3分で読める意味怖ショート「こたつ」短編オリジナル作品
「こたつ」
これは、僕が小学三年生の頃に体験したお話です。
当時は、共働き家庭で、両親は夕方かそれ以降に帰ることが多く、僕が一番初めに家へ帰る日も珍しくはありませんでした。
いわゆる、鍵っ子ってやつです。
その日も、学校から帰った僕は、ランドセルから合鍵をひっぱり出して、玄関を開けようとしました。すると、母が鍵をかけ忘れていたようで、扉はガチャン!と音を立てて僕の侵入を防ぎました。
その後、もう一度鍵穴に鍵を差し込んで家に入った僕は、こたつで宿題をすることにしました。
5分くらいして、お父さんが帰ってきました。
「おかえり、今日は早いね」
と僕が呼びかけると、
「ただいま。仕事が早く終わってね」
といって、コートをハンガーにかけるやいなや、こたつの中に足を入れてきました。
直後、お父さんの足は僕の足先にぶつかり、「ごめんごめん」と謝りながらお父さんはテレビを観始めました。
僕は漢字ドリルをしながら、お父さんに家の鍵が開いていたことを話しました。
すると、お父さんも僕と同じで「母さんが閉め忘れたんだろう」といって請求書とにらめっこをしました。
そして、今日のご飯はカレーにしようかとお父さんが提案したとき、またこたつで足がぶつかりました。
僕はムスッとして、
「お父さん、足でかすぎ」
と野次を飛ばしました。
その言葉を受けたお父さんは、眉を中央に寄せて口をへの字にしていました。
「え、また蹴ったか?」
「蹴った。蹴られた」
お父さんは頭ポリポリとかいて、居心地が悪そうにチャンネルを変えます。
ちょうどニュース番組が放送されていました。
ニューステロップには、『A市にて相次いで空き巣発生!』との文字がありました。
「A市って、ここじゃん」
僕がツッコミを入れると、お父さんは何かに気付いた様子で「一緒にスーパーへ行こう」と、半ば無理やり僕を連れていきました。
納得のいかないまま外に出た僕は、道中何度もお父さんに「なんで急にスーパー行くの?」と聞きましたが、お父さんは「ちょっと黙ってくれるか」と言ったっきりで、何も答えてはくれませんでした。
それから、僕とお父さんは何故か警察署に来ていました。
スーパーに行くと思っていたので、僕は少し怖くなりました。恐る恐る「なんで警察のところ来たの?」と尋ねると、お父さんは、青ざめた顔でこう言いました。
「こたつの中に誰かいる」
END
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