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トップアスリートの感性に触れたい時は『日本人の足を速くする』を読むといい

世の中には続々と新刊が出てくる一方で、過去に発売された書籍から学べることもたくさんある。久々に本棚から引っ張り出してきたこの本には、為末さんの生き様が描かれているようだった。

2007年、為末さんが29歳の時に書かれた一冊。

以前からいろいろな媒体で発信をされていて、2020年からYouTubeを始められたことでその哲学がさらに広まっているように思う。

為末さんの発信に触れて一番に感じるのが、その言語化能力。姿勢とか体の使い方などはもちろんのこと、その時の感覚であったり感情も言葉にしている点。

しかも、ただ感覚的な部分だけではなくしっかりと研究して実践した上での言葉なので重みを感じます。

能力指数が100で生まれついたアフロアメリカンが75しか発揮できない例はたくさんあります。それなら、能力指数50の日本人はなんとか工夫して75にまで指数を上積みしていけばいい。

序章・なぜ日本人は足が遅いのか

体を鍛え上げて肉体のポテンシャルを高める黒人選手と、繊細な五感を信じて微妙な違いにこだわりながら技術を高める職人気質の日本人選手との違いを表現した時の為末さんの言葉です。

スポーツをしてきた方なら一度は思った経験があるかもしれません。黒人選手として生まれたかった、と。

為末さんご自身もそう思った経験がある一方で、黒人選手と同じトレーニングをしたことで感じた不調などから、短い競技人生の中で自分の体を最大限生かすにはどうするか。そういった思いが込められているのでしょう。


足が速い人に共通してみられる特徴についての記述も興味深い。膝がポコッと出ているケース、足首が細いことに続いて以下の表現があります。

あとは、肩幅が広くて骨盤が狭い、いわゆる逆三角形の体型が大きな特徴です。角運動量保存の法則というそうですが、肩幅が広いう方が肩を少し動かすだけで大きなエネルギーを骨に伝えることができ、骨盤が高速に動くということです。

第二章・速くなるトレーニング

動くということをいかに力学的に捉えているか。自分自身の感覚を大切にしながらも、物理学的な裏付けも頭に入っている。その中で、自分の動きに合うか合わないかの取捨選択をするということ。

この選択肢を持っているか持っていないかというのが、実はアスリートにとってとても大きなものだと思います。考えすぎても良くないし、考えなさすぎても良くない。アスリートに限らず、トップで活躍している方の感覚は本当に難しいと思います。


ちっぽけな人間の力では推し量れない何かに身を任せてみる、ある種の潔さを持っていると勝負の世界というダイナミズムの中で、日本人はもっと活躍できるのではないでしょうか。

第三章・勝てない人と勝てる人

勝負事におけるメンタリティについて。

まず動き始めてチャレンジするのか、それともちゃんとキャリアを積んでから進んだ方がいいのか。これはスポーツに限らず全てのことにおいて言えることでしょう。

考えることはもちろん大切。でも、動いてみなければ何が起きるかはわかりません。

人生一度きり。やらない後悔はずっと付きまといます。まず踏み出して、動きながら流れに身を任せてみると意外と周りの人も助けてくれるかもしれません。

頭で考えていることってだいたい起こらないことがほとんどなので、まずは動き出してみる意外とできてしまったということもあります。


発刊から15年。為末さんのYouTubeなども見させていただいてますが、改めて読み返してみても面白く勉強になる内容でした。

トップアスリートの感覚に触れたい方にオススメの一冊です。

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