【心理学】鏡の法則で人間関係を改善する
心理学の用語である「鏡の法則」とは、現実を、自分の心を投影した「鏡」の世界であると見なす考え方だ。
鏡の法則は、「投影する」ことで事象を捉える心理学だ。自分の周りに起きる出来事や、自分の周りにいる人の言動は、自分を映し出した鏡であると考える。
よく用いられる例えでは、鏡の前で寝癖で直す際に、鏡の中の自分の髪を直そうとはしない。自分自身の髪を直せば、鏡の中の自分の寝癖も直る。
このように、周囲の人々や人間関係は、自分自身の投影であるから、自分自身を改善することで周囲に影響を及ぼすという心理学のひとつのアプローチである。
例えば、嫌いな人がいるとする。どこかしら自分とは合わないと思うだろう。しかし、鏡の法則では、その人は自分を映し出している鏡である。その人の嫌いな部分は、自分にも当てはまるところがあるから、同族嫌悪のように嫌ってしまうという。
その人の嫌いなところは自分にも当てはまるので、改善するのであれば、まず自分の言動を変える必要がある。
他人を変えるなら自分が変わるしかない、というアドラー心理学にも通じる考え方だ。
鏡の法則の事例
人間関係の改善において、鏡の法則は事例がたくさんあるそうだ。カウンセラーに聞いた事例はこうだ。
東武東上線沿線の都市開発で、用地買収のために住宅の立ち退きを依頼していた担当者がいた。彼の担当エリアに一軒、頑固なお婆さんが立ち退きを長らく拒否していたそうだ。
何度話しに行っても門前払いで話を聞いてもらえず、そうこうするうちにチャイムを押しても居留守を使い相手をしてもらえなくなった。愛着ある家であるから、手放せと言われたら抗いたくなる気持ちも分かる。
そして時が立って周囲の住宅は全て立ち退いてしまい、立ち退きの期限が近づいてきた。そのお婆さんの一軒だけが、そのエリアにポツンと残ってしまい、近所からは偏屈なお婆さんがいるという悪い噂まで立ってしまった。
無視され続けた用地買収の担当者は、ある時、その様子を見て考えたそうだ。
あのお婆さんも辛いに違いない。周囲からは偏屈と蔑まれ、苦しいに違いないと心から思ったそうだ。
そしてその思いを抱いて、お婆さん宅の呼び鈴を鳴らすと、なぜかそれまでの態度と一変し、「お入りください」と通してくれたそうだ。
立ち退きの件について説明すると、今までの反抗的な態度がウソのようにあっさり承諾してくれたという。
お婆さんの気持ちについて、心から思いを深く巡らしたことは偶然かもしれない。
しかし、自分を写した鏡だったとすれば、用地買収のことしか考えない担当者に、「自分の家に住み続けたい」というお婆さんの言動が投影されたということである。
こちらの都合だけで、考えなしに要求だけ伝えていては、同じように先方の都合だけで返されていたと捉えることも出来る。
そしてその逆も然り、相手の気持ちを深く思いやることで、その心は相手にも伝わり、相手も同じように自分を思いやる気持ちが産まれるという。
このような事例は数多くあるそうだ。
鏡の法則による人間関係の改善
この事例のように、自分の要求だけ伝えても相手は面白くない。コミュニケーションというのは人が二人以上いないと成立しない。
一方的に要求だけ押し付けてしまっては、それはただの命令である。相手は機械ではなく、心を持った人間であるから、何を伝えるにせよ、相手の心を無視してはならない。
私も、「どうしてあの人はこういう事ばかり言ってくるのだろう」と思うことが多々ある。もっと良い言い方があるのに、と。
しかしそれは、自分もいつしか誰かに同じような言動を気づかずに取ってしまっていたことがあるはずなのだ。
忙しさや面倒さに甘んじて、雑に依頼をしてしまったことはないか。充分に相手のことを考えずに伝えてしまったことはないか。
このように考えると、思い至る節が多くあることに気づく。
相手を注意する前に、一度自分の言動を見直してみよう。その相手は自分を写す鏡だ。
他人を変えることはできない。変えれるのは自分だけである。
自分の言動が変われば、その相手にも変化が伝わる。悪い変化は悪い影響を、良い影響はいい影響を与える。
悪口ばかり言う人の周りには、悪口をいう仲間が集まる。類は友を呼ぶという言葉もある。
眉唾な話に聞こえるかもしれない。自分に取り入れるのであれば根気もいるだろう。
心を変えるには時間がかかるし、それが周囲に伝わるのも時間がかかる。
人間関係でお悩みで、かつそれが簡単には離れられない家族や職場の同僚たちなのであれば、一度この鏡の法則に従って、自身の投影である可能性を探ってみてはいかがだろうか。
カウンセラーさんのお勧めはこちらの本です。
漫画版もあり、普段活字を読まない方にもおすすめです。
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