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偏見を集めて常識とし、常識を叩いて道徳とし。 鏡は何も教えてくれないことを知らず。 目…

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偏見を集めて常識とし、常識を叩いて道徳とし。 鏡は何も教えてくれないことを知らず。 目的地がないのに落とし穴のある道をただ惑い歩く。 ああ不惑、ただ乱暴に面白い。

マガジン

  • ものおもふ僕

    だらだらと思った事を書いたり、自作小説の解説などをしている文章群

  • 短編小説まとめ

    2000字~10000字程度の短編小説です。ジャンルは主に不思議な話、ホラー、日常系、ドラマなどです。シリーズモノも全部放り込んであります。シリーズ別マガジンもあります。

  • 短編小説『悪夢シリーズ』

    著者が実際にみた悪夢を短編小説に体裁を整えて書いたもの。

  • 詩と詩とふる雨

    過ぎ去った日々を鮮烈に蘇らせる一節の旋律のように、新たな季節の訪れを告げる一陣の風のように、耐えがたい痛みを和らげる一滴の麻薬のように、痛みそのものとして、一篇の詩を。

  • 短編小説『僕のちょっと怖い普通の日々 ~成瀬編~』

    大学生の『僕』が体験する少し不思議な話の集まり。基本的に一話完結で、2000字から10000字程度。随時更新。

最近の記事

料理中に指を切ったことから感じたこと

 料理中に誤って研いだばかりの包丁で左示指の腹を切った。  包丁はのこぎりと同じなので、垂直に圧迫するより、前後に動かした方が切れる。僕は前後に動かしてしまって、痛みが伝達する刹那でだいぶ切り進んでしまっていた。驚く程のスピードで赤い鮮血がまな板に数滴落ちた。  切っていたのはパプリカ、左手で持ち上げ、妙に立派なヘタ部分を切り取るためにV字に切り込みを入れようとして、指まで一緒に切ったということだ。パプリカと同じ赤い色が、まるで間違えたように僕の指の方から流れた。  慌

    • 大盛りを残してしまった時の精神的ダメージについて

       僕は相対的に育ちの良い人間に分類されると思う。これは驕りではなく、日本に生まれ、生命に不安を感じることなく生きてこれたことだけでもそうだと言えると思う。幼少期から直接的には祖母に育てられ、過度に甘やかされることも、厳しく躾されることもなかったと思う。裕福でも貧乏でもなく、人並み以上に他人を羨んだり、物欲に心を飲み込まれるようなこともなかった。  自我を認識し、精神的にも首が据わった子供時代には、『食べ物を残す』ことへの嫌悪、まではいかないが、禁忌なイメージが自然と定着して

      • 短編小説『赤い夢』悪夢シリーズ

         通い慣れた高校までの通学路と、その周辺の街並みは、アスファルトの凹みや、民家の塀の汚れに至るまで、なぜか鮮明に覚えていた。  でも、今の僕にはそれらを懐かしむ余裕はなかった。  黒くてグルグルと渦を巻く得体の知れない物質が、僕の体に纏わりついて、口の中から体内に入ろうとしてくるからだ。それは光を反射するヌメヌメとした質感で、ウミヘビを連想させた。  僕はそいつを必死で払い除けながら、通学路を走っていた。  周辺視野がぼやけてよく見えない、苦しくて”えずき”ながら必死で

        • 短編小説『同窓会の夢』悪夢シリーズ

           車窓に張り付いた雨粒は、過ぎ去る夜街の光をにじませて、まるで抽象画のように再構築した。僕は物思いにふける文豪のように、ひじ掛けに頬杖をついてその名もなき名画を眺めていた。実際は物思いにふけっていたわけではなくて、かなり憂鬱な気分で目的地への到着を待っていた。  なぜかって、それはこれから同窓会へ参加しなければならないからだった。  もう二十年近く前に卒業した小学校の同窓会だった。今だに付き合いのある友達も数人いたが、ほとんどの同級生の顔も名前も忘れてしまっていて、卒業ア

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        • 大盛りを残してしまった時の精神的ダメージについて

        • 短編小説『赤い夢』悪夢シリーズ

        • 短編小説『同窓会の夢』悪夢シリーズ

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          18本
        • 短編小説『悪夢シリーズ』
          4本
        • 短編小説まとめ
          12本
        • 詩と詩とふる雨
          19本
        • 短編小説『僕のちょっと怖い普通の日々 ~成瀬編~』
          5本

        記事

          短編小説『異形の夢』悪夢シリーズ

           イヅアが死んだ。  みんながイヅアの亡骸を食べようとしたから、私がイヅアを山の中に隠した。毎日一緒に生きていたから、どんなにお腹がすいたってイヅアを食べることはない。私はちっとも悲しくなかった。村の人間達に見つかれば殺されるか、大けがを負わされる、そうやってドジを踏んで死んでしまう仲間は後を絶たなかったから。  人間達は私たちをモイデと呼んだ。バケモノとかヨウカイなんて呼ばれることもよくあった。私たちは山の中や、人間が捨てた朽ちた家や、屋敷の屋根裏で暮らしていた。力は弱か

          短編小説『異形の夢』悪夢シリーズ

          悪夢日記をつけはじめたという話

           はいどうもこんにちは。僕です。  最近はめっきり冬らしくなってきて寒いですね、はい。サッカー?なんですかそれ、美味しそうですね。  さて、先日『異食の夢』という記事で悪夢の話をしました。僕は目を閉じて見る夢がほぼ悪夢なんですが、その悪夢のレパートリーが増えたという内容の戯言です。その日記で創作の題材にしたら面白いかなって書いたんですけど、せっかくなんで新シリーズとして書き始めました。  自分がみた悪夢を体裁を整えてショートショートにするというチャレンジです。そして第一話

