【#45】もしかすると、すべらない話
これは、大学生の時の話です。
サークルの友人と映画に
サークル帰り、大阪の梅田駅付近で友人と二人で映画を観にいくことになりました。
その友人は、まるでバチェラーに出てくるようなイケメンで、男子校出身だったからか、男子とは友達のように接す流ことができるし、女子とはまるで王子様のように紳士に接することができる人でした。
映画館に行くまで何を観るか決まっていなかったので、今やっている映画を物色していると、バチェラーが
「ゼロ・グラビティ」
を観ようと言ったので、ゼロ・グラビティのチケットを2枚購入しました。
まだ映画の上映まで時間があったので、近くのデパートに行きました。
バチェラーには付き合っている彼女がいたのですが、その彼女への誕生日プレゼントに指輪を購入したいとのことだったので、付いていきました。僕は指輪のことは全くわからない(彼女もいないし)ので、横目に見ていました。
無事に指輪は購入できたようで、そろそろ映画の上映時間なので、映画館に向かいました。
映画の前に「ちょっとトイレに行ってくる」とバチェラーはトイレに行き、僕は一人で席に座って待機していました。
映画が始まる
少し時間の余裕はあったのですが、バチェラーはトイレから戻ってきません。ちょっと遅いな?と思い携帯を確認すると、バチェラーから
「ごめん。財布なくした。」
と連絡がありました。
おいおい、もう映画始まっちゃうよと思い、
「とりあえず戻って映画を観たら?」
と連絡をすると、
「財布見つけたら戻るわ」
と返事がありました。
こうして、隣が空席のまま、ゼロ・グラビティを観ることになったのです。
「観たいと言った本人がおらんやん><」
映画に熱中
ゼロ・グラビティという映画は、宇宙の中で遭難になった女性が生き残るためのサバイバルをするという、すごく緊迫した映画です。
始まってからは、臨場感や主人公に訪れるハラハラとした展開に、終始熱中しました。宇宙には興味がなく、自分では観ようと思わなかった映画ので、思わぬ収穫でした。
宇宙空間で無重力の中サバイバルに合う、まさに「ゼロ・グラビティ」という名に相応しい映画です。
それを観たいと言ったバチェラーは隣にはいません。
空席。
まさに「ゼロ・グラビティ」。
そうです。観たいという本人が、映画館にいないことで「ゼロ・グラビティ」を自ら体現していたのです。
本当の「ゼロ・グラビティ」
ゼロ・グラビティを観たいという本人が映画館にいない。
もしかすると、彼こそが本当に「ゼロ・グラビティ」を楽しんでいるのかも知れません。
僕を含め、映画館に居る人たちは、そこに居る時点で重力がかかっているから座れているわけで、1グラビティな訳です。
そこにいないからこそ、ゼロ・グラビティになる。
おそらく日本で唯一、バチェラーだけが体験した出来事でしょう。
そして僕もまた唯一、ゼロ・グラビティを画面でも真横でも体験出来た人間でしょう。
ハラハラする映画でしたが、バチェラーも財布を探してハラハラしていることでしょう。
とても面白い映画なので、結末はぜひ自分で鑑賞することをお勧めしますが、バチェラーは、無事に財布を見つけました。
映画を観終わった後、出口に立っていた彼は、笑顔でした。
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