【婚活談】太鼓をかぶった女性に火の玉ストレートを放ってしまった話
どうもこんにちは。みなさんのかぼちゃです。
寒くてキーボードを打つのが嫌になって、しばらくnoteから離れてました。
さて、僕が婚活で主戦場としていたのはマッチングアプリだったわけですが、今回お話しするのはそこで太鼓を頭にかぶった女性と出会った話。もちろん実話。
ちなみに僕の経験上、デブ読者同志の婚活は絶対にマッチングアプリをやるべきだと思っています。むしろそれ以外要らないまであります。その理由はまた別の機会に。
スパイシーなプロフィール
当時、いつものようにアプリで素敵な女性を探していたら、なかなかスパイシーなプロフィールの女性を見つけました。
その女性は、好きなものにかなりハードコアなグロ漫画と筋肉少女帯を挙げ、プロフィール写真には本人の画像とよくわからない芸術性の高い絵画を設定し、「私の血はカレーでできています」というまさにスパイシーなメッセージを掲げていました。
はっきり言って、異質。だからこそ僕は彼女に惹かれ、実際に会ってみたいと思いコンタクトを取りました。
その頃、僕はデザイン系の仕事をしていて、プロフィールにもそういったことを記入していたので、幸いなことに彼女も僕に興味を持ってくれたようでした。
それからちょこっとメッセージのやり取りがあって、軽くお茶でもいきましょうということに。当日、どんな女性だろうとドキドキして待ち合わせに向かったのですが、実際に会った彼女はショートカットが良く似合う物腰の柔らかい女性で、まったくぶっ飛んだ様子はありませんでした。
話を聞くと彼女は芸術系の大学の出身で、普段は事務系のOLとして働きながらも趣味で制作活動は続けているとのこと。
「熱中できるものがあるって素敵なことだよね」というような会話を挟みつつその日は別れたのですが、その後二回ほど食事をして、三回目の食事を終えた後に彼女を家の近くまで車で送ったときのことでした。
彼女の芸術性が牙を剝く
車を停めて「じゃあまたね」とお別れしようとしたとき、
「かぼちゃくんに見てほしいものがあるから、ちょっと待っててくれる?」
と言われました。
「ん?ああ、わかったー」と答えると、彼女は車を降りて自宅へ戻っていきました。こんな夜中に何を見せられるんだろう…まさかムフフな展開か…!と思いながら待つこと数分。
前方の暗闇から、
忌々しい造形の仮面をかぶった女性がこちらに走ってくるのが見えました。
ああー…事件が向かってくる…。
まさに隠れていた彼女の芸術性が牙を抜いた瞬間でした。
「もう…超逃げたい…」と思いましたが、かえって刺されるかもしれないので、腹をくくって仮面女子と対峙することに。
車から降りて間近で見ると、粗削りな手作り感がより一層不気味さを醸し出しているだけでなく、それがスポットライトのように街灯に照らされていて…、傍から見たらもう完全に事案なレベル。
「おお…なんか事案だねすごいねそれ…」
「これね、こうするの」
そう言うと彼女は、おもむろに仮面の耳の部分にあたるところを左右交互に叩きながら、不思議なステップで踊りだしました。
これ、ドラクエだったらMPなくなるやつだわなんて思ったのですが、夜中の路上で忌々しい仮面をかぶった女が不思議な踊りを踊っている光景は、あまり勧められるものではありませんよね。他の人に見られる前にやめてほしい。早くやめてほしい。
そんなこんなで地獄の時間を耐え、僕のMPがちょうど0になったころ、彼女は踊りをやめて仮面を脱ぎました。やっと終わってくれた…でもなんて声をかければいいんだ…と思っていたら、
「ハァハァ…これね…仮面じゃなくて…ハァハァ…太鼓なんだ…」
なんか余計、かける言葉に困る告白をされました。
もう刺されても構わない
どうやら彼女が叩いていた、仮面の耳にあたるところが太鼓部分らしいのですが、正直よくわかりません。いや、もう何もかもよくわかりません。ひとまず「そうなんだぁ~…」的なリアクションでお茶を濁そうとしていたのですが、
「かぼちゃくん、コレ、どう思う?」
その時、一番されたくない質問をされてしまいました。困った。
もう僕は「なんて答えたら無事に帰れるだろう」ということしか考えていませんでしたが、まっすぐに向けられている彼女の瞳は、真剣そのもの。
おそらく彼女は、本当は芸術で食べていきたいと思いながらもOLとして働き、趣味で制作活動を続けてはいるものの、それを共有したり評価してくれる人はあまりいなかったのだと思います。ひとりで苦悩していたんですね。
そこで不意に現れた、自分のことをまったく否定しないデブに、彼女は心を開いてくれたのでしょう。
僕は腹を決めました。
もう刺されてもいいから、ひとりの芸術家である彼女の気持ちに素直に答えようと。
僕は改めて、目の前の芸術家に向き合って言いました。
「大切にしているものを見せてくれてありがとう。
でも申し訳ないけど、
あなたはそれで何を表現したいのか、僕にはわからない」
まさに、正論火の玉ストレート。もう刺されても構わない。
彼女は一瞬ハッとした表情を浮かべて、下を向いてしまいました。
無常に流れる時間。静寂に包まれるふたり。足元には忌々しい太鼓。
やっぱり刺されたくないです帰りたいですボスケテ。
「たしかに…これで表現したいものは…ないかもしれない…」
彼女が重たい口を開きました。
どうやら、何かを作りたい、作り続けなければいけないという気持ちが焦りに変わり、そもそも自分が何を表現したいのか、芸術家としての根本を完全に見失ってしまっていたようです。
ただ、目的もなく太鼓をかぶって踊るというのは、ちょっと見失いすぎのような気もしますが、彼女はひどくうなだれていました。
そのあとは「またよかったら他の作品もみせてね」的なことを話したと思うのですが、あまり良く覚えていません。
なぜか太鼓をかぶり直してトボトボと自宅に戻る彼女の背中が、やけに小さく見えたのが印象に残っています。
僕は「事案になるから太鼓は脱いで歩いた方がいいよ」なんてことも言えずに、ただ途方に暮れていました。
結論:太鼓はかぶってもいい
その後、彼女とは連絡が取れなくなりました。
真夜中の正論火の玉ストレートは、彼女に重く響きすぎてしまったのでしょうか。今となっては確認する術もありません。
ただ彼女から、太鼓は叩くだけじゃなくて、かぶって踊るくらいの柔軟さを持たなければいけないということを、無理やり学んだような気がします。
僕は彼女から感想を聞かれたときに、正直に答えたことに後悔はしていません。お相手が男性であれ女性であれ、やはり素直に、正直に向き合うことは大事だと思います。
ただし、スパイシーなプロフィールの女性にはご用心を。
かぼちゃ
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