見出し画像

絵本・白峰アカネの冒険/12. アカネ、発禁本『魔祓いの巫女の歴史』に出会う

前回はこちら:

書棚の整理と本の入替えを始めて4日目のこと。アカネは、いつものように店主から古書のつまった箱を渡されて書棚の前に立った。
それぞれの本には、書棚での置き場を示した付箋が張られている。付箋の指示に従って本を書棚に収め、付箋を外す。それを繰り返していくと、最後に、付箋のついていない本が一冊だけ、箱の底に残った。その本の表紙には、見慣れない赤いバツ印が絵の具のようなもので塗りつけてあった。アカネは不思議に思い、店長にその本を見せに行った。

発禁本を見つけたアカネ

アカネ:売るのも持つのも禁止なのに、なぜ、ここにあるのですか?

店長:私が保存しないと、世の中から消えてしまうからだ。発禁本は、学校や図書館から撤去されて焼却処分される。個人が持っているものも、警察にみつかると没収されて、やはり焼却されてしまう。

発禁本についてアカネに教える店主

店主:では、政府は、いつも正しくて間違えないと言えるかな? 

アカネ:あっ、そうですね。これは白峰山の巫女社会の話ですが、巫女社会を仕切っている上級巫女たちは弟子の中級巫女に技を指導することになっているのに、技を教えず自分たちの身の回りの世話だけさせる上級巫女が多いんです。私は、それに付き合わされるのが嫌で、山を下りることにしたんです。

上級巫女についての疑念を口にする店主

店主:ま、いまのは、半分冗談だ。しかし、せっかく山から下りてきたのに、今度はフモトノ市の不正に巻き込まれて、ひどい目にあっている。

アカネ:そうでした。うん、間違えるのは、私だけではありません。

店主:私たちは、みな間違える。だから、自分の考えを人に押しつけないで、相手の考えもよく聞くことが大事なんだ。政府が自分たちの考え方だけで本を発行禁止にするのは国民の考えを聞かないことだから、間違いなんだよ。

発禁本のタイトルを示すアカネ

アカネ:この本を読ませてもらってもいいですか?

店主:もちろん。だが、人に見られないように、店が閉まってから、自分の部屋で読みなさい。

アカネ:はい、ありがとうございます。

発禁本『魔祓いの巫女の歴史』に胸を弾ませるアカネ

アカネは、政府の見方とは異なるどんな見方が書かれているのか、好奇心に胸を弾ませるのだった。

(つづく)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?