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『本日は、お日柄もよく』 | 読書記録

言葉が、スピーチが、世界を変える

三宮の高架下、いつかの私が古本屋で手に取って以来ずっと本棚にしまわれていたこの本。時間のある今、ふと目に入ったのでちゃんと読んてみようとページをめくり始めると、一気に読めてしまいました。(一気に、はちょっと盛った)

スピーチの魅力に惹きこまれた主人公が、言葉の師匠たちと、スピーチを通して世の中を変えていくお話。私の心に残った部分を抜粋して、読書記録にしたいと思います。

言葉は、メッセージカードのようなもの

一枚一枚に、自分の思いを書きつける。とっておくもよし、日々眺めるもよし。必要なくなれば、破っても燃やしてもいい。死ぬまでずっと、心にしまっておいてもいい。でも、誰かの目に、耳に触れれば、なおいいだろう。誰かに伝えられれば、なおすばらしいだろう。思いを共有できることもあるかもしれない。心と心を、響き合わせることもできるかもしれない。

おばあちゃんは主人公に問う。「あなたも何か表現する手段を持ったら?」「言葉は、メッセージカードのようなものよ」

きらきらした魔物

言葉っていうのは、魔物だ。人を傷つけも、励ましもする。本やネットを目で追うよりも、話せばなおのこと、生きた力をみなぎらせる。この魔物をどう操るか。それは話す人次第なのだ。

知的好奇心の伏魔殿と呼ばれるほどに文献の散らばったスピーチライターの部屋には、きらきらした魔物たちが息を潜めている。この、「きらきらした」「魔物」という表現は、主人公の心にすっと入り込む。

炭酸の抜けたソーダ

ああ、なるほど。緊張感のまったくないスピーチは、炭酸の抜けたソーダみたいだ。ぴりっと引き締まった空気を醸し出してこそ、聴衆の耳目は集まる。

どんなプロも含めて、スピーチをするのに緊張しない人なんていない。逆に、そんな緊張感のないスピーチが、誰かの心を動かすことなんて絶対にない、とスピーチライターの久遠久美は言う。

三日後の君、歩き出している

「困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。」

言葉は、ときとして、世の中を変える力を持つ。

私はよく、偉人の名言を調べては自分を奮い立たせる。何千年も前に生きた人の言葉が、こうして今、ちっぽけな私を動かすときがある。それと同じように、心掴まれた人たちがたくさんいて、世の中に歴史は刻まれてきたのだと思う。

同時に、言葉は怖くもある。そうした力をもつ言葉は慎重に操らなければならないとも思います。

私は日本語が好きだけど、まだまだ上手ではありません。もっともっと特訓して、いつか誰かの背中を押せるような言葉をかけられるように、いつか誰かの心を動かせるような文章を綴れるように、言葉に触れ続けていこうと思いました。

今、まさに読みたかった、そんな本でした。

* * *

あと、今日はちょうど『舟を編む』という映画も観て、こちらもまた言葉にまっすぐな作品でした。

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