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テレワークは子育て世代にとって効率が悪い

新型コロナウイルスによって、現代の社会人は生活様式を変えざるを得ない状況に身を置くことになった。

感染症による環境変化が、テクノロジーの発展を促進させ、人の進化を一段階シフトアップさせようとしている。人は今、環境に適用するため価値観ごと入れ替える必要性が強いられている。

最たるものがテレワークの導入だ。

仕事開始のルーティーン

今まで数多くの企業がテレワークを推奨していたが、設備の導入は進んではいるものの、実質出勤を避けられない状況だった。ITに携わる企業のうち、大手SIerは遅まきながら対応を進めていたが、今回の緊急事態宣言を受けて一気に導入を加速することとなった。

テレワークは、導入すれば快適かつ効率の良いワークスタイルと言うわけではない。現場、新型コロナウイルス感染症によって、小中高と休校が全国的にも世界的にも広まっているが、子どものいる家庭には課題が多い。

実際の自宅でPCを広げてみて「さぁ仕事するか」と意気込んだところで、集中出来ない、やる気が出ないといった声が多いようだ。普段から自宅などで仕事しているならその限りではないのだろうが、突然自宅で仕事を開始する環境に変わった人はこの切り替えが難しいようである。

我々は、「出勤し、デスクに向かう」という行為を長年繰り返しているうちに、それ自体が仕事開始のスイッチとしてルーティーンになってしまっているようだ。

子育てしながらのテレワークの難しさ

子どもがいる家庭ではこれに加えて、同じ屋内で過ごす子供から目を離せない状況になる。保育園や小学校低学年の児童は、それこそ親がついていないとならないし、集中して遊んでいたかと思えば、親に話しかけたり、兄弟同士喧嘩を始めたりする。(うちがそうだ)

オフィスという場は、集中できるワークスペースとして場を提供していた側面もあるから、同様の機能を持つ場を家庭でも用意していた、という世帯は少ないのではないだろうか。

一旦、自宅を見直した上でデスクなどを配置し直し、かつ子どもを見ながら仕事が出来る環境を整えたとしよう。多くの場合、リビングなどに身を置くことになると思うが、チラチラと視界に入る子どもたちを尻目に最大効率で集中出来るかというとそれもまた疑問である。

庭で遊ばせていても、どこか勝手に遠くに出かけていないか不安だし、テレビを見させていても長時間悪い姿勢で見続けてしまっていたら注意をしたりと、気配りをしなければならず、集中は途切れざるを得ない。

さらに、時間ごとに食事の準備やお昼寝のお世話、小腹がすく頃にはおやつを準備してあげて、まだ小さい子にはトイレのお世話もする。普段の業務+保育士も一緒にやらなければならないような状況にあるので、仕事の生産性は著しく落ちてしまう。

これが共働き家庭であれば役割分担ができるのではないかといえば、負荷が1/2になるだけで、託児所に預けた時のように子供から目を離せるわけではないので、根本解決にはならない。専業主婦(夫)家庭以外には、突然導入されたテレワークで仕事効率がただただ下がるといった現象が広く発生してしまっている。

日本人の昔ながらの働き方とおなじ状況

ただこの状況はもともと日本人は体験していた環境に近い状況だ。ヨーロッパ諸国が産業革命によって技術躍進を遂げている際も、日本人の多くは農耕を続ける百姓生活が多く見られた。百姓とは、百の生業を持つ生活スタイルだ。どんな季節も常に生計を立てるための仕事を持ち、時には畑を耕し、時には機を織るといった生活をしてきた。

もちろん託児所など無いわけであるから背中に背負い込んで、汗を流すこともあった。少し成長した子供たちはその間、野を駆けまわって強く健康になった。そうしてやっと大人は仕事に集中できるが、19世紀に学制が敷かれるまでは、食事などの世話は親をはじめとする家族の役割だ。

現代では、祖父母と住宅を別にすることで親が一身に子どもの世話をするが、過去は世代間で協力して育児に臨むことが一般的に行われていた。親が畑に出ている間、祖父母が子どもの面倒や家事をするといった具合いだ。

日本は徐々に核家族化を進め今に至るが、以前の生活スタイルは、育児と仕事の両立という今では社会的課題となっている事象を、当たり前に受け入れていたのだ。

生活様式の価値観

新型コロナウイルスによって、大きく価値観を変えようとしている現代において、生活様式を見直す段階となった。高齢の感染者は重篤化することが多く、病状の進行度の速さと、感染者隔離のため、文字通り親の死に目にも会えないそうである。

ウイルスによって、「それは悪手だったね」と言われているように、現代の常識が次々に裏目に出ている。家庭環境という社会的集団の在り方も、見直すいい機会なのかもしれない。

やがて来る「次の新型感染症」は、人のどのような営みを否定してくるのか分からないが、今目の前のパンデミックに対抗するには、ひとりひとりの環境に適用する努力が必要だ。

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