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直違の紋に誓って

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実在した二本松少年隊の一人、武谷剛介を主人公とした小説です。 二本松藩がどのように戊辰戦争に巻き込まれ、藩の誇りを賭けて戦ったのか。そして、明治の「西南戦争」は戊辰戦争の敗者にと… もっと読む
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【直違の紋に誓って】~目次・主要登場人物

主要登場人物〈木村道場関係者〉 武谷剛介……主人公。二本松藩士、武谷半左衛門の次男。十四…

k_maru027
1年前
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Spin Off~冬の訪い⑤

 どこから聞き及んできたものか、まだ西軍と東軍が各地で激戦を繰り広げている頃、白石で諸藩…

k_maru027
9か月前
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Spin Off~冬の訪い④

 それまで静かに話を聞いていた清介が、口を開いた。 「差し出がましいかもしれぬが……。拙…

k_maru027
9か月前
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Spin Off~冬の訪い③

 鳴海の言葉を、清介は静かに聞いていた。 「……かの者らの名前は?」 「武谷剛介と、久保豊…

k_maru027
10か月前
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Spin Off~冬の訪い②

「農家から、少し分けてもらった。今年は上々の出来だな」  清介の言葉に、与兵衛も笑みを浮…

k_maru027
10か月前
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Spin Off~冬の訪い①

 大谷鳴海が米沢から戻って来たのは、雪も散らつき始めた頃だった。藩命を受けて仙台に様子を…

k_maru027
10か月前
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直違の紋に誓って~Spin Off ~掌中の珠玉(4)

 伊都の身に変化が生じたのは、それから三月程経った頃だった。  月のものが止まり、食が進まない。食べた物もすぐに吐いてしまうし、間違いないのではないか。 医者に見せると、「三ヶ月ですな」とあっさり言われた。  もちろん、伊都が真っ先に告げたのは剛介だった。 「本当に?」 剛介は伊都を抱きしめながら、囁いた。 「正月頃に生まれるそうです」 伊都の声は、はずんだ。剛介の子供が、自分の胎内に宿っている。そう思うと、天にも昇る心地だった。 「あの、東山の出湯のときか」 「いや。仰っし

直違の紋に誓って~Spin Off ~掌中の珠玉(3)

 部屋へ着くなり、剛介はついと伊都の腰に手を伸ばして、その体を抱き寄せた。二人が湯に浸か…

k_maru027
1年前
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直違の紋に誓って~~Spin Off ~掌中の珠玉(2)

 剛介と伊都が連れ立って東山へ向かったのは、その数日後だった。学生の身でという遠慮はあっ…

k_maru027
1年前
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直違の紋に誓って~Spin Off ~掌中の珠玉(1)

 結婚から、そろそろ一年になろうとしている。伊都は、すっかり妻としての貫禄を身に着けたか…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】Spin Off~父の背中(5)

 ――来る時は急峻に感じられた坂道も、帰りはあっという間である。うっかり前のめりになって…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】Spin Off~父の背中(4)

 そうか。父は別に会津を厭わしく思っていたわけではないのか。むしろ、相当な恩義を会津に対…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】Spin Off~父の背中(3)

 翌朝、朝早くから父は庭先で竹刀を振っていた。そうしたところを見ると、やはり、体育の教師…

k_maru027
1年前
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【直違の紋に誓って】Spin Off~父の背中(2)

 来春の受験に備えて福島の師範学校を見学したいと言うと、貞信は、数日今村家に宿泊させてもらえることになった。幸い、貞信の学校は夏休み中であるから、学業に支障はない。もっとも、教師であるという父は夏休みの間でもそれなりに忙しいらしく、近くにある職場へ足を運んでいた。今は、安達師範学校で教えているとのことだった。  最初は緊張していた様子の剛介の妻も、徐々に打ち解けてくれた。 「夫から、会津に残してきた御子がいらっしゃるのは、結婚の時に聞かされていたのです」  妻の名は千紗と言い