異語り 005 瓶詰め
コトガタリ 005 ビンヅメ
ある日ビーチコーミング中に大きな酒瓶を見つけた。
ランドセルくらいありそうな大きな瓶
ガロン瓶と言われるやつだろうか
その中に何か入っている。
「もしかしてたこつぼ状態?」
ちょっとわくわくした気分で、ずっしりと重いそれを抱えるようにして拾い上げた。
薄茶色に所々黒っぽいところがあるぶよぶよとした質感の物体がみっちりと瓶に詰まっている。
タコはこんな細い口からでも入れるものなんだと感心しながら観察していると、ぶよぶよがぐるりと回転した。
「うわ、生きてるのか」
分厚い瓶越しに二つの黒い丸と見つめ合う。
ちょっとした気持ち悪さに顔を引きつらせて固まっていると
黒丸の下がパカッと裂け、赤黒い穴とその周りに並ぶ白っぽい粒が見えた。
「うわあああああああ!」
次の瞬間 こみ上げる吐き気とともに瓶を思い切り海へ投げ飛ばしていた。
瓶は沈むことなくぷかぷかと波間を漂い沖の方へ流れていった。
あの裂け目に並んでいたのは、まちがいなく人間の歯だ。
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