三行




見えているようで
見えなくなっている
終わりがくる眼鏡との関係

くるみ色の
二人掛けの長椅子を
人形遊びの舞台にしていた

父親が
いなくなった母と姉
感覚としてはいなかった私

何気なく
通っていた並木道が名を知って
花水木並木となる

わざわざ言うことではないことの
もう片方が
同調圧力になる

人混みを
フードを目深にかぶって歩きたくなる
ときには着ていないパーカー

窓の外
闇のどこかで盛る猫
その声が今日最も激しい感情

日当たりが悪いこの防音室にも
届くことがあるのか
月光

百円の
ラムネ付き玩具は手に持って
お母さんと並ぶ男の子

好きだとか
愛してるとか思ってなくて
ぼくの気持ちはまだ喋ってたい

公園で水面を見ながら
ぼうっとする
バイオリズムも自然のリズム

イヤフォンを
抜けてくる路上ライブ
コブクロで聞こえなくなるユーミン

側面と側面だけでなく
底面も天面もある
“正義”という言葉

具現化された死が
生けるものに手を伸ばす
みたいに寄せる白波

友はみな
社会を歩むとふと思う
道ばたの我に春風そよぐ

練習中のメヌエットが聞こえる
教室の生け垣の
乙女椿

若者の
過去はまだまだ短いが
至近でなまなましく見える

ビジネスで使えない
臆病者が
宇宙人侵略で生き残る



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