見出し画像

かぶきDOU其の9アフタートーク



明治座昼の部千穐楽


今回もかぶきDOUをお聴きいただきありがとうございました。まずは明治座観劇レポからお届けしました。5/27明治座昼の部「不死鳥よ波濤を越えて 平家物語異聞」の千穐楽を観に行きました。
市川團子さんの2月博多座大歌舞伎 新三国志関羽編でのひたむきな関平役から3ヶ月たらずで、名将平知盛という大きなお役を急遽代役とは…
さらに40年以上前のスーパー歌舞伎のルーツとなった作品かつ歌舞伎レビューということでどんなものが想像がつきませんでしたが「とにかく見届けなくては!」という想いで足を運びました。
幕が開くと團子さん演じる平知盛が登場して朗々と歌い上げる演出でした。
歌舞伎では、歌舞伎役者さんの後ろで黒子がプロンプターの役割でセリフを教えることがありますが今回は歌唱があり、ストーリーのテンポが速く、そういったことも無理であったと思います。團子さんの不断の研鑽、そして澤瀉屋一門をはじめとする皆様のサポートの賜物かと存じます。
そしてストーリーと現状がシンクロする部分が多くあり、客席では至るところで涙ぐむ方がいらっしゃいました。私も途中から涙が溢れてとまりませんでした…
何より團子さんが平知盛の役を御自身のものにされていて、その成長ぶりにも感動しました。
フィナーレでは御出演の皆様の達成感がひしひしと伝わってきました。
今回、團子さん代役の舞台写真の販売はありませんでしたのでメディアに掲載された映像や写真が唯一の記録となります。
切ない思いはありますが、貴重な舞台を生で拝見できて本当に良かったです。御出演の皆様の一丸となった思いが千穐楽に込められていました。本当にお疲れさまでございました。


かぶきDOU解説 夏祭浪花鑑PART2

前々回から六月博多座大歌舞伎より、かぶきDOU解説をお届けしております。演目は夜の部で演じられます夏祭浪花鑑です。
かぶきDOU其の7では序幕住吉鳥居前の場のお話をさせていただきました。
本日のお題は「夏祭浪花鑑PART2」としまして二幕目難波釣船三婦内の場についてご紹介しました。
主に二幕目から登場のお役をご紹介します(6月博多座の配役でわかっている方々も記載します)

・団七九郎兵衛/片岡愛之助 松嶋屋
忠義に熱い男です。牢獄から釈放の便宜を図ってくれた侍、玉島兵太夫に依頼され御曹司の磯之丞を守り抜く決意です。罪を犯した堺を離れ、大坂にうつり名前を団七九郎兵衛と改めています。魚屋を続けています。

・兵太夫の子息 玉島磯之丞かつ道具屋奉公 清七/中村萬太郎 萬屋
絵に描いたような御曹司。ハンサムで恋多き人。おぼっちゃま故に金銭感覚に疎く、重大な事件を起こしてしまう。

・お中 磯之丞が奉公に入った道具屋の娘

・傾城琴浦/上村吉太郎 美吉屋
磯之丞に身請けされ公認の仲。嫉妬深い一面もある。

・釣船三婦/中村鴈治郎 成駒家
団七の兄貴分的存在。

・三婦の女房 おつぎ/中村歌女之丞成駒屋
世話女房で三婦にも負けない気概を持つ。

・一寸徳兵衛/ 尾上菊之助 音羽屋
団七九郎兵衛と義兄弟の契りを交わしています。玉島兵太夫とは同郷で縁があるので、九郎兵衛とともに御曹司の磯之丞に忠義を果たそうと奮闘する。

