エンジェル投資家(ジェイソン・カラカニス/著)

ANGEL - How to Invest in Technology Startups by Jason Calacanis

<著者>

ジェイソン・カラカニス - 情報テクノロジー分野の起業家、エンジェル投資家、著者並びにポッドキャスター。セコイヤ・キャピタルのスカウトメンバー。メディアにも頻繁に登場。

<本書の概要> 

シリコンバレーで展開されるエンジェル投資ゲームを詳細に記した本。ゲーム化することで効率を最大限に上がることに成功したビジネスモデル。シリコンバレー投資家の頭の中まで理解できる貴重な本。エンジェル投資家を目指す人のみならず起業家にも役立つ本。

<孫泰蔵さんの寄稿>

:カラニカスは、メタ認識に優れた分析的な性格を持ち、エンジェル投資のシンジケートのインサイダーである。

:クラウドファンディングがどんどん進化しており、ICOなど資金調達手法も生まれている。ベンチャーファイナンスのデータ化が進んでおりAIが投資アドバイザーとして役立つ時代が到来するかもしれない。クリプトカレンシーをはじめと留守トークン・エコノミーの発達は、資本主義のあり方やシリコンバレー型エコノミーモデルが陳腐化されるかもしれない。今起こっている情報革命は民主化と大衆化が通奏低音であり先進国のあらゆる分野で特権が無くなっていくことが必定だ。

:エンジェル投資家は、① 世界をよりよくする伝道師であること、②創業者に大きくものを考えてもらうための盾になること、③プロダクトやビジネスモデルにとうしするのでなく人に投資すること、④自分の使命を熟知し、苦しいときに逃げ出さない創業者を指示し続けること、⑤常に脱学習し続けなければならないこと。

< 本書からの抜粋>

:創業者やイノベーターは決して金儲けのための傭兵ではない。むしろ未来を広める伝道師だ。

:優秀なエンジェル投資家に必要な4つの能力は、①小切手を書ける事(資金)、②創業者が様々な課題を解決するのを手助けできる事(時間)、③創業者と投資家、顧客を仲立ちできること(ネットワーク)、④創業者がミスを犯して時間やカネを無駄にするのを防ぐこと(専門知識)。加えて、人付き合いの能力が必須。

:エンジェル投資家が探しているのはワイルドカード。優れた創業者はほぼ全員が頑固で熱狂的なワイルドカード。自分のビジョンを追うことに懸命で他人の感情など全く注意を払わない人種だ。

:1000億ドル超のテクノロジー企業は、アップル・マイクロソフト・グーグル・シスコ・フェイスブック、アマゾン、オラクルの7社。100億ドル超企業は、エアビーアンドビー、ウーバー、ネットフリックス、リンクトイン、ツイッター、ピンタレスト、など。

:ヨーロッパはおしなべて社会主義的、官僚的で反起業家的だが、大きな例外はスウェーデン。スポティファイ・キング(キャンディ・クラッシュ)・モーじゃん(マインドクラフト)、スカイプ、サウンドクラウドなどユニコーン企業を生み出している。

:ネットワーク・エフェクト=ネットワークの価値は参加するメンバーの数の2乗に比例して高まる。

:ディールメモを残す。予想というのは、自分の過去の決定から学ぶプロセスだ。だから自分の決定をきちんと書き留めておき、後で定期的にその決定を振り返らないと予測に役立てることが出来ない。

:創業者にする4つの質問(自分自身に対する質問でもある) ①なぜこのビジネスを選んだのか、②どこまで本気なのか、③ビジネスで成功するチャンスの度合い、人生で成功するチャンスは?、④成功した時の収益やリターンは? → ①あなたは今どんな仕事をやってますか?②あなたはなぜこれをやっているのですか?③なぜ今なのか?④あなたの不当なまでの優位性は何か?

:小さくスタートするのは構わないが、小さく考えてはダメだ。

:ウソで始まった関係は必ず涙で終わる。妄想なら受け入れていいが、ウソには絶対に近づくな。事実に関わるウソと高遠な目標(妄想)との間には違いがある。

:人生は短いかもしれないが、人の記憶は長い

:投資家は創業者に対して指示でなく質問として言うべき”xxxをするべき”ではなく、”xxxを考えたことがありますか?” 前者は命令的であり、後者は十分な注意と気配りを与えている印象。

:負けるのは面白くないが、負けに費やす時間とエネルギーが大きければ大きいほど、敗者になった気持ちが強くなる。そうではなく、勝者に4倍かけしてそこに費やす時間を増やすべきだ。

:創業者の仕事は大変だと思う。しかし実は創業者、中でもCEOは地球上で最悪の仕事だ。チームの優秀な人たちが解決できない大問題は全てCEOに回てくる。しかもあらゆる方向から攻撃にされされて相談する相手もいない。エンジェル投資家にとって一番の仕事は、CEOがくのうしているときにはそこにいて、話を聞いてもらっていると感じさせ、自分が味方であることを確実に分からせることだ。地雷が埋まっている場所を教えて正しい方向に導く事は出来ても、運転を代行してパイロットになることはできない。

:確証バイアス - 自分の持つ仮説や信念を指示する情報だけ集め、反証する情報を無視する傾向。くまなく見えているようでも視野には盲点がある。故にエンジェル投資家として成功しようとするなら、これまでに学んだことをいったん忘れる必要がある。

:スタートアップがビタミンなのか鎮痛剤なのか?

:鎮痛痛財の場合は、縦軸が”痛みの度合い”、横軸が”痛みを感じる回数”の表で、右上は痛みが強く終始感じる、左下は痛みが弱く滅多に起きない。”機内でインターネットが使えない”はどこに位置するか?左下だ。

:ある種のプロダクトやサービスは顧客を喜ばせるのが目的だ。ディズニーランド、アイスクリーム、映画などは別に特定の痛みを取り除くわけではないが、非常に大きなビジネスになっている。

:人が重要なのではない、人がすべてなのだ。

(私の所感) ジェイソン・カラカニスさんが実体験をもとに語る投資家目線や創業者目線でビジネスを成功させるために必要な視点も非常に参考になりましたが、最も気になった内容は、序文で孫泰蔵さんが述べている言葉でした。金融の民主化・大衆化が全世界で始まっており、シリコンバレー型のエコシステムは陳腐化していくのだと。本書で記載されているカラカニス氏が実体験をもとに得た教訓を参考にして、これから更に強い流れとなる金融革命により人々の金融へのアクセスの容易さを向上したいです。

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