#185 こんなに雑食だったかな?(趣味の話)

 こんにちは、鏑木澪です。

 安物なのに無理やり3杯目を絞り出そうと大きめのマグカップの中で紅茶のパックを揺らしながら、ふと思いました。

 ……もう、出涸らしばっかりだよ。

 1パック1杯が標準量のはずだから、おいしい成分が出た後の2杯目は薄いし、3杯目は当然もっと薄くなって、4杯目なんかもう「香りは何処?」って感じですが(謎に貧乏性で最低でも3杯はとりたくなる←)、それでも「これは紅茶だ!」と思って、私は飲んでいるわけです。

 はたして、これは紅茶なのか?
(なんの話をしてんだよ←)

 いやぁ、この紅茶と同じで、回数を重ねるごとに薄れてしまうものってあるなぁ、と思いまして。


「記憶を消して、もう一度この作品に触れたい!」みたいなことをいっている人を見かけます。

 私も、「うわぁ、この作品を知る前に戻りたい(何も知らない自分でいたかった)」と思うことはありますが、記憶を消してもう一度、と思ったことはありません。
(ノリでそう口にしたことはあったと思う←)

 だって、記憶を消さなくても、好きなものは何回でも見るもん。

 何度見ても感動するし。

 いつも同じ状態でなんか見られないから、常に新しい状態の私が見るので、同じ作品を見ても全く同じ感情になんかならないし。

 まぁ、少し特殊だったのかな。

 私は、気に入ったものがあると「もう、これだけあればいい」と思うタイプの人間でした。

 幼い頃は、特にそれが顕著で、毎日同じ映画を延々観て、頭からお尻までセリフを丸暗記したこともあったし(別に覚えようと思って見ていたわけではないが、見すぎて覚えた←)、小説も暗誦できるほど読み返して、小学校低学年の頃には”文字の稽古”と称して自主勉ノートに写経みたく全文書き写すようなことをしていた時期もあり(当然先生に止められた←)、狭い世界で生きていました。

 別に、新しいものなんか欲しくない。

 私は、これがあれば楽しい。

 当時の自分が本当はどんなことを考えていたのか、今の私にはわからないけれど、少なくともまわりに「よく飽きないね」といわれても、「飽きるって?(どういう意味?)」と思うくらい、ずっと同じものを楽しめていたと思います。

 そんな生活が大きく変わったのは、大学生になってからです。

 サブスクを利用するようになり、動画が見放題、音楽が聴き放題になりました。

 私は、中高と部活に多くの時間を吸い取られ、そういったものに触れる機会が少なく、正直、あまり興味もないというか、「そんな”娯楽”に使っている時間があったら勉強しなきゃだし、そうじゃないなら寝たい」といった感じで、余裕がありませんでした。

 中高生の私に、「見放題、聴き放題だよ!」と伝えたところで、「だから何? そんなもん使う時間ないわ」と応えるだけだったと思います。

 大学生になって一番変わったのは、時間に余裕ができた点ですね。

 大学は「1コマの予習復習に3時間使え」なんて話もありますが、それを真に受けても高校生の時より随分と時間が余っていました。

 2年生まではフル単(上限いっぱいまで履修、全ての単位を習得)を基本としており、1年生は特殊なプログラムに合格したこともあって、本来2年かけて習得する教養科目を1年で済ませたので、授業数は少なくなかったと思いますが、それに週2のバイトを入れて生活費を稼ぎながらでも、十分、時間に余裕がありました。

 あ、本当の意味で時間に余裕があったのは、1年生の時だけでしたが。
(2年生になってから始めた学内アルバイトが、恐ろしくブラックだった←)

 部活をしないと、こんなにも時間があるんだなと驚きました。


 本当に、余るんですよ、時間が。


 課題を終わらせて予習復習もして、「まだ20時!(風呂も食事も終わっちまったよ!)」みたいな感じで、1日ってこんなに長かったんだな、とあの時知りました。

 いや、暇。

 恐ろしく暇なのよ。

 高校時代なら、20時なんて余裕で部活の真っ最中です。

 21時に学校を出られたらいいかなってくらいで、そのあと塾みたいなところに行っていた時期は、0時を過ぎてようやく帰路に就くみたいな生活をしていた私が、22時には布団でグッスリ。

 平和すぎる。

 とはいえ、22時に寝るとしても2時間暇であるし、そんなに早く寝てしまったら、高校時代の癖もあって目覚ましなしでも4時〜5時くらいには起きてしまいます。

 合計6時間、暇。

 7時間寝ても、1日6時間も暇な時間があるってどういうことなんだ全く。

 この6時間を使って、映画・ドラマ・アニメ・ライブ映像・etc.、毎日飽きもせず見ているうちに、湧き上がってきたのは、

 私も作りたい

 そんな気持ちでした。

 作るためには知識がいる
 もっとたくさんの作品を知らなければならない

 私は、幼い頃から小説を書きたいと思っていました。
 自分が感動した物語の世界を、自分でも作りたいと思ったから。

 見放題・聴き放題で、最初は自分が欲しいと思ったものだけ、選んで見たり聴いたりしていました。

 それが、だんだんと「もっと、もっと知らなければ」という気持ちから、数を重視するようになってきて、そのおかげで今まで知らなかった、自分の好きなものに気がつけた、良い側面もあった反面、二番煎じをたくさん見てしまったような感覚もあります。

