吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。⑱結婚式編

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これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


筆者スペック

身長:160後半
体型:ギリギリ普通
学歴:私立文系
職業:税金関係
スポーツ経験:バドミントン、水泳
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
最近取り組みだしたこと:自炊

満開のブライド、半壊のプライド

時はカラコンとの3回目のデート、その前日に遡る。
俺は⑭ダークサイド編にて言及した、知り合いの結婚式へ参戦した。彼のことはOTと呼称しよう(作業療法士なので)

OTには申し訳ないが、当初俺は断りたかったのだ。別に仲が悪かったわけではない。どちらかといえば他校であった割には仲が良かった方だし、はっきり言って感謝している。高校時代、何度も大会でカチ合って、たった1度しか勝てなかった相手だ。実力の差は歴然で、それでも嫌な顔一つせずに俺と(無論俺以外ともだが)の試合形式の練習に付き合ってくれた高身長の男前である。ただ、完全に自分の素を出せる相手が俺にとっての友達であり、俺にとって彼はそうではない以上は、彼の式に赴いたところで辛いだけだろうと思っていた。

だが、コロナ禍という言い訳はもう使えない。しかも俺はインドア独身アラサー童貞。逃げ道は無い。何より、貴重な招待枠を俺に使ってくれようとしているのに、それを無下にする気にはなれなかった。

つくづく俺は損な性格をしていると思う。ひねくれていて、理屈っぽくて、書き言葉で話し、熟語が大好きで、頭が悪くて、数字に弱くて(!?)、穿った物の見方をして、卑屈で、自信が無くて、他人の誉め言葉を素直に受け取れなくて、疑心暗鬼で、常に誰かを妬み嫉み、劣等感を抱えて、ゼロヒャク思考で、他人の失敗に安堵し、怠惰で、不器用で、些細な粗が気になって、いつも言い訳を探しているのに、筋だけは通して生きようとする

ここで完全に嫉妬に狂えるほど腐りきれていたなら、それとも何も気にしないテキトー人間だったなら、あるいは俺は童貞ではなくなっていたかもしれないのに。

どうでもいいところで律儀な男。世間体は守れても、心は守れないのだ。

チャペルの扉が開く。

OTは笑顔だった。

OTの奥さんも笑顔だった。

新郎新婦の家族も笑顔だった。

他の出席者も笑顔だった。

皆笑顔だった。

俺も笑顔だった。

…いや、本当に俺は笑えていたのか?

新郎新婦のキスの瞬間、俺の網膜は焼けた。

……

………

新郎新婦の名誉のために書いておくが、式自体は楽しかった。旧友たちとも会えたし。

だが、あんな気持ちで式に臨むのはあれで最後にしたいものだ。

つーか新郎新婦のメモリアルフォトブック?パンフレット?みたいなの貰ってもどうすりゃいいんだよ?後生大事にとっとけってか?それをやるのは君らのご両親とおばあちゃんだけだと思うぞ。普通にいらないです…個人情報の塊だからシュレッダーにかけます…。

落差で風邪を引きそうな

何をトチ狂ったのか、式後俺は別の友人に便乗してソープに行った。彼のことはポルシェと呼称しよう(ポルシェに乗っているので)

…エグめのパネマジに遭った。しかも歯ァ矯正してるし。前当たり引いた店だから大丈夫って思ったけど意外とそうでもないらしい。

結婚式は気を遣う。きっと俺は疲れていたのだろう。

秒で果てた。

風俗に行く度に虚無っていた俺だったが、童貞パラダイムシフトが起きたということもあり、友人とレジャー感覚で遊びに行く分にはただ単純に楽しいことが分かった。そんなことしなくていいから(良心)

なお、次の日はカラコンのデートである。お前精神状態おかしいよ…。

その後、ポルシェとは居酒屋へ。彼も俺の恋愛事情はある程度知っているため、必然的に”そういう話”へ移行する。

ポルシェは呆れた、あるいは心配した様子で俺に問いを投げかけた。

ポルシェ「ケツアナゴ(筆者)さあ…ちゃんと休んでる?」
俺「ここ最近休みは基本デート入ってるな。でも俺がやりたくてやってることだから」
ポ「仕事は繁忙期でずっと忙しくて、休日はアプリの女の子とデートだろ?やりたくてやってることとはいえ、初対面か、それに近い女の子と付き合う目的で会うとなるとずっと気を遣ってるわけじゃん。ケツアナゴはさあ、心が休めてないだろって言ってんの」
俺「ム…」
ポ「あんま根詰めると壊れるぞ。なんか一人でリラックスできる場所出かけるとかした方がいいよ…」

一理ある。あるが、これは賢者同士の会話である。

錆びつく劣等感エンジン

そうしてカラコンとの3回目デートに臨んだ俺。別に前日ソープのせいで賢者になったからとかではなく、シンプルに臆病者だったせいで失敗した。

カラコンとの関係の構築、そして醸成の過程で、絶対に成功しなければという焦りの気持ちがあったことは否定しない。今まで会ってきた女の子の中で一番の美人であったし、価値観も致命的な乖離はないように見受けられたし、礼儀正しいし、頭も良い。

だからこそ確実に仕留めたかったのだ。だが、向こうからの熱量を感じられなかったが故に、その確実性を見出せなかったが故に、俺は最後の仕上げにかかれなかった。

カラコンとの出会いによって、「恋愛には攻めの気持ちが必要だ」ということを学ぶことができたからこれは前進なのだと、得たものはあったのだと、俺は俺に言い聞かせていた。事実そうだと思っていた。

だが、いくら収穫があろうが、それだけで前を向けるほど俺は強くはなかった。

カラコンとの関係が終わった後、俺はその事実から逃げるようにマチアプ活動を再加熱させた。しかし、自分で選んだ地獄を前に、結婚式の陽光を背に、尚も変わらない現状に、そして己の童貞に、俺は膝を折りかけていた。

ポルシェの言う通り、俺の心は休めていなかったのだ。

一度ダークサイドに堕ちかけて起動したはずの劣等感エンジンが、またしても錆びつこうとしている。

これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


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