・徳兵衛の妻 お辰/中村雀右衛門 京屋
磯之丞の父、玉島兵太夫と同じ備中出身。容姿端麗かつきっぷの良さがある女性。

・大鳥佐賀右衛門 
浜田藩に仕える侍。琴浦に横恋慕し磯之丞を失脚させようと企てる

・こっぱの権、なまの八 
ともに佐賀右衛門の手下。磯之丞をゆする為に籠屋に扮したり、夏祭りに乗じて獅子舞に扮して三婦の家を偵察します。スパイのような働きっぷり。

・舅 お梶の父 三河屋義平次/嵐橘三郎 伊丹屋
前回、「お金に執着する」とお伝えしました義兵次がこの物語後半の大きな鍵を握ります。


歌舞伎はよりぬきの面白さ

前回お伝えしましたがこの「夏祭浪花鑑」は元々は人形浄瑠璃として作られており、実は9つもの場面で構成されています。歌舞伎は面白いところをよりぬきで演じられることが多いため、ストーリーがポンっと飛んでしまうことがよくあります。省略されている部分を知っておくと、より歌舞伎のお芝居に感情移入して楽しむことができると思います。特にこの夏祭浪花鑑では、どうして忠義に熱い団七九郎兵衛が舅を殺してしまうのか?その前段のストーリーとなります。クライマックスの殺しの場面の心情がよりグッと伝わるかと思いますので、そこを交えてご紹介いたしました。


二幕目 難波釣船三婦内の場

今日は、高津宮の夏のお祭りが開かれています。獅子舞も三婦の店先にやってきました。なんと獅子の間から佐賀右衛門の手下が店の様子を偵察しています。三婦の店先では匿われた磯之丞と、琴浦が休んでいますが琴浦は大変不機嫌です。磯之丞の女性関係に嫉妬しています。磯之丞は「据え膳と河豚汁を食わねは男のうちでない」、つまり女性からの誘いに応じないのは男ではないと琴浦に言い切ります。現代では大炎上してしまいますね。おぼっちゃまでイケメンな磯之丞だからこそ言える言葉でもあります。実は先ほど、磯之丞の奉公先の娘、お中が来ていたのです。

お中は舞台には出てきませんが、関係性がよくわからないかと思いますのでご説明します。
磯之丞は実家から勘当されてしまい九郎兵衛の口利きで、清七という名前で道具屋に奉公に出ます。この奉公先の娘が「お中さん」で、二人で駆け落ちをしてしまうんです。

きっかけは金銭トラブル

ある日、田舎侍が店にやってきて50両の香炉が欲しいといいます。それはちょうど仲買人の弥市がもってきたものです。50両といえばざっくりと計算しまして今の価値でおよそ500万円です! 高額なものが売れればお店での清七の覚えもよくなります。
磯之丞は道具屋の番頭 伝八に頼み50両を借りて、独断で香炉を仲買人弥市から買い取りました。
しかし田舎侍から「買うとは言っていない!」と購入を断られてしまいます。清七は番頭の伝八から50両の返済を迫られ八方塞がりとなってしまいます。
実はこれは琴浦に横恋慕する佐賀右衛門の仕業でした。奉公先にまで罠を仕掛けたのです。

田舎侍
仲買人弥市 →三人ともグル
番頭伝八

さらに複雑な人間模様として、お中は清七に恋しています。しかし番頭の伝八がお中に横恋慕しているのです。
道具屋に九郎兵衛が清七を迎えにきました。借りた金は少しずつ返済して行くことになりましたが、清七は自分がはめられたことに怒りを覚え、夜に再び道具屋に戻ります。帰宅した清七を見つけて外に出てきたお中を横恋慕する伝八が閉じ込めてしまいます。
そこに仲買人の弥市が、騙し取った50両を番頭の伝八に預けにやってきました。暗闇での分け前の受け渡しとなりましたが、実はこの金を受け取ったのは清七でした。清七は弥市を殺害し、なりすまして分け前の金を受け取ったのです。金を持って清七はお中と駆け落ちします。(※放送では分け前の文言が抜けており金額に誤りがありました。お詫びして訂正致します)
安居の森まで逃げてきた二人ですが、もはやこれまでと清七が遺書を書き、切腹しようとしたところに三婦が現れて、思いとどまるよう説得します。そして三婦のアイディアで追いかけてきた番頭の伝八を罠にかけて、首吊りに偽装して殺害することに成功します。 清七の書いていた遺書に細工をして、全て伝八に罪を着せる内容に変えてその場を去ります。
そして清七が手にした金は道具屋に返済することとなりました。
…このような背景があって、清七改め磯之丞は三婦の家に匿われているのです。