          悪夢日記をつけはじめたという話

          短編小説『結晶の夢』悪夢シリーズ

           僕はキラキラと煌めくカラフルな大地に立っていた。  歩くたびに、ジャリジャリと音を立てる地面は、おそらく塩の結晶だった。それ以外のものは何も見えない、どこまでもどこまでもカラフルな塩の結晶でできた大地が続いていた。  太陽は沈むところで、無数の結晶は夕陽をあらゆる色の波長に分解していた。透明であることは嘘吐きと同じだ、豊かに見える大地は、想像の何倍も無機質で、虚飾された光はゾッとするほど美しく、裏腹に、これはまた絶望と同義だった。  僕はひたすら歩き続けた。  塩の大地

          短編小説『結晶の夢』悪夢シリーズ

          詩『言葉』

          僕が今までの人生で発した「ありがとう」と 僕が今までの人生で貰った「ありがとう」は どちらが多いだろう たくさんの「ごめんなさい」も渡してしまったね 本当は「うれしい」だって持っていたのに だから、たった一つだけの「さよなら」がいつまでも残ってる 僕の体は食べたもので出来ていて 僕の心は貰った言葉で出来ている 嵩を増す言葉のイメージの海で 言葉でできた灯台の灯りを目印に 言葉でできた浮き輪にしがみついて泳いでる 誰かの言葉が口から入って溺れそうだ 誰かの言葉が目に沁み

          詩『言葉』

          異食の夢

           おはようございます。WC漬けで寝不足気味の僕です、トイレじゃないよワールドカップだよ。トイレ漬けはノロウイルスに感染した時だけで十分だよ。自分が頑張っているわけじゃないけど楽しいね。  サッカー素人だからボールの動きばかりに目がいくけど、経験者や観戦玄人はもっと視野が広いんだね、本田△の解説を聞いてると目から鱗で新しい気づきがあって更に楽しくなりますよ。サッカーやっとけばよかったなあ。  さて、いきなりですが僕はよく悪夢を観ます。そのほとんどが心霊系で怪物やゾンビも含ま

          異食の夢

          詩『脇役』

          人生の主役は自分のはずだ でも、知らず知らずのうちに ピントの合わない背景を通り過ぎる どうでもいい脇役として生きている いつからだ 僕のセリフはまだか 幾多の困難や僥倖を乗り越えて 成長するエピソードはまだか いつまでだ 倒すべき悪役も 守るべきヒロインもいない 後味の悪い絶望や カタルシスのハッピーエンドもない 立体感のない 灰色のキャンバスに 虚ろな影を落とすだけだ

          詩『脇役』

          エッセイ【後入れ調味料を先に入れたい】

          目が覚める。 ベッドに座って血液が頭まで上るまで待ってから立ち上がる。冷たい廊下をに急かされて逃げ込んだトイレの小窓から、冷たい風が吹き込んでくる、くしゃみと一緒に眠気が飛ぶ。日差しが目に痛い。十一月の終わり、冬の匂い、の偽者。 洗面所で顔を洗い、歯を磨く。鏡が歳をとっている。 ぼんやりとさっきまで観ていた夢を思い出そうとしてみるが、うまくいかない。懸命に掴まえようとする手からスルスルと逃げていく、その内、いつもの様に諦める。 昨晩の残りの銀杏とベーコンとほうれん草の炒め

          エッセイ【後入れ調味料を先に入れたい】

          詩『祈り』

          もういない人の書いた文章を読み もういない人の描いた絵を眺め もういない人の歌を聴く もういない人が笑い もういない人が苦悩する 出会いはすぐに過ぎ去った でも、別れは 気づかないくらい少しずつ 忘れてしまうくらい長い時間をかけて いつの間にかそこにいて 消えなかった もういないのにそこにいる

          詩『祈り』

          詩『神』

          神がいる限り 僕らは有罪

          詩『神』

          詩『呪い』

          雲一つない青空を見上げて 君は「汚い空だ」と言った あの時の僕は 君の事をただのひねくれ者だと思ったけど 今なら少し分かる 雲も太陽もない青空は 奥行を持たない平面だ 息が詰まるような 完全で完璧な 青に晒されて 誰にも永遠に否定できない どうしようもなく正しい 青に晒されて 今なら少し分かる 汚い空だ

          詩『呪い』

          詩『STRING』

          幸せになりたい気持ちが強いほど多くを望んで 多くを望むほど幸せから遠ざかる 大切なものたくさん抱えてしまうから 僕は君の手も掴めない

          詩『STRING』

          詩『ハンモック』

          人類がまだ木の実やら貝やらを採集して暮らしていた頃。 誰かが木の棒で地面に線を引いて、その線の内側に自分の財産を置いた。 この一本の線から陣地が生まれ、 所有権が生まれ、家になり、村になり、やがて国境になった。 人類はあらゆる物事に線を引き続けた。 線は上と下を分け、左と右を分け、時に丸で囲った。 それは違いに意味を与え、考え方の相違を気づかせた。 ある時、線は崖となり、 そこからあふれた他人を突き落とせる理由となった。 このまま線を引き続ければ、囲われた面積は小

          詩『ハンモック』