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室町時代の地方の「花の宴」
地味~に、室町時代の須賀川を扱った小説「泪橋」を連載中です。
実は華やかなのは前半だけで、この後かなり泥沼化するので、少しばかり憂鬱な日々です。
戦闘シーンを描くのが苦手というのもあるんですけれどね。
当時の武具などを読み解くのが、地味に大変^^;
実は、藤葉栄衰記にはないオリジナルシーンの一つが「花の宴」。
読む人が読めば分かるのですが、特にこの小話はかなり古典の要素がたっぷりと詰まっているのが特徴です。
泪橋では「藤葉栄衰記」を原作としながらも、所々オリジナルのシーンを挟みました。
そうでないと、「為氏と三千代姫の3年間の結婚生活は、夢のように過ぎました」の数行で終わってしまい、さすがに小説の展開としてどうよ?と思うので……。
1.伊勢物語
「九十話というと、桜の話?」
図書亮も、微かに記憶しているくらいだった。
「そう。つれない女にを何とか物にしたいと恋い焦がれていた男に対して、女がさすがに憐れみを感じたのか、『明日には物越しに対面いたしましょう』と約束するでしょう?でも、男は舞い上がりつつも、どこかで女を信じきれなかったのでしょうね。桜に添えた文に、『桜花けふこそかくも匂ふともあな頼みがたあすの夜のこと』という歌を添えて、ちょっと皮肉を込めたというお話」
りくがちらりと、こちらに視線を投げて寄越した。
こちらで題材となった「伊勢物語第九十話」の原文は、こんな感じです。
むかし、つれなき人をいかでと思ひわたりければ、あはれとや思ひけむ。 さらばあすものごしにてもさらばあすものごしにても、といへりけるを、 かぎりなくうれしく、また疑はしければ、おもしろかりける桜につけて、
""桜花けふこそかくにねにほふともあな頼みがたあすの夜のこと ""
といふ心ばへもあるべし。
図書亮の妻である「りく」は既に大人なので、ある程度男女の機微を分かるでしょうが、まだ中学生くらいの三千代姫&為氏は、伊勢物語に出てくる「男女の駆け引き」は、ちょっとわからないかもしれませんね。
伊勢物語は、一説によると在原業平によって書かれたと伝えられています。
割と平安時代の遊び人として有名な人ですが、歌は一級品。
三千代姫が遺品として「伊勢物語」や「古今集」(藤原定家正本によるもの)として残したとされることから、伊勢物語を取り上げてみました。
本文でも書きましたが、結構ティーンエイジャーには聞かせてはまずい男女の関係を暗喩している話も多いわけで、これで詰め寄られても、回りは困っただろうなあ^^;
この当時、地方豪族の姫君が定家の正本を持っていたというのならば、相当広く親しまれていたのでしょうか……。
地方の話なので、どこまで当時の実態に沿っているかはわかりません。ただ、三千代姫は今で言う「セレブ」なお姫様だったはずですし、もしかしたら家臣クラスの「りく」(一応、須賀川二階堂一門の中では上流クラス)も、それなりに歌道に通じていたのかもしれません。
2.今様
歴史の教科書で出てくることはあるのですが、その実態が謎だった文学作品が、「今様」です。
あの大天狗と言われた「後白河法皇」が、大好きだったのだとか。
そんなわけで、日本古典文学大系や「梁塵秘抄」から、「今様」をピックアップしてみました。
春の初の歌枕。霞たなびく吉野山。鶯、佐保姫翁草。花を見すてて帰る雁
思ひは陸奥に、戀は駿河に通ふなり、見初めざりせばなかなかに、空に忘れて已みなまし
龍女は佛に成りにけり。などか我らも成らざらん。五障の雲こそ厚くとも。如来月輪隠されじ
釈迦の月は隠れにき。慈氏の朝日は未だ遥か。その程長夜の闇きをば。法花経のみこそ照らひたまへ
今様は平安時代中期~鎌倉時代に流行したと言われています。
なので、図書亮や為氏らの頃(物語の設定上、花の宴は1445年の話)は、やや古くなっていた……かもしれませんが、今様は歌いながら楽しんだと言いますし、エンタメシーンとして取り入れてみました。
これらを美人&歌人として優れていたと伝えられている三千代姫が歌いながら、山桜や阿武隈川をバックに舞ったとすれば(おまけで夫の為氏も)、かなり優雅な光景だと思うんですよね(*^^*)
この先の「須賀川城攻防戦」に向けてのつなぎとして、当時の遊びの場面をこしらえてみましたが、いかがだったでしょうか?
おまけ~やはり室町時代は不人気
歴史小説を書いている人は、カクヨムに行くと結構いらっしゃって、やはり皆さん色々と盛り上げ方に苦心していらっしゃるようです。
実は、「第11回ネット小説大賞」に出すべく、「小説家になろう」で既作の「直違の紋に誓って」の連載を開始したのですが、「なろう」でも、やはり室町時代は不人気💦
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「幕末」や「戦国」のキーワードと比較すると、一目瞭然です^^;
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おまけで、こちらが「カクヨム」。
![](https://assets.st-note.com/img/1681891336810-0NJA7Ds6Gh.png)
ですが、小説の下書きでは既に泥沼化の場面に突入。
少し前に、「東日本の戦国時代の幕開けは畿内よりも10年前後早かった」という研究結果を見かけましたが、確かに、須賀川二階堂氏の内紛を見ている限り、もはや「室町」というよりも、「戦国時代」と言ったほうがしっくり来ます。
須賀川城の攻防戦が結構長く、武具の名前も現代と違うものも多いことから、まだまだ難儀していますが、頑張って最後まで走りきりたいと思います。
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これまで数々のサポートをいただきまして、誠にありがとうございます。 いただきましたサポートは、書籍購入及び地元での取材費に充てさせていただいております。 皆様のご厚情に感謝するとともに、さらに精進していく所存でございます。