吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。㊲真の試練編その1
前回の記事
続きますよ。脱童貞まではね。
これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。
筆者スペック
身長:160代後半
体型:やや細め
学歴:私立文系
職業:税金関係
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
色ボケ:しすぎてまるで仕事にならない
登場人物紹介
ベビー
たまたま俺に彼女できた報告をしたばっかりに、今に至るまで俺の無能童貞恋愛相談を受け続けているかわいそうな童顔の友人。圧倒的な恋愛強者でもあり、俺を本格的に恋愛戦場に引きずりこんだ元凶の一人でもある。
流石に俺はコイツに何かご馳走しないといけない。
後輩くん
職場の後輩。
根暗チビの俺に対し、陽キャ高身長細マッチョと真逆の存在。
この俺相手に懐に入ってくる対人能力を持つ。
マチアプで作った彼女と倦怠期に突入したらしい。
スイフト
中学の同級生。今でも2、3年に一度飯を食う程度の仲。
俺がニート時代に行った結婚式の新郎はコイツ。
”風俗は浮気ではない派閥”に属している。
ニッサン
大学の友人で、スイフトの高校の同級生。
先日マチアプを始めたらしい。
別に童貞ではないし、俺ほど覚悟ガンギマリでやっているわけでもない。
リターニー(31)
俺がマッチングした女性。
前回、晴れて俺の彼女となった。
熱くて暑い夜が明けて
彼女(何の憂いもなくこの表現が使えることが、俺は本当に嬉しい)とキス止まりで解散した数時間後。
つまり、翌日の朝7時であるが…ほとんど寝ていない状態のまま、俺は友人のニッサンの運転する車に乗り込んだ。追って既婚者のスイフトも乗り込んできた。
寝不足すぎて…そして、お察しの通りの理由でハイ状態を継続中の俺は、前夜の余熱を残したまま己の置かれた状況を語る。
俺「──っていう感じでさあ。まあ、お前らとのコレがあるからそのまま帰ってきたんだけども」
対して、スイフトとニッサンの反応は冷ややかなものだった。
スイフト「は?」
ニッサン「え?」
俺「ん?」
ス「…君はバカなんですか?」
ニ「別にヤッてりゃよかったのにね」
俺「ええ…」
ス「そこは始発でいいだろぉ」
俺「家まで迎えに来てもらってなお寝坊したやつが御託並べてんじゃねえぞカス」
ニ「始発じゃなくても、なんなら僕が○○に迎えにいけばいいだけの話じゃん」
俺「ええ…」
スイフトとニッサンは、俺の友人の中では珍しくヤリチンTierが高めの人間である。(一位はどう考えても同じ研究室の”ヤリチン”なのだが)
特にスイフトは俺とは別のベクトルで性格が悪く女体が大好きのクズなので、まあそういう反応も無理からぬことである。いやそりゃ女体は皆大好きだろうが。
俺「いやでもさ、付き合って初日で…ってなんか違くないか」
ス「別によくない?君既婚者じゃないんだし(既婚者マウント)。素人とはヤれる時にヤっておけばさ。結婚するわけでもないし(断定)」
俺「マジで死ねよオマエ(いつもの挨拶)」
ニ「ケツアナゴ(筆者)くんがそのまま帰ったことで、彼女の面子が潰れたって発想にはならないのかね。むしろ礼儀なんじゃないの。据え膳喰わぬは──」
俺「──男の恥ってか。…そういう考えもある?のか…?でもなあ…もっとこう…ジックリコトコトさぁ…徐々に高め合うっていうかさぁ」
ニ「君は中学生か…?」
何言ってんだ。童貞だぞ。本質的には中学生と変わんねえよ。
ス「ケッケッケ。帰ったらLINEブロックされてたりしてな」
スイフト以外に言われていたら確実に殺している。(逆説的に、これでも殺す気にならないからこそ俺はニッサンと共に彼の結婚式に行ったのだが)
俺「いいんだよもう終わったことは。またすぐ会うんだから」
ニ「まあ、それなら…」
俺「それより俺にとっちゃ、これからどうやってこの関係を維持するかを考えることに、心血を注ぎ続けなければならないフェーズに移行したことの方が大事なんだよ」