 どうしても、自分が先に見た作品と類似したものがあると「あぁ、あれとほぼ同じだな」と思ってしまうことがあって、似たような感動が得られる”ちょっと違うもの”であるから、「どこが同じでどこが違うのか」と考えると自分が作る時のヒントになるし、「私はどこに惹かれているのか」という問いへの答えも段々と明確になってきたと思います。

 しかし、他人がピアノを弾いている姿を見ていたからといって、なんの練習もせず、必要な知識も持たない人間がいきなりピアノを弾けるようになるなんてことは、基本的にないわけで。

 私は、”書く”ということをしないので、いつまで経っても長編小説が書けません。

 それでも、「まだ物語のリズムが身体に染みていないだけだ」と信じて、物語を摂取し続けています。

 映像作品は、月に60作以上見るし、本は読める時期とそうでない時期の波があるけれど、最低でも年に500冊くらいは読んでいると思うし、今年は7000曲くらい新しい曲と出会って、それぞれ好きになったものとか、短期的に熱中したものとかもあったけれど、

 全部、4杯目の紅茶みたい。。。

 良い作品がないといいたいのではなくて、「紅茶だと思って飲んでいる」のと同じように、「それが紅茶であるか」が私の中で重要ではなくなっていて、「湯に何かを溶いたものを摂取する」ことが優先された私は、

 とにかくたくさんの作品に触れることだけを考えてる。

 内容も読まずにハンコ押してるような感じなんですよ。

 ただの作業。

 今年は、自分が興味を持った声優、アーティストなどを所謂”単推し”やそれに近い形で応援している方のブログを積極的に読んでいた時期がありました。

 興味を持った以上、私もその芸能人について調べているので、その人に関連する作品、ブログやラジオからのエピソードはある程度仕入れていますから、ファンの方がブログに綴っている内容を情報としては把握しています。

 ただ、私はその出来事について、そこまでの思い入れはありません。

 私、なんにも感じてないな。

 そう思ったら、なんだか虚しくなりました。

 これをきっかけに、「私って、あらゆるものに対してそうだな」と気がついてしまったのです。

 4杯目の紅茶を飲み過ぎて、本来の味がわからなくなった。

 そんな気分です。

 私には、空白の時間があるから、知らないことが多くて、それを取り返さなければいけないと、ずっとそう思っていました。

 今でも知らないことは多いけれど、私が埋めたかった”空白になってしまった時間に得られたはずの情報”は、もう私の中にあるはずだし、おそらくそれ以上の情報を入手しているのだけれど、そこに感情が伴わないから、私は未だに満たされません。

 10代の時に失ったものって、もう取り返せないわね。

 空白の時間って、本来、”暇な時間”の意味で使うような気がするのだけど、私の場合は、思考停止状態で必死に働いていた時間で、本当に”暇な時間”ができてしまったせいでそれを認識して、急に、自分の中にぽっかりと残された穴が見えたから、必死に埋めようとしたのだけど、もう今更埋まらないのだと、3年経ってようやく気がつきました。

 この穴から、いろんなものがこぼれ落ちていくんですよ。

 だから、どれだけ入れても意味がなくて。


 味がわからないから、4杯目でも平気なわけで。

 それって、飲む意味あるのか? って。


 あぁ、このご時世に「味がわからん」というと味覚障害の話をしているのかと思われそうですが、ただの比喩表現です。(念のため)

 続けてわかりにくい(かもしれない)比喩で失礼しますが、いつまでも思い出の中の1杯目の味に縋りたくないので、また、出涸らしじゃないお茶の味がわかるようになりたいと思います。

 どうすれば、感じられるようになるのか、わからないけれど。

 4杯目の紅茶が好きという人はあまりいないと思いますが、それはそれで使い道を見つけたらいいと、私は思っています。

 ほら、王道だとカレーとかね。
(それ、大抵のものは入れられるから、例えとして良くない←)

 どうして、それほど詳しいわけでも、思い入れがあるわけでもないのに、例えがずっと食べ物なんだ。


 まぁ、食べるのは大事だから、いいでしょう!←


 なんてこったい、4000字近く書いてしまいました。

 ここまで付き合ってくださった方、ありがとうございます。

 ひとまず、私は元気なのでね。
 年明けに新曲を出せるように、制作頑張ります!

 ではでは〜

 16,2

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