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いつもあるのは陽炎【タイ移住日記2024/05/07-08】

外を歩いていると、自分が揺れているのか、空気が揺れているのかわからない。バイクに乗ると目が焼けるように熱い。街の人々は感染症が流行ったときのようにマスクをしている。理由は異なり、タイのある種隠れた一つの季節ともいえるPM2.5対策のためだ。ここ3カ月ほど苦しめられ、大気汚染にも臭いがあるのかと知った。雨が降ったあとにはじんわりと肌に練り飴がつくかのような嫌悪感がある。でもその匂いは新しい季節の始まりを告げ、希望のはじまりでもある。

陽炎、私の心象風景に広がっているものである。陽炎がいちばんしっくりときた。

陽炎、この言葉を初めて知ったのは、ONEPIECEである。私は好きなキャラはと聞かれたらルフィの兄・エースと答える。どんな作品でも基本的に剣士キャラが好きなのでゾロも好きだが、一番印象に残っていると言われれば、やはりエースなのである。

彼は勇敢だ。どんなに強い敵にも各地で立ち向かう。強い心の持ち主であるだけでなく、ルフィが冒険を進める中で、エースが冒険中に各地で遺した思いやりの跡を発見する描写もある。いうまでもなく、彼が登場するシーンで一番メジャーであり、ONEPIECEを読んでいる人の多くが、山場だと答えるのは、エースが自由の象徴の絶対敵である海軍から襲われる弟・ルフィを守って死んでいく頂上決戦篇である。

その強き者、エースが使う代表的な技の中に陽炎(かげろう)がある。エースはメラメラの実を食べて、自身が炎になれる特殊能力を持つ。アニメでも、ゲームでもしっかり出てくる技だ。

小さいころから陽炎という言葉には「強さ」というイメージがあった。完全にエースの影響である。意味を知っている今でも、文字面では「陽の炎」と書くので、プラスかマイナスかのイメージで答えたら明らかにプラスの方だろ、と思う。

陽炎の意味を調べるとこのように出てくる。

自然現象としての「陽炎」とは、「地面から空気が炎のようにゆらゆらと揺らめいて立ち上って見える状態」をさしていう。

風景がゆらめいて見える陽炎は、文学の世界では「はかないもの」「のどかなもの」などの意味を帯びる。平安時代にさかのぼると、和歌の中で用いられる陽炎は、あるかなきかに見える、頼りなくてとりとめがないといった心情としてたとえられているケースが散見される。また、トンボの古称である「蜻蛉(かげろう)」と混用されて、はかないものやその心情をたとえる場合もある。時代が下り、江戸のころになると、陽炎は俳諧の春の季語として用いられるようになる。所出は江戸初期に編まれた俳書「毛吹草」で、句作に用いる言葉や資料を集め、句作の実例として四季に分けた発句、付合のうちの一つとして収録された。

Weblio辞書より


頼りなくて、とりとめのないもの。文学的にはそのような意味を付されることが多いらしい。

(漢字の)見た目が陽だけれども中身が陰がある感じ。この陽炎という言葉を調べて、私のようじゃないかと。

この日記を鍵垢のインスタにたまにリンクをつけてストーリーズに流すのだが、よく言われるのは「違う人が書いてるみたいだけど、ちゃんと本人が書いていて、違う私がそこにいるみたい」と。

決して外ヅラだけがいいわけでもなく、文章を書いているときは病んでいるわけでもない。たぶん文章は私がこれまでに吸収した文学からできている。そしてどちらの私も本音で生きている。忖度やウソはできない質なので。友人にバンコクにいくよ!と言われたら動かせない予定がない限りは予定付けていくし(どうしても都合が付けれなかったAくんごめんよ)、日本に帰ったら親に呆れられるぐらい毎日予定ガン詰めで遅くまで楽しみ、終バスを逃して迎えにきてもらっていた。

でも一人で考えるときの私は、乾季のチェンマイのように地面からの空気が立ち上り揺れているかのようにいろんな考えがそこら中から湧き上がってくる。それをすべて書き留めておきたいけど、そんなことはできない。でも充電に余裕があればスマホのメモアプリに日々書き留めている。

妻がそばにいるときは(仕事以外ではほぼ一緒の部屋にいてそれぞれの好きな事をしている)、考えていることを出して、反復させることでより豊かな思考を得ることができ、それがいろんな書き物に活きている。

エースのように勇敢にはなれないかもしれない。でも弟を守って死んでいった彼のように、常に人にやさしくありたい。

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