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法学セミナー~2021年12月号より

このところの世情を受けて色々調べているうちに、気になって、同書を購入しました。



法学セミナーの12月号は、「言論に対するゆるしと制裁」をテーマに、有識者の見解がまとめられています。

私が特に気になったのは、深町教授の見解でしょうか。少し、引用してみたいと思います。

深町説

名誉毀損罪及び侮辱罪の保護法益を外部的名誉とする通説的見解においては、専ら被害者の社会的評価の低下に焦点が合わせられている。しかし、オンラインハラスメントにおいて重要なのは、このような社会的評価の低下それ自体ではない。オンラインハラスメントの侵害性は、テラスハウス事件が如実に示すように、被害者に誹謗中傷・罵詈雑言がなされることによって被害者の自尊的感情が傷つけられ、精神的負荷によってPTSDなどを発症し、あるいは自殺に追い込まれる危険性にこそある。すなわち、ここでは私生活の平穏と言った法益が問題となっており、むしろ脅迫罪・強要罪(刑法222条・223条)やストーカー行為等規制法の犯罪に類似したものと言える。

法学セミナー:2021年12月号~オンラインハラスメントの刑法的規律/深町晋也著
以下同文

これらを踏まえて、深町氏は

侮辱罪の法定刑引き上げによる対応のみではなく、オンラインハラスメントの特性に応じた新たな刑法的規制を行う方がより望ましい。

との見解を示しています。

私もこれについては概ね頷けるところです。

深町教授の論説によると、「オンラインハラスメント」の定義は、

オンラインハラスメントとは、オンラインでなされる様々な迷惑行為や嫌がらせ行為の総称であり、必ずしもその対象・範囲が明確化されていない。


とあります。
その上で、オーストリアの立法例(Cybermobbing罪)などを鑑みて、

  1. 匿名性

  2. 高度の流通性

  3. オンラインにおける永続性

  4. 回避困難性

についても触れ、「オンラインハラスメント独自の処罰規定が必要」と述べています。

また深町氏は、行為者がSNSに誹謗中傷等の投稿を行って不特定多人数の目に留まるようにし、「炎上」を引き起こすような場合(公然炎上型)の犯罪行為に対して、処罰対象とした「オーストリア刑法」の分析について、解説されています。

オーストリアにおけるCybermobbing罪の検討

主な罪刑内容は、次の通り。

オンラインにおいて、被害者の生活遂行を期待不能に侵害し得る方法で、一定の期間、多数人にとって認識可能な形で被害者の名誉を毀損し、または被害者の承諾なくその高度に私的な生活領域にかかる事実や画像を多数人にとって認識可能にした者に、1年以下の自由刑または720日以下の日数罰金刑が科される。


一定の加重自由が存在する場合には3年以下の自由刑と刑が加重されている。

さらに2020年に同法が改正され、「継続的な嫌がらせ」から、「持続的ないやがらせ」に変更されていますので、「1回でも誹謗中傷投稿を行ったらアウト」という流れに変わりました。

日本ではネット上の誹謗中傷については、まだまだ甘いところがあります。
ですが、既に「テラスハウス事件」などを経て、「侮辱罪」の厳罰化の動きが見られます。

侮辱罪は厳罰化の方向へ

同書にあるように、侮辱罪部会は2021年10月6日に行われた第2回会議において、「侮辱罪の法定刑引上げ」に関する要綱(骨子)の通りに、法整備をするのが相当である、との採決が行われたそうです。

となれば今後noteでの投稿も、「特定の私的メールやメモまで開示し、誹謗中傷の材料とする」といった炎上手法は、noteの規約違反だけでなく、従来よりも、刑法上の問題として直接処理される可能性が出てくるでしょう。

そして「自分が気に入らない」という私的理由だけで、HNや特定の人物(法人も含む)を名指しし、繰り返し誹謗中傷を行う行為自体についてですが。
これからの法整備の内容次第では「行き過ぎた表現の自由」として、処罰対象となり得る可能性も示唆しているのではないでしょうか。

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