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【映画レビュー】同時刻に起こる様々なストーリー。『ナイト・オン・ザ・プラネット』鑑賞

みなさんこんにちは(⌒▽⌒)

さて、オムニバス映画というものをご存知ですか?

ある同じ時間においては、様々な場所で様々な出来事が起こっています。そんな、独立した短い物語を集めて一つの作品にしたものがオムニバス映画です。

オムニバスで有名な作品に、『ラブ・アクチュアリー』(2003)があります。イギリスにおける様々な男女における恋物語が繰り広げられており、オムニバス映画ゆえに主人公が一人ではなく、各物語ごとに存在しています。

キャストが豪華すぎる映画として有名なこの作品はヒュー・グラント、キーラ・ナイトレイ、コリン・ファース、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、ビル・ナイと言った錚々たる顔ぶれが集結しています。

今回はそんなオムニバス映画の一つである『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)の紹介をしていきます。

作品紹介

題名:ナイト・オン・ザ・プラネット
公開年:1991年
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ウィノナ・ライダー
   ジーナ・ローランズ
   ジャンカルロ・エスポジート
   ロベルト・ベニーニ

この映画は、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5つの都市を舞台に、タクシー内で繰り広げられる、運転手と乗客のやりとりを描いた作品です。

また、この映画では5つの都市を舞台にしていると言うこともあり、その各国の映画スターが出演しているという点も注目すべきポイントです。

それでは各ストーリーのあらすじを紹介していきます。

①ロサンゼルス編

出演俳優:ウィノナ・ライダー
     ジーナ・ローレンス

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評価
⭐️⭐️⭐️⭐️
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このエピソードは、ボーイッシュで無神経な運転手とキャスティングディレクターである乗客とのやりとりです。

運転手のコーキー役は、『シザーハンズ』(1990)のヒロイン役で有名なウィノナ・ライダーです。

彼女は乗客のヴィクトリアにタクシードライバーという仕事に満足しているのかと尋ねられますが、彼女には整備士になるという夢がありました。将来も、職業などは関係なく、心からありのままの自分を愛してくれる人と結婚したいと言います。

ヴィクトリアは、荒っぽい性格ではあるものの自分の将来像をしっかり捉えているコーキーに可能性を感じます。コーキーに対しハリウッド女優にならないかと話を持ちかけますが、興味がないと断られ、タクシーは去っていきます。

このエピソードを見る限り、2人の相性はさほど良くなかったと言えるでしょう。タクシー内では嫌味たらしく振る舞うヴィクトリアに対し、そんなことは気にも止めないコーキー。そういったユニークな性格の彼女に、ヴィクトリアは女優としての可能性を感じたのかもしれません。

②ニューヨーク編

出演俳優:アーミン・ミューラー=スタール
     ジャンカルロ・エスポジート
     ロージー・ペレス

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評価
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
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夜の街でブルックリンに向かうためタクシーを停めようとする男性。ことごとく断られますが、ようやく一台のタクシーが停まってくれます。しかしこのタクシー、何か様子がおかしい⁇運転手のヘルムートは運転の仕方すら碌に分かっていない様子。乗客のヨーヨーは降りようとするが、初めて乗せる乗客に対しどうしても降りないでほしいと言うヘルムート。ヨーヨーは代わりにタクシーを運転して帰ることに。

ヘルムートは東ドイツから来たため英語がうまく話せず、話が全く噛み合いません。お互いに理解できたのは、相手の名前。ヨーヨーはヘルムートをヘルメットと聞き間違いバカにするが、自分の名前をヨーヨーだと告げることで、逆にバカにされます。

途中でヨーヨーは義理の妹のアンジェラを見かけ、彼女を無理矢理タクシーに乗せて2人は喧嘩を始めます。

ヨーヨーの自宅に到着し、ヘルムートは帰る道を教えてもらうが理解できず、ままならない運転で夜の街を進んでいきます。

③パリ編

出演俳優:ベアトリス・ダル
     イザック・ド・バンコレ

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評価
⭐️⭐️⭐️
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物語冒頭、酒に酔った2人組の男性が悪ノリで運転手のイザークをバカにしますが、ついに痺れを切らしたイザークは2人を途中下車させます。しかし、怒りに身を任せた彼は運賃をもらうのを忘れ、今日はついていないと。

