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バランスボールを理学療法へ応用する

こんにちは、外来整形外科でPTをしています「かっちん」です。

私は普段リハビリ業務の中で、バランスボールを使用したリハビリを多く取り入れています。
ボールを使用したリハビリは、使い方によっては他にはない有効なリハビリツールになりうると考えています。そこで、私がなぜボールを使ったリハビリが有効だと考えているかをまとめます。

今回は詳しい使い方というよりは、概論的な内容となりますので、ボールを使用したリハビリやトレーニングに「興味はあるが、どのような特徴があるか分からない」という方は、是非最後までご覧ください。

バランスボールを使用したリハビリの利点とは?

患者さんへのリハビリ指導をする中で、トレーニング指導をする場合、どのようなことを意識して指導すれば良いでしょうか。
基本的なことではありますが、トレーニングには3つの原理があります。
せっかくトレーニングをするのであれば、ただ漠然とトレーニングを指導するのは勿体ないです。
3つの原理を念頭に置いたトレーニングをすることで、ただ漠然とトレーニングをするより、効率的に効果を引き出すことが出来ると言えます。

・トレーニングの3原理
 過負荷の原理
 特異性の原理
 可逆性の原理

3つの原理の中で、バランスボールを使用することで引き出しやすい部分として特異性の原理があります。
「NSCA パーソナルトレーナーのための基礎知識」の中で特異性の原理について、「トレーニングが最も効果的であるのは、筋収縮のタイプや動作パターン範囲、速度などの点が改善しようとするターゲット動作と類似している場合である」と書かれています。

例えば理学療法の場面で言うと、階段の降段が怖いという主訴のある膝OAの患者さんに対して、ひたすらレッグエクステンションでトレーニングをすれば、降段動作がスムーズに行えるようになるかというと当然そうではありません。降段動作は大腿四頭筋は求心性ではなく、遠心性に働くことが必要ですし、膝関節のみならず特に足関節との連動性も必要となります。さらには、重心の前方移動という要素も加わります。
レッグエクステンションにて、大腿四頭筋の根本的な筋力を強化することも必要ですが、それが出来たら降段動作に特異的なトレーニングへと進めなければならないということです。

例えば、ボールに座った状態で上体は垂直(もしくは僅かに前傾位)を保ち、ボール前方へ転がす動きをしたらどうでしょう。
重心は前方へ移動し、膝関節屈曲、足関節背屈、荷重下にて大腿四頭筋は遠心性へと収縮が入り、ボールによってやや免荷された状態で階段降段に特異的なトレーニングが作り出せます。

上記はほんの一例ですが、改善したい動作に対して特異的にアプローチする手段の一つとして、バランスボールは有効なツールとなる場合があります。

バランスボールで出来ること

バランスボールをトレーニングツールとして使用する場合に出来ることは、大きく分けると3種類です。

・転がす
・止める

・弾む
*番外編として、”投げる”という使い方をする場合もあります。

それぞれについて、今回は簡単に触れてみたいと思います。

”転がす”

上記した、ボールへ座った状態で前方へ転がすエクササイズも転がすトレーニングの1例です。
これより難易度の高いものの1例を挙げさせて頂くと、ロールイン・ロールアウトエクササイズがあります。

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ランニング競技をしている方の伸展型腰痛の場合、股関節伸展動作時に体幹スタビリティを保てるかどうかがポイントとなります。
その際、ただフロントブリッジなどで体幹スタビリティトレーニングを行うのも良いのですが、それが出来るようになったら体幹スタビリティを保った状態での股関節運動が必要となります。
ロールイン・ロールアウトエクササイズでは、体幹スタビリティを保った状態での股関節伸展というランニング動作により特異的なトレーニングが可能となります。さらにレベルを上げると、これを片脚で行うことが出来ます。

”止める”

ボールは圧を加えれば加えるほど、不安定となります。その不安定性を活かしトレーニングに応用することが出来ます。

ボールヒップリフトでは、背臥位で片側下肢をボール上の挙上し、片脚にてヒップリフトを行います。その際、殿部の挙上を意識するより、ボールを押し付けるように意識することがポイントとなります。これによって、脊柱起立筋の過剰な代償を防ぎ、股関節伸展筋群のトレーニングを行うことが出来ます。また、対側上肢で地面を押しながら行うことで、アウターユニット後斜系を意識したトレーニングとなり、立脚後期での体幹~下肢の連動性を意識したエクササイズとなります。

”弾む”

コアエクササイズとして一般的なものに「ドローイン」があります。ドローインは非常に重要なエクササイズの一つですが、それが出来れば立位や座位で体幹部を支える力となるでしょうか。
ドローインは基本的には背臥位でのエクササイズとなるため、ドローインが出来たからといって、立位や座位で重力に抗して体幹部維持出来るかどうかは分かりません。そのため、ドローインが出来るようになれば次は重力に抗したコアの使い方をトレーニングする必要があります。

ボールに座った状態で、ドローインにて腹圧を維持し(2way stretch等を用いると効果的です)、その状態でバウンドすることで体幹への軸圧負荷をかけるエクササイズとなります。バウンド中、重力負荷に抗して腹圧を維持出来れば、立位や座位での姿勢保持に特異性のあるエクササイズが可能となります。

まとめ

今回は、ボールを使ったエクササイズの一例を紹介させて頂きました。
ボールを使用することで、改善したい動作に対して、エクササイズに特異性を持たせることが可能となることがあります。

ただし、ボールをだけを使用すれば良いわけではありません。
ボールを使用する前段階で、的確な評価と必要な柔軟性や筋力を確保した後に、ボールでのエクササイズを行うことで体の使い方のコーディネーションをしていくという役割で用いることが効果的だと考えています。

今回紹介させて頂いたのは、ほんの一例ですので、今後さらに詳しいエクササイズ方法について記事を作成したいと思います。ご興味のある方は是非ご覧ください。

最後までご覧いただき、有難うございました。

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