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「わたしを撫でる」

小さく震えるおかっぱ頭
愛されていたはずなのに
あんなに寂しかったのは
何故

俯き流した涙と握りしめたこぶし
正解はひとつしかないと
囚われ抜け出せなかった
制服の自分へと言い聞かせ

雨に打たれながらひとり
宣告の声を呑み込んだ
笑顔と減らず口の練習しながら
涙を押し込めて

幼子たちを背負いあやし手をひき
ただそれでもそれでもと
小さな無数の抜けない棘の痛みに
心を捨てて生きてきたけれど

後から後から被さるように
わたしの小さな器から溢れてしまう
人生の厳しさよ

どれだけを見送り
寄り添い続けて
それから
それから
ねえ
いつまで


わたしよ
撫でてあげる
脆く弱く愚かなわたし

それでも優しい想い出だって
沢山あったはずでしょう?

撫でる度に思い出してごらん

わたしのために
わたしを撫でる


【詩集】「月の道標」つきの より

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