異語り 014 已己巳己
コトガタリ 014 イコミキ
千葉に住んでいた頃にやっていたSNSは、三桁ほどフォロワーがついていた。
日々の食事や親子コーデ。娘が作るビーズアクセサリーやお絵かきなどを気の向くままに投稿していた。
中にはしつこく絡んでいる人もいたが、返信は顔見知りのみと決めていたので大きなトラブルはなかった。
ある日、娘の映画デビューに東京の映画館まで親子コーデでお出かけした。
鑑賞後声をかけられ振り返ると、自分達と全く同じ格好をした親娘が立っていた。
「○○さん(アカウント名)ですか?」
親娘に見覚えはない。私はとっさに「違います」と答えた。
母親はジロジロと私たちを眺めますと、少女の手を引いて離れていった。
娘は「同じだったね」と、ニコニコと笑っている。
私はうまく笑い返せないまま急いで帰宅。そしてすぐにSNSのアカウントを削除した。
少女がしていたネックレス。
娘が作ったのと全く同じビーズで同じ並び方をしていた 。
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