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第91回 地 -相場環境-

前に「PEGレシオ」が使える環境と使えない環境があると書きました。
同様に、多くの投資判断の材料になる指数は、使える時と使えない時があるとも書きました。
それは、相場環境によって、「risk」そのものが変わるからで、多くの投資家が知らず知らずのうちに、その変化を意識しているからです。

さて、「孫子 第1篇 始計篇」は、戦争を始めるに当たっての「risk management」が書かれている部分になります。
必勝を期するためには、どのように「risk management」し、「risk hedge」に繋げて行くかが重要だからです。
その中で、まずは条件を5つに分けて「risk management」するよう書いています。
その条件は、「道」、「天」、「地」、「将」、「法」です。

この中で、「相場環境」に当たるのは、3番目の「地」です。
「地」とは地形のことです。
会社でも、地形って結構大事だと思いませんか!?
例えば、オフィスの階数、南向きかどうか、窓の大きさ、普段の風向き、駅からの近さ、周辺道路の混み具合なんかも地形の問題になります。

- エレベ-タがあるから、階数なんか気にしたこと無い -

なんてことを言う人が多いでしょう。
でも、エレベータが混んでて乗れなかった、なかなか下に降りれず電車を乗り過ごした、エレベ-タが点検中で階段を使って疲れた、なんて経験は無いでしょうか!?
どれも、それほど大きい問題ではありませんが、生産性を損なう「risk」を孕んでいることは理解できると思います。
つまり「孫子」では、このような「risk」の存在を把握し、「risk management」することによって、最大の効果を計算する必要性を説いているのです。

ですから、「相場環境」で考えても、多くの違いがあります。
まず、主要なところでは、「景気拡大期」と「景気縮小期」でしょう。
景気は循環しており、「拡大」、「縮小」が交互に来るので、その時々に応じた動きが必要になります。
企業でも、在庫を「拡大期」には増やしますが、「縮小期」には減らすでしょう。

次に、「社会トレンド」というものがあります。
今で言えば、「NISAの拡充」ですね。
NISAによって、個人の資金の多くが相場に流入しています。
特に今問題になっているのが、投資先を海外に求めて円安を誘発していることです。
また国内相場に限っては、個人が好きそうな高配当や好優待の銘柄を中心に買われています。

また、東京証券取引所の通知もあります。
昨年より、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を上場各社に通知しています。
これにより、内部留保が大きく、ROEが低い企業などは、改善点を開示したり、資本活動を積極的に行ったりするようになり始めています。

更に、サイクルの時に、「コンドラチェフ波動」で説明しましたが、「イノベーション(技術革新)」です。
直近では、やはり「インターネット」の普及でしょう。
最近は、AI(人工知能)が大きく取り上げられていますが、これは「インターネット」あってこその普及です。
半導体の拡大も、「インターネット」あってのものです。

さて、肝心の指数との関係ですが、「PEGレシオ」は「景気拡大期」に有用だと既に書きました。
実は、この特性は、成長性を図るための指標に共通するものです。
「ROE」なんかも、この部類に入ります。

逆に「景気縮小期」に意識されるのは、「PBR」です。
これは、成長性という不確実なものではなく、保有資産という確実なもので価値を図ろうとするからです。
他にも、「配当利回り」なんかが、この部類に入ります。

「PBR」なんて誰も使わないと考えている投資家は多いと思いますが、「景気縮小期」の大底では、大きく意識されます。
それは、東証一部、今でいう東証プライム上場企業の平均PBR0.8倍近くで底打ちになるからです。
リーマンショックでも、先日のコロナショックの時でも、平均PBR0.8倍が大きく意識されました。
株価的には、リーマンショック時は7,054円まで売られましたが、コロナショック時は16,552円までしか売られませんでした。
大底と言っても、株価的には倍以上違うのですが、どちらも平均PBR0.8倍程度でした。
指標の利用時期と結構大げさな書き方をしてしまいましたが、大雑把に書けばこんなもんです。

参考に、東京証券取引所の開示データへのリンクを貼っておきます。


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