということは、
どこに行ってもいいということ。
そうだ。
私は、自由になったんだ。
私は、これから自由に生きていいってことなんだ!
こころで叫んだとき、
ロケットは宙に向かって、雲を巻き上げ、飛び立った。
そういえば、
私はここ1年くらい悩んでいて、
もっと育児と両立しやすい仕事をしたくて、情報収集していた。
だから、次の仕事の方向性はみえている。
そういえば、
今の役職でお金を稼がなきゃと焦っていたけど、
激務だったぶん、貯金はしっかり貯まってたのだった。学費はいまの娘一人なら大丈夫。
子供を産んでからお金をよく考えて使うようになったし、案外、初心にかえって働いてもなんとかなるかもしれない。
地上はぐんぐん遠くなる。
それまでの立場への未練は薄くなっていき、
自由の宙の蒼さを感じるようになった。
サラリーマンやってたら、ときに左遷にあうときもある。
私もいつの間にかそういう年齢だったんだな。
左遷からはじまるあの物語のように、
私にも次の物語がはじまった。
わたしも、
周りを見返したいとか、
すごい成果をあげたいとか、
そういう気持ちは手放して、
自由な気持ちで仕事という試行錯誤を楽しみたい。
他人からみてたいしたことは成せなかったとしても、
そんなことはほんとは問題じゃなくて、
私が私を愛せる形で社会と繋がりたいと思う。
10数年振りに感じる自由は、
右にも左にもなにもなくて、
ちょっと心細さも感じるけれど、
いくつもの偶然が重なって私をこの必然に運んできてくれたから、
この無重力を存分に味わおうと思う。
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しょっぱい話をここまで読んでくれたかた、どうもありがとうございました。
なんかイメージが降ってきたのでいきおいで書いちゃいました。
これから先がどうなるか分からないけれど、なにがあっても生きてさえいれたら大優勝と思って、引き続き七転八倒していきますっ!