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働き方改革と有給休暇取得義務の謎

伝え方がなんて下手くそなんだろう。

東京オリンピックのボランティア募集や、マイナンバーカードのCMを見るたびに思っていたが、中でも酷いのは厚生労働省の働き方改革対応だ。

一般家庭や中小企業に理解を得るための広告戦略が無いので、世の中的にはなんのこっちゃである。

税金でインフルエンサーとコラボの上で、動画サイトやSNSなどの発信を続ければ理解は得られただろうに、そう言った時流に乗った戦略には疎いのが公務員の致し方ないところなのだろうか。

残念ながら政府の特設サイトは某コメンテーターだ。

「働き方改革の有給取得のせいで、貴重な有給を取らされた」と言う本末転倒な声を昨日耳にしたので、今日は働き方改革ってなんだっけと言う内容をまとめてみる。

働き方改革とは

政府は働き方改革はどう推し進めているのかと言うと、「働き方改革推進会議」によって、処遇改善・労働生産性向上・長時間労働の是正など9つの分野にテーマを決めて公布している「働き方改革実行計画」に従い推進するそうだ。(Google検索結果より)

その9つは以下の通り。

引用:

・ 非正規雇用の処遇改善
仕事ぶりや能力が適正に評価されるよう、同一労働同一賃金を導入する。

・ 賃金引き上げと労働生産性向上
最低賃金を年率およそ3%に引き上げ、全国加重平均が1,000円になることを目指すなかで、中小企業や小規模事業者の生産性向上に向けた支援や取引条件の改善を図る。

・ 長時間労働の是正
時間外労働の上限違反に罰則を設け、勤務間インターバル制度導入の努力義務を事業者に課す。

・ 転職・再就職支援
転職者を受入れた企業への優遇措置を拡大し、各企業の情報提供を強化する。

・ 柔軟な働き方
雇用型テレワーク普及に向けてガイドラインの改定や労働時間管理の仕方を整理し、また合理的な理由なく副業や兼業を制限することはできない旨をルールとして明確化する。

・ 女性・若者の人材育成や環境整備
学び直しの機会を拡充し、国家公務員の配偶者に関する扶養手当の見直しなどを行う。

・ 高齢者の就業促進
65歳以降の継続雇用のために企業の受入れ体制を整備し、病気の治療と仕事の両立に向けて支援コーディネーターなどのサポート体制を構築する。

・ 子育て・介護と仕事の両立
保育士資格の新規取得者の確保に向けて保育士・介護職員の賃金や待遇を改善し、男性の育児参加を促進していく。

・ 外国人材の受け入れ
国の経済全体の生産性を向上させるために、高度な技術、知識を持った外国人材をより積極的に受入れる。

ざっと目を通して頂くと、内容的に網羅性があって広範囲に改革を進めていく事がわかる。

大問題は有給取得義務

冒頭の、「働き方改革の有給取得のせいで、貴重な有給を取らされた。」と言う本末転倒な声は、共働きの女性の声だ。
共働きのため、どうしても休まざるを得ない時に備えて有給休暇は温存しておきたいもの。保育園児の発熱や、小学校のイベントなど、子育て世代は有給の使い所をコントロールできた方が望ましい。

働き方改革特設サイトにもこうある。

「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。
 働く方の置かれた事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりが、より良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

上記の通り、自分で働き方を選択できることが本来の趣旨だが、有給取得に関しては逆行しているのではないか。

歴史的にも末端の国民が辛い目に遭うのが常であるのだが、企業への有給取得義務の配慮が、労働者への強制義務に転換される事がお役人の皆様は予想出来なかったようだ。

しかし、企業経営者側の理解が追いついていないため、トップダウンで5日間有給を取得せよ、と指令が下ってしまうと、総務部は総務部の都合で社員に有給休暇で休ませる事がミッションと化してしまう。

そもそも働き方改革における有給取得とは、何のためなのか。

まず、有給休暇を労働者が年間5日間取得しない場合に、企業側は刑事罰を受けることになる。これが義務化されたのが、働き方改革による労働基準法の改正によるもので、2019年4月から施行されている。

多くの企業実態はどうかと言うと、多くの企業では全社通達し、足りなさそうであれば「休みなさい」と言って終わりだろう。

なぜか。
まず、本気で働き方を改革したいと考えている経営者が極端に少ないと言うこと。働き方を変えたところで利益にどう繋がるかイメージが湧いていないからだろう。

そしてそのような考えを持つ経営者ならば、強制的に有給を取得させる前に、根本的な働き方のシステム化にとっくにトライしており、有給取得率については解決済みの問題であるはずである。

有給取得率が低いことが問題なのでは無く、そのような状態に陥っている根本原因を問題視すべきだ。この問題は、長時間労働の問題ではなく、子育てと仕事の両立が真の問題点だ。

「働き方改革実行計画」には、絞った観点同士の結合観点が考慮から漏れ落ちているということなのか。

有給取得率が100%に満たない企業が大多数だが、この有給取得指示によって、もともとあった不満の種が明確な不満として沸き立つ事になる。

働き方改革に関する経営者のマインドによって、企業のES(従業員満足度)の格差は大きく開く一方だ。

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