男の身長の話
男の子というものはみんな、「身長が高くなりたい」と願うものなのだろうか。生まれながらにして。わが家の男子たちを見てもそんなふうに感じる。
私は身長150センチの小柄、夫は自称180センチ(ほんとは178センチくらい)の大男。30センチの身長差は、例えばツーショットの写真を撮るときなどに、なかなか同じ画面に収まらず、夫が気遣って膝を少し曲げて、身長差を程よく是正している。子どもたちは、私には言わないけれど、心の中で「どうか身長は母ちゃんに似ませんように」と祈っていることだろうと思う。大きくなれよ~!
ところで私には、変なジンクスのようなものがある。そのジンクスの唯一の例外が夫なのだけど、「好きになった男の身長が165センチ」というものだ。結婚前にお付き合いした数少ない男性たち(3人)は皆、揃いに揃って身長が165センチだと言った。2人なら「あら、偶然」で終わるけれど、3人目もとなるとそれはもう都市伝説となる。決して身長に惹かれて好きになったわけではないのに。
そんなわけなので、ずいぶん前に熱烈な片思いをしたインド人には、
「変なことを聞きますが、身長は何センチですか?」
と聞いた。彼は、166センチです、と言った。
惜しいな、1センチくらいサバを読んでない?と思ったけれど。この人とはお付き合いには至らなかった。
今、なけなしの文章力を総動員して取り組んでいる小説の主人公、秋野さんにも身長を聞いたら、
「もともとは168だけど、今は縮んで166センチー。」
とのこと。165センチ伝説の話をすると、
「もしかしたら今は165くらいかな?」
だって。伝説に滑り込もうとしてる?
このくらいの身長の男性は、身長にコンプレックスを多少なりとも持っている可能性があるので、女性はその話題にたいして最大限のデリカシーを持たなければならないはずだけれど。それよりもこの伝説を確かめたくなるのだ。
繰り返し言うが、身長で選んでいるわけではないのに、かなりの確率で165センチ近辺の人ばかりを好きになっている。分析するに、150センチの私の視野にちょうど入りやすい、という要因はあるのだろうか。相手の首に手をまわして抱きつくにはまさに理想的な身長差だなあ、とは思う。胸と胸が無理なく合わせられるので、共感をしやすい身長差だと言えようか。人には「好みの顔」があるように、「好みの体躯」というものもあり、「身長」もその要素の一つを構成しているのかもしれない。
みなさんはいかがでしょうか?
(noteでときどき、「165センチのホテルマン」さんというお名前を見かけて、ぎょ!と思っています。私がいつも遠慮がちに質問していることを自ら看板に掲げていらっしゃるから(笑))
身長差の大きい夫とは、その分なのか、心の距離も遠いと感じる。私には夫という人がこの世で一番わからない、と思うことがある。そのくせ、手に取るように全部わかる、と感じることもある。心の距離が遠いからこそ、恋愛関係から早くに解き放たれ、長いこと一緒に家族を続けていられるとも言えるのだろうか。それは綺麗ごとか。一つ言えるのは、布団に入るとたちまち身長差なんて気にならなくなる。枕は同じ高さにあり、足が互いにどこまで続いているかなんて関係ないのだから。
以上、小説が煮詰まって駄文を書くの巻、でした。
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