そう。ここまでやって、俺はやっとスタートラインに立ったに過ぎない。
薄々感づいていたことだが、もはや魔法使い化の未来に抗うだけでは、俺の闇は完全には祓えない。
男と女が男と女で在り続けるための、真の試練がこの先に待ち受けている。
彼女を作ることは難しい。それはこれまでの地獄で嫌と言うほど思い知った。だが、彼女との関係を維持することは、きっとそれ以上に難しい。
最大公約数に及第点と思ってもらえるような外見的魅力と、それに付随する表面的な性格的魅力を見せつけること。当然、それだけでは足りない。
ましてや、リターニーのスペックは俺を遥かに上回っている。何せ倍以上年収の差があるのだ。勝っているところを強いて挙げるとすれば、リターニーの確定申告程度ならば、俺は鼻をほじりながらできるということくらいである。
…男女の関係は競い合いではない。そこには本来優劣も勝敗もない…はずだ。それにリターニーは、男も女も、どちらの付属品ではなく対等であるという信条を持っている。だから、そういう表面上のスペックだけで俺を見ているわけではないのは理解している。頭では分かっているが、やはり心配になる部分がある。
今でこそリターニーは俺に燃え上ってくれているようだが、現実問題として、それが落ち着いて冷静になる時は必ず来る。たとえ冷めることはなくとも、狭窄状態に陥っていた視野が元に戻る時はやがて来る。ベビーや後輩くんの彼女たちや、スイフトの奥さんと同じように。
そうなった後も、リターニーと良好な関係を築いていくためには、俺が彼女に追いつく努力を続けることと、彼女の情熱の炎に薪をくべ続ける必要があると思う。少なくとも今の時点では、彼女と長く一緒にいたいと思うので。
どうすればそれができるのか?
考えなければ。
考え続けなければならない。
…
……
………
ニ「いや…まず楽しんだら…?」
うーん…まあ…それもそうか。
何かとつけて考えすぎてしまうのが、俺の悪い癖だ。
ス「女と付き合うだけなのに悲壮感漂わせすぎでしょ。いいんだよ、素人なんだし、ヤりたいようにヤればさ。君は別に既婚者じゃないんだし。結婚もしないだろうし」
俺「毎度一言余計なんだよ。死にてえのか?」
ス「やだよ~怖いよ~;;」
まどろみの中で天蓋を閉じる
LINE。
いつものように、俺はあらゆる近況報告をベビーにしていた。
俺『──って言われたんですけどもね』
ベビー『しょうがねえだろ童貞なんだから』
俺『…』
ベ『でもやっぱお前は本当にアホだな。いくときにいくのが男だよ。セオリーとか関係ないから』
俺『性とは 愛とは』
ベ「お前セ○クスしたいんだろ。勇気が足りなかっただけや』
俺『しかしなあ…こういうもんは…段階踏むもんかと』
ベ「いいんだよ気にせんで。できる時にセ○クスせい。そういうのは女の好き度によるんやで。女は男のこと好きなら平気で股開くやで』
俺『そうなのか…』
よく考えたら路上でキスを要求されているのだから当たり前っちゃ当たり前か。
何を一人でグジグジしているのだろう。これこそ彼女と二人で乗り越える問題ではないのか。
ベ『とりあえずリターニーさんベタ惚れっぽいし、まずは別れる心配より、今までできなかった恋愛の楽しさを存分に味わうといいよ』
確かに。
そうだな。
そうさせてもらうよ。
…
……
………
後日。
俺「でもやっぱなあ…大事だよな…ちゅきちゅき期が終わった後のことを考えるってーのも…なまじ向こうのスペック高いしよぉ…その気になれば俺よりもっと…」
後輩くん「うーん…ケツアナゴさんってケツに火がつくと勝手に這い上がってくるタイプなんで、この関係が自分の努力無くして永続しない自覚がある時点で普通にどうにでもなると思います」
ま、とりあえず楽しもうかな。
グジグジ不安を垂れ流しながらでもさ。
これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。
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