本筋に戻ります。先ほど三婦が道具屋にお中さんを送り届けました。巷では死亡した伝八の遺書は偽装ではないか?再捜査されるのでは?と噂が出てしまい、三婦と妻のおつぎは磯之丞と琴浦を別々に匿うよう決めました。
そこに徳兵衛の妻、お辰が現れます。徳兵衛の故郷での罪がとかれて備中に戻れることになり挨拶にきたのです。
おつぎから磯之丞を預かってもらえないかと相談を持ちかけられ「ぜひ預かりたい」と申し出ます。しかし三婦は猛反対。断る理由に「お辰の色気」をあげます。万が一、間違いがあったら徳兵衛に顔向けできないからです。(確かに磯之丞は恋多き性分のため、三婦のいうこともごもっともです…)
お辰は、火鉢から鉄弓を取り出してなんと顔に押し当ててしまいます。この鉄弓は祭り御膳用の魚を焼くために使っていた道具なので灼熱の温度です。顔に深刻なやけどを負いながらもお辰は「これでも色気がござんすか!」と啖呵を切ります。気迫の演技がこの幕の見どころです。
お辰の覚悟に、三婦は涙ながらに感謝し磯之丞を託しました。
そこに佐賀右衛門の手下のこっぱの権、なまの八がハッピ姿で「花代つまり琴浦」をよこすようせびります。三婦は威勢よく手下を引っ立てて花道へ向かいました。

入れ違いで九郎兵衛の舅、義兵次がやってきます。「九郎兵衛から琴浦を預かるよう言われてきた」とのこと。籠にのせて連れていきました。
そこへ九郎兵衛と徳兵衛が、佐賀右衛門の手下を退治した三婦と戻ってきます。
おつぎが事の次第を話すと九郎兵衛は琴浦が乗った籠の方角を聞き、祭囃子に乗せて慌てて飛び出していくのでした。
ここまでが二幕目 難波釣船三婦内の場となります。歌舞伎で描かれない部分も補足としてご紹介しました。
さて次回はどうなるのか?!
いよいよクライマックスの夏祭浪花鑑PART3をご期待ください!


縁の一曲〜中村萬太郎さん

続いては歌舞伎役者さんにゆかりの曲をご紹介する、えにしの一曲のコーナーです。今回は中村萬太郎さんでした。6月博多座大歌舞伎の夜の部 夏祭浪花鑑ではイケメン御曹司の玉島磯之丞役を勤められます。萬太郎さんは2021年NHK大河ドラマ「晴天を衝け」に、福沢諭吉役でご出演されました。
吉沢亮さん演じる渋沢栄一と萬太郎さん演じる福沢諭吉が初めて対面するシーンでは「新旧のお札の人が並んだ」とSNSで話題になりました。萬太郎さんご自身も慶應大学ご出身ということで正にピッタリのお役でした!
昨年開催されました国立劇場の歌舞伎鑑賞教室では演目の前に事前解説を勤められました。学問ノススメ、ならぬ、歌舞伎ノススメですね!若手注目株のお一人です。

♫佐藤直紀で「晴天を衝け」お届けしました。


めでてえなぁ 5/17-5/30がお誕生日の皆様


お誕生日を迎えられる歌舞伎役者さんをご紹介するコーナーです!5/17から5/30がお誕生日の皆さんでした。
※五十音順となっております

5/18中村七之助さん
中村屋
5/20 市川寿猿さん
澤瀉屋
5/20 尾上菊伸さん
音羽屋
5/21 尾上貴緑さん
尾上松緑一門
5/22 中村長三郎さん
中村屋
5/23 坂東彌光さん
坂東彌十郎一門
5/25 尾上菊史郎さん
音羽屋
5/26 市川段之さん
澤瀉屋
5/26 中村仲四郎さん
中村屋一門
5/28 尾上右近さん
音羽屋
5/28 片岡千太郎さん
松嶋屋
5/29 市川團蔵さん
三河屋
5/29 澤村由蔵さん
澤村田之助一門

以上13名の皆様でした。
お誕生日おめでとうございます!


次回のかぶきDOUは6/6㈫午前10:00〜生放送でお届けします。博多座船乗り込みや6月博多座大歌舞伎についてお伝えする予定です。お楽しみに!
番組のYou Tubeアーカイブはこちらからご覧いただけます↓

※権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりません。ご了承くださいませ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?