吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。⑰マッチングアプリ編その4

前回の記事

直接の続きのため、ご一読いただければ嬉しい。
これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


筆者スペック

身長:160後半
体型:ギリギリ普通
学歴:私立文系
職業:税金関係
スポーツ経験:バドミントン、水泳
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
資格の勉強:記事の執筆のせいでかなり疎かになっている

登場人物紹介

ベビー
たまたま俺に彼女できた報告をしたばっかりに、今に至るまで俺の無能童貞恋愛相談を受け続けているかわいそうな童顔の友人。ドラゴンボールGTには出ていない。圧倒的な恋愛強者でもあり、俺を本格的に恋愛戦場に引きずりこんだ元凶の一人でもある。前回に引き続き登場。

カラコン(27)
前回に引き続き俺とデートしている美人。黒目が小さいのがコンプレックスでカラコンをしている。美容オタクらしい。

”3回目”は本当に告白に適しているのか

3回目のデートで告白しろ、とは昨今よく言われることである。
だが、会う回数ではなく会っている時の密度によって関係は深まるし、相手によっても異なるので一概には言えないのは当然のことだ。

俺とカラコンの密度は…まあ薄いってことはないだろうけど…うむむ…いや…うーん…。

ちなみに、我らがベビー御大のお言葉はこうである。

ベビー「どっちみち3回デートして無理な相手とはそれ以上デートしても時間の無駄だよ。次で決める気で行け」

はい。おっしゃる通りだと思います。

ラウンド3:未だ白線の内側で

前回あれだけウジウジしていたが結局3回目のデートの誘い自体には成功している。デートプランは、大型ショッピングモールでランチしてから俺の服を選ぶというものだ。俺が自力で服選ぶのが苦手だという話になったらこうなった。

ベ「付き合いたいって思ってないやつの服なんか選ばねえよ」

分からん。童貞だから何にも分からん。いや、分からないから童貞なのだろう。

……

………

話自体は普通に盛り上がった。時折の沈黙も慣れたものだ。

カラコン「私そこまで子ども欲しくないんですけど。ケツアナゴさんはどうですか?」
俺「欲しいか欲しくないかで言えば欲しいよ?けど産むのは俺じゃないから欲しがる権利は俺にはないし、相手が好きで結婚するのだから子どもがいなくても別にって感じ。女の子が欲しがるならそれを見据えて人生設計をするし、してもらう。欲しがらないなら作らないでいいかな」

何を大真面目に答えてるんですかね。

前回も書いたが、カラコンの考えには同調する部分が多い。用事がなければ家から出ない、だが出かけるのは好き、一人時間を大切にしたい、友人をないがしろにはしたくない、子ども願望はそれほど強くない、自分を陰キャだと思っている、仕事終わりに会うのは好きではなく平日休日でメリハリをつけたい、エトセトラエトセトラ。ただ、メッセージのレスポンスが若干遅い。

俺「〇〇はどう?」
カ「〇〇で良いですよ!」

俺「〇〇とかいいんじゃない?」
カ「〇〇で大丈夫です!」

俺「ていうか、まだタメ語は解禁してくれないのねw」
カ「タメ語だと私ウザいですよ?」

カ「そうこうやってるうちにもう〇〇時なんですよね」
カ「もう〇〇時だし帰りますか!」

俺「俺、カラコンさんともっと色んなところに行ってみたいです」
カ「ああ…どうも…」

正直、こちらに対する熱量をまるで感じられないこと、レスポンスが若干遅いこと以外は、カラコンを恋人にしたいという気持ちしかなかった。

今振り返れば愚劣の極みだ。無能だ。蒙昧だ。臆病にも限度がある。カラコンに熱量がないと決めつけるのは地べたに這いつくばってからでもよかったというのに。

情けないことに、ここまでやって俺は告白できなかったのだ。

──俺なんかのことを好きになってくれる人はそうそういないだろうから、俺は俺のことを好きな人を好きになろう。

俺の魂の奥底に巣食う闇を、俺は祓えなかった。

カ「しばらく仕事が土日に入ってたり、田舎の家族と旅行行ったり友達と遊んだりで予定合わないんですよね~。予定が合えばまた!」

読者諸君に問う。カラコンのこれはどういう意図だったのか?

いや、もはや聞くまでもない。

トライアンドエラーの螺旋の渦

ベビーには怒られた。当たり前である。

ベ「3回目のデートに来るだけで充分好意的なのに、そこに気づけないところが童貞たる所以なんだよ。しかも服見てくれるオマケつき。普通は好きでもなんでもねえ男の買い物に付き合う暇あったらネイルサロンに行きます」
俺「脈のある子なら多少なりともこういうとこ行きたいああいうことしたいとかそういう主張はないもんかね?」
ベ「逆にそういう主張がない人ほど、めんどくさい案件には首を突っ込まないだろ。服を選んであげるという行為はかなりレベル高い」
俺「でもさあ、人の提案に対して『〇〇でいい』『〇〇で大丈夫』はやっぱ萎えるよ。多少の匂わせは欲しいよなあ?」
ベ「色々やってんのにそれかよって気持ちは分かるけど、そんなんで萎えてたらマジでやっていけないよ?言葉尻一つ捕まえてギャーギャー言ってないで、そういうのは付き合ってから治してもらえばええんや」

つくづく恋愛に関しては正論しか言ってこない男である。

告白できなかった原因は分かっている。

俺は告白されたことしか無く、告白が成功したことは無い。

攻める勇気が俺には無く。

勇気が無かったのは、自信が無かったからで。

自信が無かったのは、経験が無かったからだ。

ならば…一つ一つ学んでいくしかない。どれだけ牛歩でも、俺は確実に歩を進めているはずだ。

攻める勇気。告白は確認作業だと思う。だが攻めなければ何も始まらない。

トライアンドエラーの螺旋の渦。出口の見えない迷路。狂った羅針盤を持って船を漕ぐ。剣山の上を歩く。血を吐きながら続ける悲しいマラソン。それが童貞にとっての、恋愛弱者にとっての恋愛戦場であり、それこそがマッチングアプリである。

未だ痛みは薄れない。心が軋む音が聞こえる。

ここは地獄だ。

だが、選んだのは俺だ。

これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


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