ベストセラーランキングで分かる書籍と宗教の関係
書店の数は20年で半数以下となり、刻一刻と減り続けている。
経済産業省の商業統計データによると、1990年に2800店舗あった国内の書店は、2016年には8000店舗にまで減少した。
今なお減少し続けており、地元の駅前の書店がつぶれたなんていう地域のニュースも珍しくない状況となっている。私の地元駅の書店も昨年にコロナ禍で閉店してしまった。
昨年のベストセラーを見てみると、知らなかった事実に目を見張った。今日は物議を醸し出しそうな気づきを文章でお届けしたい。
日販のベストセラーランキングの総合部門はこちら。
2020年度
2020年度は圧倒的に鬼滅の刃とあつ森。トップ5がアニメとゲームという日本らしいランキングだが、5位以下が注目だ。
なんと5位には創価学会の聖教新聞社の出版された書籍がランクイン。鬼滅とあつ森がなかったら1位だったと言うことだろうか。社会的にもコロナで不安な情勢だけにそういった文脈でのランクインなのか。
また、10位には幸福の科学創設者の大川隆法氏の書籍がランクイン。これも同様の理由なのか気になって前年度も見てみると以下の通り。
2019年度
聖教新聞社の書籍は2019年度も5位にランクインしていた。ちなみに2018年度は11位にランクインしており、これは偶然ではなく例年の売上をベースに2020年度の売上が更に伸びたと考えた方が良さそうだ。
一方で幸福の科学出版はどうかと言えば、2019年度は上記出典の通り19位であり、2018年度は10位だった。
誤解を恐れずに表現すれば、この国において宗教本の売上が意外なほどに高いということだ。これは知らなかったし、それだけ読書家全体の人口費で締める宗教徒が一定数安定していて存在すると言う見方が正しいのだろうか。
聖書と現代宗教書籍の違い
ここで比較したいのが、キリスト教の聖書だ。
聖書はキリスト教への勧誘ツールとしても使われている。ホテルなどで引き出しを入っていることでお馴染みだが、意外な作りになっていることをご存知だろうか。
聖書。実はページをめくると、「あなたは今、○ ○で悩んでいませんか?」といった設問が登場する。そして、その設問に続くのは、「当てはまるのならば、○ページ、○ ○の福音書の○節へ」といったように、誘導する文面が記されている。
つまり、聖書は単なる有難い神の言葉を書き連ねた読み物としての側面だけではなく、いわゆる悩める子羊の信仰心を新たに育むためのツールにアップデートされている。
なぜこのような形式を取られているかと言えば、既に古典として聖書が完成されており、新しい経典を出すことは許されないからだ。
聖書は神と預言者の物語が示され、新約聖書はキリスト没後に弟子たちによって執筆されたと言われる。いずれも執筆者も既にこの世にいない。
一方で日本の現代宗教家は未だ存命で、このベストセラーランキングを見てわかるように毎年のように出版している。
創価学会は、もとは法華経の教えであり、創価学会の経典としては新編日蓮大聖人御書全集というものがあるそうだ。加えて、季節ごとや月刊・日刊で機関紙を発行している、というスタイル。
幸福の科学は、「仏説・正心法語」という根本経典があるそうだが、大川隆法氏による多数の出版物が信徒に愛読されており、先の通りベストセラーランキングに名を連ねるほどだ。
売りたい本は2通りある
宗教というメディアに書きにくいテーマなのだが、この宗教本の販売動向に現在苦しめられている書店数の減少に対する書籍流通のヒントを探していく。
明らかに減少している書店だが、そもそも「売りたい本」とは何かを考えてみると、主語が以下の2通りになる。
・出版社が売りたい本
・書店が売りたい本
ひとつ目の出版社が売りたい本。これは、芥川賞や直木賞などの文学賞に表れている。
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