未来とミライ、出発 【ネパール紀行】
日付: 2019/02/19
成田空港にて、全くもって、現実感がなかった。この先1ヶ月以上、日本にいないこと。なんならここからフライトがあることでさえ、信じられなかった。
この旅のために、半年以上前から計画を練り、貯金をし、ビザを申請し、道具を揃えてきた。最初は「海外の山見てみたいなー」という思いだけだったけど、「海外のお祭りも行ってみたい」と思いと合体した結果、「ネパールでエベレストを見て、インドでホーリー祭に参加したい」という気持ちになった。大きな気持ちには大きな準備が必要になる。準備をする、それ自体が目的となり、実際には「ミライのワタシ」という別人が出発するような気持ちとなってしまった。ミライのワタシと今の私は、段々と一体化していくものだけれども、一向にミライのワタシはワタシのままであり、今の自分と重なるイメージはとうとうやって来なかった。
だからこそ、出発当日、ミライのワタシさんがいよいよ僕に憑依する時、不気味な気持ちを抱いていた。出航のチェックインまでの潤沢な時間を、不気味から逃げるようにイロイロ ナ ミライの妄想に費やした。全てを投げ出してみる。このままUターンして、東京でぶらぶらと過ごす。いっその事、長野に戻り、スノーボード三昧の生活を送る。手に届きそうなイロイロ ナ ミライがあったけれども、どれも白々しい。どのミライにも僕はいなかった。
そうこう考えているうちに、チェックインの時間を迎えた。格安航空にも関わらずレーンは空いていた。気持ちが宙に浮いたまま係員のお兄さんに航空券とパスポートを見せ、110Lのザックを預けた。極めて事務的に処理を進めていたお兄さんだったけれど、全てが完了した時に僕を見つめながら、人としての言葉を発した。
「ネパールに向かう人、初めて見ました。よく分からないけど、楽しんでください!!」
エールにしては簡単で、適当、そして軽い。そもそも「よく分からないけど」という前置きはなんなんだ。だけれどもこの時、3時間後、ネパールに向かっている飛行機に乗っている未来の私を感じた、気がした。
よく分からないけど、楽しもうと思う。
そんな出発だった。
次回 「北京首都国際空港にて」
預け入れた110 Lのザック。歩くときはここにザックカバーをかけていた。
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