就職活動_04【建築学生が選ぶ進路先について】
皆さん。こんにちは。
Kaede Architect'sのなかむラテです。
今回は、以前も投稿したことのある建築学科の『就職活動』についてです。
▼以前に書いたコラム(全コラム中でも最も読まれたコラムの1つです)
就職活動で成功するコツは、『いかに準備できたか』に尽きます。
建築学科、特に「意匠設計で就職をしたい」と考えている方の採用試験は特殊で、「作品シート」や「ポートフォリオ」で自身の考え方や設計スタンスをアピールし、「即日設計」で提案力を見られます。
そして最後に面接で「人間性」を見られるといった感じでしょうか?
こういう採用方法である以上、準備には多くの時間がかかりますし、半端な知識では就職活動に失敗しかねません。
そこで今回は、「なぜうちの会社を選んだのか」という問いに対してしっかりとした建築業界の知識を持って臨めるように、意匠設計を希望する学生の就職先の候補であるハウスメーカー、ゼネコン、組織設計事務所、個人設計事務所(アトリエ)について、その違いや特徴を詳しく書いていこうと思います。
『就職先はどこにする?』
建築系の就職活動はなんと言っても時期がバラバラです。
ゼネコンや組織設計事務所は、優秀な学生の取り合いが顕著であることから、公になっていなくても、「12月には採用がスタートし、1月に内々定を貰う」といったかなり早い場合も少なくありません。
一方でハウスメーカーは、建築学科以外の人も採用を受けるため、通常の企業と同様に「4月スタート」の場合もあります。
また、個人設計事務所(アトリエ)は、採用期間は事務所によってそれぞれです。個人が経営しているので当然といえば当然ですが、採用試験もバイトから昇格するなんてこともあります。
皆さんがこの記事を読んで少しでも、明確な進路を立てられるようになれたら嬉しいです。
こういった採用期間がバラバラであるため、「自分がどこに就職したいか」をより明確にしておく必要があります。
行き当たりばったりで予想していなかった道に進むことも素敵なことだと思います。ですが、今回のコラムの目的は、『より明確に就職先を選べるようにする』というものです。
是非ご覧ください。
『意匠設計をしたい方の就職先』
先に書いたように、意匠設計で就職をしたいと考えている方の就職先の候補として挙げられるのは、主に『ハウスメーカー 、組織設計事務所、ゼネコン、個人設計事務所(アトリエ)』になります。
その他にも、確認審査機関(建物の法適合を判定)や役所などの行政機関、デベロッパー(不動産)、メーカー等に就職される方もいます。
また全く建築と関係のない職種に、建築学科で培ったプレゼン力やデザイン力を武器に広告代理店に就職する方も知っていますいたりします。
ですが、今回は『意匠設計をしたい方』に絞って書いていきますので、よろしくお願いします。
1.『ハウスメーカー』
これは文字通り住宅(House)を設計(例外としてアパートも設計したりする)する会社です。
メーカーと呼ばれているのは、住宅設計が『商品』として売られ、お客さんに合わせて細かく設計を詰めていくといった手法を取っているからです。
住宅商品は、自由に間取りをつくる『注文設計(自由設計)』と、いくつかの間取りパターンや標準仕様の設備から選ぶ『企画設計』があります。
注文設計といっても、0から設計していくものではなく、企業によってある程度「型」が決まっています。その「型」をベースにお客さんの要望に合わせて変化を加えていく設計になります。
設計の自由度は低く、設計者が「こういった間取りを設計したい」とか「こんな間取りにしたい」とお客さんが言っても、なかなか難しいです。
ただ、『住宅』いう小さな建物と言うこともあり、『お客さんと1対1で設計出来る』ことはメリットです。
実際に住むお客さんの要望を反映できるので、企業に勤めながらも「CtoC(カスタマーとカスタマー)」な設計ができる唯一な業種です。
一方で建築設計を生業にしている方の中には、「ハウスメーカー は設計ではない」と言う方もいます。しかし、ハウスメーカー がいかに「日本の社会に貢献してきた建築会社」に関しては、ほかのどの業種でもかないません。
▼詳しくは住宅に関してのマガジンを書いていますので、そちらをご覧ください。
2.『組織設計事務所』
これは設計を『組織でやる会社』と考えて下さい。
建築を作るためには、意匠設計だけでなく、構造設計や設備設計も必要になります。組織設計事務所と言うのは、社内の中に『意匠、構造、設備や積算』などの担当者がいる会社であると言えます。
また設計する建築は、ハウスメーカーに比べて多くなものが多く、小規模な住宅などは設計していません。
それはハウスメーカーやゼネコンは工事金をもらい工事まで担当するのに対して、組織設計事務所は設計のみを担当しており利益は「設計料(工事金の数%)」で成り立っているからです。
小さな建物は工事金も少なく「設計料」も少ないため、ハウスメーカーのように効率的に複数棟を設計しない限り会社として成り立たないからです。
一方で、お客さんは民間企業や市や区、国であるため、「設計」できる建築は大きな建築であるのが一般的です。「BtoB(ビジネスとビジネス)」な設計ですね。
また民間企業は建築によって、会社の売り上げを出します。(マンションを作って売る等)
そのため儲けを考慮すると工事金にかけられるコストも大きくなるので、事業主がOKを出せば『意匠的なデザイン』にも力を入れられる可能性があります。
建築雑誌に載るような建築を作りたい方は、大手の組織設計事務所を目指すとよいと思います。大手のほうが給与が高いですし。
ただ一方で皆さんが『大手設計事務所』を希望したいと考えていると思いますが、『中堅設計事務所』にも、大きなメリットがあるので、それは後程書きます。
3.『ゼネコン(General Contractor)』
組織設計同様に会社の中に『意匠、構造、設備』がいることは変わりません。
しかし大きく違うのは、『工事請負』も行うと言うことです。
先にも書いたように、組織設計事務所は「設計料」によって成り立つのに対して、ゼネコンは設計料の何倍もの工事金の中で仕事を行います。
現場によっては、工事金の諸経費によって多くの利益を会社に落とすことも出来るのです。
大きな利益が生じるため、ゼネコンは「給与が良い」のも特徴です。
しかし、ゼネコンは大きな工事金によって会社が成り立っているので、設計部署よりも現場が会社の中でも強いといった特徴もあります。
『デザインより現場優先』と考えている人も会社の中に少なくないではないでしょうか。
『大手ゼネコン(スーパーゼネコン)』では、デザイン力を発揮できるゼネコンもありますが、現場が稼ぎ頭であることに変わりはありません。
「設計も工事」もできるゼネコンがあるならば、「組織設計事務所なんていらないのでは?」と考えた方もいるかと思います。
『ゼネコンがあるなら組織設計なんていらない?』
設計も工事のことを意識して設計出来るし、工事金を下げつつも建築を提案できるのであれば、事業主にとって言えば「ゼネコンだけで良いのではないか?」そうであれば、「組織設計事務所はいらないのでは?」と私も考えたことがあります。
しかし、組織設計にはゼネコンにはできない役割があるのです。
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