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びっくりのインド ● 39 ● ヨガ道場へ行く - Part 1

インドの生活も残すところ 2 週間と少し。
最後の週末は、同僚たちからも 「ぜひ行くべき」 と勧められていた ゴア州 に行こうと決めていた。

インドの暮らしは楽しかったけれど、リゾート地でインド風の贅沢も味わってみたくて、ゴア・マリオット・リゾート&スパ に泊まることも決めていた。

海で泳いだ後にホテルのプールにつかりカクテルを飲みながら夕日を見たら、どんなに幸せだろう。

バーカウンターが水面より少し高くなっていて
よく見ると水の中に椅子がある。
ここでカクテルを飲みながら沈む夕日を見て
インドの生活を締めくくろうと思っていた。

ホテルは、当時のレートで 1 泊 15,000 円くらいだったと思う。
2 泊 + 往復のフライト料金 + 食事で約 5 万円を見積もっていた。
インドの平均年収を軽く超えてしまうが、そのくらいの贅沢をしても ばち はあたらない、はずだ。

ところが、この時に悪魔の囁きが聞こえた。
たまたまオフィスに来ていた取引先の人が、毎朝私がヨガをしていることを知って言ったのだ。

ヨガ道場へ行きませんか?

『 プールの中で飲むカクテル 』 計画は一瞬で何処かへ飛んで吹っ飛んでしまった。
別にインドでなくても贅沢はできる。
せっかくインドにいるなら、インドでしかできないことを経験するほうがいいに決まっている。

行きたいです!」

と即答した。
これが悲劇の始まりだった。

その取引先の人 (名前を忘れてしまったので 『 Aさん 』 としておく) が 「連れていってあげましょう」 と言うから、私はてっきりAさんの車で行くと思っていた。

さて当日、玄関を出ると車はない。
「あの、どうやって、そこまで行くんですか?」 と訊くと、Aさんは 「バスです」 と答えた。

バス!? 大丈夫なんだろうか。
でもAさんがいるから、バスに乗る経験も良いかもしれないと思いなおしてバス停に向かった。

そこはバス亭というよりバスターミナルで、インドの人たちがわんさかいる。
彼らが列を作って並ぶときはこんな感じ。

日本なら犯罪を疑われそう。

やっとのことでバスに乗ったはいいけど物凄く混んでいる。
切符代はAさんが払ってくれたので料金は分からない。
初めてのバス体験で狼狽えていたから、どのタイミングで誰に払ったのかも覚えていない。
クーラーはなく窓を全開にしていた。
これがバンガロールだったからよかったものの、チェンナイなら熱射病になっていたと思う。

街が遠くなって、農地を過ぎて荒地が多くなり、少しずつ人が降りて車内に空間ができてきた。
すると今度は 「本当にヨガ道場に行くんだろうか? まさか人気のないところで降りて殺されて金を取られて...。いや、私がAさんと出掛けたことは同僚が知っているし、まさかそんなことは...」 と不安になってきた。
そのときAさんが「降りますよ」 と言った。

乗ってからずっと気になっていたのは、日本人が思うバス停らしきものが道のどこにもなく、何を目印にしているのか定期的にバスが止まることだ。

こんな感じのバス停らしきものはない。

わたしが降りたところにもバス亭がなくて、しかもちゃんと止まってくれず、バスが時速 5 km くらいで動いているのに飛び降りる感じ。
道路は舗装されていなくてバスが去ると土ぼこりが舞った。
これがアメリカ映画なら東西南北なんにもない荒野で車を放り出される場面だ。

ここまで来たら腹を括るしかない。
Aさんがこんもりした森の方へ向かって歩いていくので、その後をついていった。

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