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かと
2020年5月25日 00:41
微かに鼻をすする様な音で目が覚めたのはある寒い冬のことであった。部屋の隅で肩を震わせて泣く女が、橙色の豆電球に照らされて壁に黒く巨大な影をつくっていた。なるほどこれは厄介な事に巻き込まれた。男は手探りで枕元に置かれた眼鏡をかけると、眉間に深いしわを寄せながらもう一度部屋の隅に目を向けた。女だ、女がいる。ここで問題なのは男が長年一人暮らしであり、同棲などは以ての外、恋人すらいない身で
2020年5月23日 01:03
彼女が死ぬ2日前にくれたやけにまんまるのサボテンは、それから半年経っても何も変わらなくて、どうせならすぐに枯れて無くなっちゃう花にして欲しかったな。そしたらあたしは枯れた花に向かってわんわん泣いて、大好きだったカレーも4日は食べられない。ふとした拍子に栞にすれば良かった、なんて気づいて、後悔して、それからまた泣いて、バカなあたしの嗚咽が萎れてカサカサになった花びらを1枚吹き飛ばしたりなんかしたら、