父と一緒に名作映画が観たい、ただただそう思った。
あぁ、お父さんも映画大好きだったよなぁ。早く実家に帰ってリビングでくつろぎながら、一緒に映画を見たいな。
私は父ほど映画に詳しくはない、物語に出てくるような名画座にも行ったことはない。
だけど映画を楽しむことがどれほど人生を豊かにするのかは教えてもらったつもりだ。
子供の時、まだレンタルビデオだった時代から、父はふと映画を借りてきては、皆で見るよとリビングに母、兄、そして私を呼び、
間接照明にしてみんなで映画を楽しむ時間を作ってくれていた。
そういえば、とふと思い出した。
私の父は映画を見て、自分の生きる道を決めたのだ、と。
そんなずっと忘れていたことを思い出さずにはいられない、あたたかいはずなのに、もう来ない懐かしい時間を振り返ってはちょっと切なくなる作品だった。
「キネマの神様/原田マハ」
39歳独身の歩(あゆみ)は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。“映画の神様”が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。
父が、子供の時から私と兄によく言っていた言葉は
「映画と本はいくらでも見なさい(読みなさい)」。
良作に触れなさい。と。
私は大の本好きになったが、映画は人並みでそこまで詳しいわけではない。
だけど映画の音楽は好きだったりする。
一番好きな曲は「愛と青春の旅立ち」。これを父と車の中で一緒に聞いていたことは今でも鮮明に思い出せる。
私は短大進学とともに、上京したので実家に帰れるのは年に2、3回。
たまの帰省中に、気になった映画を家で見ていると、父も気づけば一緒に見ている。
(それがディズニーのルンルンなミュージカル映画でも)
私が1人で映画を見に行くと、「何見るの?」「お父さんもそれ気になってた!明日お母さん誘って行こうかな~」と。
そして見てきた映画の感想を、ずっと聞いてくれるのだ。
子供のころはお父さん今日映画行ってきたんだよね~とこっそり話すこともあった。父は消防士だったので非番の日は昼間によく映画館に行っていた。
(映画好きな人なら父が何の映画に感化されたかわかるかもしれない)
学校から帰ってくると、洋楽を聞きながらコーヒーを飲んでいる父がお洒落で(本人には伝えたことがないけれど)好きだった。
そんな父と一緒に映画館に行ったのはいつが最後だろう。
この「キネマの神様」はコロナで亡くなってしまった志村けんさんの主演で映画化される予定だったと本作を手に取ってから知った。(代役の主演は沢田研二さんに決定)
(志村けんさんに、ゴウちゃんの役はぴったりだったろうなぁ。)
そうだ、この「キネマの神様」が公開されたら、なんとか帰省して父と一緒に映画館で見よう。読み終えてそう決意していた。
父は原田マハさんの小説もたくさん読んでいる。
小説好き、映画好きの父と観るには、これ以上の作品はない。
父はよく私の好きなものを一緒に好きになってくれる。
今度は私が父の好きなものを一緒に楽しむ番だ。
読んでいただき、ありがとうございました。
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