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やりたいことが分からないという君へ

友人でありコーチング仲間である方から、
「就活を控え、自分のやりたいことや強み(が明確に掴めず)に迷う息子の話を聞いてもらえないだろうか?」との相談を受けた。
息子さんも自らの意思で話をしてみたい、と言ってくれてるそうだ。
私で良ければ是非!とお返事をして、今は息子さんからの直接のコンタクトを待っている状態。

どんなことを話してくれるだろうか、と今から楽しみで仕方ない。

また、こちらとしても、何かしら話のネタを用意しておく方が良いだろう、と最近頭の片隅でグルグルと常に考えていて。
今日、これだけは伝えたいな、と思えるメッセージが浮かんだ。

それは。
自分が大切にしている価値観を満たせる会社を探してみてね、ということ。

自分自身の就活の経験や、組織の中で、人事として多くの就活生とお会いさせていただいた経験にもとづくものだ。


私が就活をした当時は、いわゆる就職氷河期と言われる時代だった。
インターネットの波は来ておらず、手書きで応募葉書を書く or 電話で説明会の予約をする、というアナログなスタイルが主流だった。

腱鞘炎になるんじゃないかというほど葉書も書いたし、お昼休みは、同士&ライバルである就活生が、説明会の予約を試みようと、公衆電話には長蛇の列ができていた。

限られた説明会の枠に入るのも大変なのに、その後の書類審査も思うように通らず、その度、せっせと自己分析をしてみるものの、どんどん自信をなくしていった。
そんなサバイバルな状況で、「志望」なんてものは、いつしか置き去りになってしまって。
とにかく、どこかしらの会社の選考を突破すればいい。
志望動機なんて、二の次だ。
そんなマインドになっていた。

その状況でも、ここだけは!と思える業界があった。
それは、旅行業界。
学生時代に学んだ「語学」を活かし、世界を飛び回る仕事がしたいと思っていた。

そして、今も忘れられない、ある旅行代理店の面接がある。

私一人に対して、ズラリと7名くらいのおっちゃんが並んだ場で。
次々と圧迫系の質問が、飛んでくる。
冷や汗をタラタラと流しながら、懸命に答えている中で、耳を疑うような質問が飛んできた。
「ヨーロッパの地図を、左上から順番に言ってみてください。」というもの。

その瞬間、心が急激に冷めていくのが分かった。
「は?最終面接でそれ聞くの?? そんなの筆記試験の問題にでもしろや!」と、心の中で悪態をつきながら、国名を答えていった。

とても行きたい業界、会社だったけど。
なんだか心がシュン…と、萎えた。


結果を待っている期間に、教務課で仲良くしていただいていた先生からお勧めされたある会社の面接を受けた。
全く眼中になかった会社だったけど、
「人事の方がとても良い方だし、派手さはないけど本当に良い会社だよ。門脇さんにおすすめ!」と言われ、先生の顔を立てるとするか…と、完全に舐めきった受け身な状態で臨んだ。

だけど、蓋を開けてみれば、その会社の面接は、就活で訪問したどの会社のものとも異なるものだった。
志望動機や、入社後やりたいこと、などは一切聞かれず。
面接というより、雑談のような場だった。

私は、とにかく熱を入れて励んでいた学生時代の部活動の話。
留学先での珍エピソードや、刺激を受けた話など。
とにかく「よくぞ聞いてくれました!」と思えることを、心ゆくまで話せたし、話を聞きながら相手の人事の方は大爆笑していた。

結果、先の旅行会社からも、後者の会社からも内定をいただいたが、迷わず後者を選択した。
面接を通して、どの会社と相思相愛になれそうか、何を大切な価値観としている会社か、ということが分かったからだ。

あの時の選択は間違っていなかったと思う。

入社後は、人事に配属が決まった。
爆笑していた方々は、私の上司になり、社会人として未熟な私を本当に丁寧に育ててくれた。
高い技術力を持ちながらも、人を大切にするということを、正に体現している会社だった。

しかし、6年後。
私は、どうしても挑戦してみたいことが見つかり、転職を考えるようになった。そして受けてみたい会社に出会った。

その思いを、課長に打ち明けると。
こんな言葉を返してくださった。

是非受けてきなさい。
自分がやりたいと思える道は、そう簡単に見つかるものじゃない。
それが見つかったなら、絶対に目指しなさい。
仮に、万が一受からなかったら。
このまま一緒に働けばいいじゃない。そしてまた次のチャンスを狙えばいい。
他のメンバーは話してないんだよね?
であれば、僕ら二人の秘密にしよう。

と言って、背中を押してくださった。
課長のこの上なくありがたい言葉に、その場で涙を流した。

結果、志望したデザイン事務所から内定をいただき、デザイナーとしてのキャリアがスタートした。

あれから20年近く経つけども、今でも、その会社の皆さんとは繋がっている。
特に、同期は、出世をしたり、出産後復帰をしたりして、みんなバリバリと活躍していて、今でも時折会っては、お互いの近況を報告し合う。

当時の課長に背中を押してもらい、その後デザイナーとして10数年働いたのち、今は、再び「人」を支援する仕事をしている。

1社目にお世話になった先輩、上司の皆さんの人間力は、ものすごい影響を与えてくれたし、その後、色々な仕事をする上でも、土台&財産になっている。


有名企業だから。
お給料がいい会社だから。

それも、就活生にとっては重要な選択基準になるのかもしれない。
だけど、是非、そのもう一歩踏み込んでみてもいいと思う。

数十年前まで日本を牽引してきた有名企業は、果たして今の時代どうなっているか?
お給料が良い会社の実情はどうなっているのか?

書き出すと色々と思いが溢れてくるものだ。
友人の息子さんとお会いした際には、そんな自分の考えは、少し伝える程度にして。
しっかりと彼が自身の内側にある思いに向き合える時間にしたいな、と思う。

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