そんなイザークは途中で盲目の女性を乗せることになります。イザークは、車内灯をつけてあげたりタバコの火をつけてあげたりと優しさを見せるが、盲目が不自由だと言う彼に対し女性はそういうわけではないことを投げかけます。

様々なことを肌で感じることができる女性は、イザークの肌の色や出身地を見事当てて見せます。

女性が降りる際、同情したイザークはメーターが49フランを示しているにもかかわらず、47フランにサービスしようとします。女性は乗っていた時間でおおよその金額が分かると言い、イザークに50フランを渡して降りていきました。

女性が降りたあと、イザークは接触事故を起こしてしまい、相手の男性に「お前は盲目か!?」と罵声を浴びせられてしまうのです。

④ローマ編

出演俳優:ロベルト・ベニーニ
     パオロ・ボナチェリ

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評価
⭐️⭐️⭐️⭐️
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運転手役は『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)のロベルト・ベニーニです。

イタリアのローマの明朝、1人でやけにテンションが高い運転手のジーノは、ひたすら訳の分からない独り言を発しながらタクシーを走らせています。

そんな中、1人の神父がタクシーに乗ろうとするが、車を前後させたりと、執拗に嫌がらせをします(このシーンが何気に面白いです)。

神父を乗せたジーノは懺悔がしたいと言うが、結局卑猥な内容の話で、これまた訳の分からない方向へと会話(というより独り言)が続きます。神父の異常事態に気が付かないほど会話に夢中の彼。途中で気づいてもおかしくない場面はあったものの、まるで気にも留めていません。

ようやくジーノは神父の異常事態に気がつくが、時すでに遅し。息を引き取ってしまったと思われる神父。ジーノは本当の懺悔をすることに。道端のベンチに神父を座らせたジーノはローマの暗闇へと消えていきます。

⑤ヘルシンキ編

出演俳優:マッティ・ペロンパー

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評価
⭐️⭐️⭐️
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ウトウトしている運転手のミカのもとに無線連絡が入ります。現場では立ったまま寄り添いながらうたた寝をする3人の男性がおり、彼らはタクシーに乗り込みます。

そのうちの2人によると、今日はもう1人の男性アキにとって人生で最悪の日らしい。彼らはアキの不幸な一日を語り始めますが、事あるごとに口論に発展してしまいます。話を一通り聞いたミカはアキよりも自分の方が不幸だと言います。

妻との間に生まれた子供が未成熟であり、この先生きるのは厳しいと医師に言われたこと。娘への愛情を押し殺してしまったこと。それでも頑張って懸命に育てていこうとしていた矢先に娘が息を引き取ってしまったこと。

乗客の2人はミカの話に涙し、友人のアキに対して急に辛辣になり始めます。

そんなこんなで目的地に到着した頃にはヘルシンキでもすっかり夜は明けているのでした。

全編を通して

私がこの映画で一番好きなエピソードはニューヨーク編です。2人の会話がまるで漫才師のようで、見ていて終始楽しかったです。

この映画の面白さは非日常的ではないところにあると思います。何気ないタクシーでの会話風景の、自然な感じ(うまく表現できませんが...)が非常にいい味を出しているように思えました。

アクションや恋愛、ホラーにファンタジーのような要素は一切なく、あくまでタクシー内での運転手と乗客の会話のみで成り立っているということです。例えばアクション映画だと、メインのアクションシーンが終わると退屈になったりすることもあります(アクション映画を否定するわけではありません。個人的にも好きなジャンルなので...)。もちろんそれまでの過程で面白さを見出している映画もたくさんありますが。

この映画は日常でもごく平然と起こり得るようなテーマを題材とし、それ(タクシー内での会話)が延々と繰り広げられているため、最後まで全く飽きずに観賞することができたと言えるでしょう。

また、5つの違うシチュエーションが展開されているのも面白さを持続させる要因になっていたりするのかも知れません。これがオムニバス映画のいいところでもあります。

あらすじをざっと紹介しましたが、こういう映画って実際に見てみないと面白さが分からない部分もあるので、ぜひ鑑賞していただきたい映画です。

ナイト・オン・ザ・プラネット』、『ラブアクチュアリー』はどちらもU-NEXTの見放題対象作品(2021.7.28現在)となっているので、ぜひご観賞ください。

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