現役大学生デザイナーに聞く、ルック制作秘話やデザインへのこだわり Part3
Keio Fashion Creatorは昨年12月、ファッションショー「明晰夢」を開催した。デザイナー部員のうち8人がショーのルック制作を振り返る。全4回。
鈴木湖永/獨協大学2年生
ーショーテーマ“明晰夢”をどう自分なりに解釈し、ルックに落とし込みましたか。
鈴木:
明晰夢は現実と非現実の狭間であることを前提に、1つ目のルックは現実と非現実の要素を併せ持つ動物実験をベースに明晰夢を捉えました。
動物実験は化粧品や新薬開発などの研究や発展により、人の生活を豊かにしている反面、私たちの不自由ない生活は動物実験による動物たちの犠牲の上に成り立っている現状にあります。
このことをルックに落とし込む際に、人間のエゴとして、一目見て可愛らしいルックの裏に、犠牲になる存在があることを表現しました。
ぬいぐるみは兎魚といってうさぎの下半身が魚になっている架空の動物です。うさぎは涙腺が発達していないために涙が流れないことで動物実験によく使われていることを題材にしました。兎魚は実験に耐えられずに涙を流し、足元に涙の湖をつくり、生き抜くために下半身が魚のようになったというストーリーです。
2体目のルックである異類婚姻譚とは、人間と異類が結婚する説話のことで、その説話の結末は基本的に人間と異類の破局、死別が基本的な形になっています。フィクションでありながら、今後現実でも有り得ない話でもないのではないかと思います。また、人間と異類の結婚により人間と動物を隔てる境界線が曖昧になることで、現実と非現実の狭間を表現できると考え、異類婚姻譚というテーマを設定しました。
ルックのモチーフとしてたこを選んだ理由は、タコは幸福のシンボルであると同時に悪魔の生き物とも言われていることや、昔の中国沿岸部ではタコに人を食べさせる罰があるなど、幸せなシンボルであり悪魔の生き物でもあるという矛盾から選びました。
ー制作中、他部員との関わりを通し、インスピレーションを受けた機会はありましたか。
鈴木:
いい意味で影響を受けないように少しだけ話し合うようにしていました。
ー1年間デザイナー部員として活動する中で、精神面・技術面で成長を感じたことはありましたか。
鈴木:
精神面は2体分のルックを最後まで頑張って作り切ろうと努力し達成することができたのでメンタルの部分で成長を感じました。技術面は、 去年のルックはパターンを引かずに布を四角に裁断した状態でプリーツを折ったり組み合わせて作りましたが、今年はパターンを引いて、完成系をイメージしながら、この形にしたいからこうしようと考えながら作りました。
ー1年目と2年目でデザイナーとしての変化はありましたか?
鈴木:
1年目は、ルックを静止状態で考え服を作り、実際にショーを経験し動きが出ることに気づきました。2年目は歩いた時にパーツがどう絡み合うのか、動いた状態を前提としてルックを制作しました。今年は兎魚の尻尾を繋げて少し揺れるようにしてみたり、 タコの足が絡み合うことを想定したりしながらショーの全体像を考えてデザインするようにしました。
ー第一印象として、「兎魚」は可愛らしさ、「異類婚姻譚」は怖さを感じますが、ルックの世界観も対比がなされているのですか?
鈴木:
「兎魚」は、実験動物の現状への疑問を思いとして込めたので見た目は一見可愛くつくりました。
人のエゴで動物が実験されている現状を表現するため、ぱっと見ではふわふわしていて“可愛い”を伝えるため、ルックとして可愛い雰囲気が出るようにしました。「異類婚姻譚」は、ウエディングドレスのようにしたかったのでチュールを使い、 チュールの華やかな感じがタコの足に侵食されていくストーリーを表現したかったので兎魚とは少し対照的に暗い雰囲気のルックにしました。
田村真白/順天堂大学2年生
ーショーテーマ“明晰夢”をどう自分なりに解釈し、ルックに落とし込みましたか。
田村:
「明晰夢」はふわふわとした幻想のなかに“事実をわかっている状態”だと解釈し、一番下の層の生地と、外側のチュールとで生地を変えました。
ー制作中、他部員との関わりを通し、インスピレーションを受けた機会はありましたか。
田村:
お互いのアイデアを尊重し合い助け合いました。ショー直前に精神面でも助かりました。
ー1年間デザイナー部員として活動する中で、精神面・技術面で成長を感じたことはありましたか。
田村:
ESMOD TOKYOに毎週末通わせてもらい、半日制作に励んだ1年間だった上、自分にとって初めての制作だったため、トラブルに直面することは多かったと思います。でも友人と助け合い、ショーを迎えることができました。イメージしてたルックを形にし、たくさんの人に見て頂ける機会を成すことができ、たくさんの人に見て頂ける機会を成せて良かったと感じています。
ールックで特にプシュケーの神話「精神」や「こころ」を意識したところはどこですか?
田村:
胸のあたりから下に綺麗に落ちるシルエットです。
神話に出てくるプシュケーには蝶にも繋がりがあるため、蝶の羽のようにも見せるルックにしました。
ーなぜ赤色で、またどのようなメッセージ性がありましたか?
田村:
「心」や「情熱」そのものを表現したいと思った時、真っ先に思いついたのが赤色でした。また、チュール、オーガンジーの生地を使うにあたって、重ねるほど濃くなる様が綺麗に映える色だと思いました。
ールック制作の過程で特に印象に残った瞬間はありますか?
田村:
ルックのショルダーストラップの部分の素材を悩んでいた際に、チュールの柔らかい素材を活かしてルック全体で使った記事を集めて編んでみたところ、統一感もあり理想に近づけることができたことです。
2024.03.21
DESIGNER: COTO SUZUKI/MASHIRO TAMURA
TEXT: KEN IMAI/RYUSEI TSUBO
PHOTO: HIDEYUKI SAKUMA(still)/HOPE(header photo)
【Keio Fashion Creator 関連リンク】
IG : @keio_fashioncreator
Twitter : @keio _fc
HP : https://keiofashioncreator.com
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