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びっくりのインド ● 30 ● ミニマリストとしての大きな一歩

前回の記事 (びっくりのインド ● 29 ● トイレの試練) に引き続き、The Forum Mall での出来事、第 4 弾。
ショッピングモールの話しはこれで最後。

数か月のインド滞在で私が The Forum Mall で買ったものは 3 つだけだ。

1) カシミアのセーター
2) サムソナイトの特大スーツケース
3) Tommy Hilfiger の時計

当時 (2008 年/ 2009 年) のバンガロールの物価を踏まえて、それぞれ何故買ったのかを思い出してみると...

1) 男性用の衣服を売っている店にあった カシミアのセーター の肌触りがあまりにも気持ちよくて、普段セーターなど着ないのに衝動買いしてしまった。
値段は 6,000 円 くらい。
結局、日本に帰国後 2 ~ 3 度しか着ることがなく、「それならまだ新しいうちに...」 と思って古着屋さんに持っていったら、なんと 8,000 円で引き取ってくれた。
2) サムソナイト専門店で見た デカいスーツケース の色とデザインに一目惚れして、これも衝動買いしてしまった。
このスーツケースは 2 万円、インドの平均年収の半分だ。
店内にいた客が最初から最後まで私一人だったのも頷ける。
後で調べてみると、このスーツケースを日本やアメリカで買っていたら 6 ~ 7 万円 だった。
13 年経った今でも大事に使っていて、飛行機に預けるときは傷がつかないようにビニールのカバーを掛ける。
3)Tommy Hilfiger の時計 を 1 万円で買った。
日本では確か 2 ~ 3 万円だったと思う。
自動のゼンマイ時計だから電池を交換する心配もなく、普段は時計をしないけれど、気合を入れてレストランに行くときはアクセサリーとして着けている。

カシミアのセーターはちょっと失敗したかなと思う。
あとの 2 つは良い買い物だった。

自称 ミニマリスト の私は、いまでこそ、こんな風に冷静に分析しているが、以前は大量の モノ を持っていた。

特に 着るもの が多く、旅行に行くときも一切の妥協をせず、5 泊の旅行に同行した友人が 「え! 1 か月の旅?」 と呆れるくらいのデカいスーツケースいっぱいに洋服を詰めて、昼に着るもの、夜に着るものを区別して、下着や靴下の色までコーディネートした。

その私が、モノに全く興味がなくなった のは、神戸で大震災に遭ったときだ。
地震の後は誰もが命からがらの状態で、着るものなど、どうでもよかった。
わたしも 1 か月、暖かく、動きやすい服を、上下同じパターンで 2 セット着まわした。
このことで 服の意味 を知ってからは、海外旅行に行くときに友人が 「え! それだけ?」 と驚くほど荷物が少なくなった。

モノを持ちすぎると自分の行動や可能性を制限してしまう ...

私の 『 モノなんてどうでもいい 』 に拍車がかかったのは、インドで生活してからだ。
私はそれまでにアメリカへ 2 度引越ししている。
つまり太平洋を 4 回渡ったことになり、その度に送る荷物が減った。
しかし、その基準は 輸送費を抑える ことで 「 足りないものは現地で買えばいい 」 という安心感があった。

一方、インドの滞在は数か月だ。
これが功を成した。
行きも帰りも同じサイズのスーツケース、つまり同じ量の荷物が行き来したということ。
わざわざインドまで持っていったけれど役に立たなかったものは、私には不要なもの、逆にインドで買ったものは、必要なものである。
結局は、帰りのスーツケースに入っていたもの が私にとって モノの適正量 であり、幸せ度が十分に確保できる量 だ。

現在 (2021年)、アメリカや日本でも minimalism (ミニマリズム) が流行りつつある。
日本では、断舎離®、持たない暮らし、シンプルライフ、田舎暮らし、などの言葉を web や YouTube、書籍で度々目にするようになった。

しかし残念ながら、ミニマリスト や 持たないこと を勘違いしている人も非常に多く、『 モノを減らすほど幸せになる 』 とか 『 生活が質素なほど充実感を味わえる 』と 誤解させるような動画や書籍が山ほどある のも事実である。

動画に至っては、質の良いものが多数ある一方で、「 これだけ少ないモノで生活しています 」 と全ての持ち物を小さな賃貸住宅の床に並べてみたり、「 こんなに田舎で心豊かに生きています 」 と紹介したりしていて、捨て自慢大会 や 質素な生活自慢大会 が繰り広げられていて、目を覆いたくなる。

こうなると、自分が幸せでいられるモノの量ではなく、承認要求 だ。
「 わたしはこんなにたくさん持っています!」 や 「 わたしはこんな素敵なものを持っています!」 と、「 わたしが持っている物はたったこれだけ! 」 の精神状態は全く同じである。

『 自分が本当は何を望んでいるか 』、そして 『 そのためには何が必要か 』 を認識するのは、思っているよりもずっと難しい。
本を数冊読んだり動画をいくつか見たりして簡単に見つかるものではなく、分かるまで自分に問いかけ続けるしかない。

わたしの場合は、奇しくも、『 大地震に遭った 』 と 『 インドで生活した 』 という、自分の考えだけでどうこうできないことを経験したことで 自分に必要なものは何か に気付いた。
特にインドで 『 これだけあれば十分 』 が分かったことは、ミニマリストとしての大きな一歩だった。

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