吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。⑤街コン編その1

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これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。


筆者スペック

身長:160代後半
体型:やや細め
学歴:私立文系
職業:税金関係
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
最近見た悪夢:俺の担当している客に税務調査が入った

ボーナスという悪魔

ペアーズに心を折られ屍と化していた俺は、それでも懸命に働いていた。
そして来たる、夏のボーナス。
給料分は貯金に回すとして、残りで何を買ったものか。

振込日を楽しみにしている俺に、悪魔が囁いた。

──もうマチアプもやってないんだしさ、吉原行かねえか?

おいおい、愛のないセックスでは満足できないのではなかったのか?

本当に俺は愚かな性欲猿だったと思う。ここで吉原のNNの110分65,000円でヤりたい放題していなければ、今欲しいものがいくつ買えただろうと今でも思わずにはいられない。

だがしかし、人生とは不思議なものだ。

ここが運命の分水嶺だったとは、当時の俺は知る由もなかった。

賢者となった愚者、伸ばされる非童貞の手

NNとは生挿入生中出しの意味である。

お前ら、避妊具はつける店に行け。マジでな。

俺は性病をもらったわけではなかったのだが、膣の雑菌が入り尿道炎になってしまったらしい。(泌尿器科の先生曰く『これも広義の意味では性病だね』)

出すもん出して冷静になり、出費の痛さに頭を抱え、挙句尿道炎になり青ざめ、結局俺が望むものの本質へはいくら金を出しても届かないという事実にまたしても絶望し虚無へ落ちた。

虚無のまま飲み会へ赴き、相も変わらず思いの丈を酔いながら語り出す。

俺「結局俺は愛し合いたいだけなんだよ、それが満たされないって分かってるのに安易に性欲解消の手段に走っちゃったんだよ、けど高かろうが安かろうがサービスはサービスなんだよ。サービスサービスぅ!(葛城ミサト)そこに愛はないんだよ。そこに愛はあるんか?(大地真央)(酔っ払い)」

そこで、久しぶりに会ったかつての研究室の仲間(ヤリチンのクズ)(誉め言葉)が、軽い調子でこんなことを言い出した。

ヤリチン「あー?なら来週街コン一緒に行くべ。土日どっちが良い?」

そう。

本当に馬鹿馬鹿しい話だが、

俺は吉原に行ったおかげで、再び恋愛戦場に戻って来たのである。

童貞、ヤリチンを伴い戦場へ

俺たちが参戦した街コンとは、以下のようなものだった。

・自治体が開催しているものではない

・平成生まれ限定(当時の20歳から34歳まで)

・立食パーティ形式で、男が女性の席を交代で回る

・一回15分で、最後にフリータイムがある

・一つの卓に男が3、女が2くらいがデフォルト(総数70人くらい)

・プロフィールカードがない。婚活というよりは恋活に寄っている

正直結婚願望があるかと聞かれたら、"分からない"というのが正直なところだった。結婚したいというよりは、結婚したいと思える人に出会いたい、くらいの熱量。

だから、こういうカジュアル目の方が、俺にもヤリチンにも性に合っていたというわけだ。

ヤリチンと入場前に一缶空けるとかいうクソのようなムーブをかまし、いざ出陣。

見せてもらおうか。街コンの様相とやらを!

納得のラインナップ

ネットではこんな言説をよく目にする。

『街コンなんて行っても集まるのは売れ残りだけ』

なんとも失礼極まる意見だが、実際に行ってみた俺が思うことは……

ほとんどそれは事実であるということだ。

見た目がどうとかいう問題ではない。男か女かに関わらず、初対面の人間と当たり障りのない会話をすることすらできない者があまりにも多すぎる。

俺だって生来の陰キャだ。人見知りだし、初対面と話すのは苦痛極まる。

だが、苦痛であっても、下手であっても、苦手ではなかったのだ。

数多の陽キャに童貞弄りで揉まれた経験がここで活きた。
そして生来の声の大きさと通りやすさが、場の流れを支配した。

別に俺ばかり喋ってたわけじゃないぞ。当然他の男にだって話を振った。

それが女子ウケしたかどうかは分からん。ただ、沈黙よりはマシだと思った。

とはいえ、好みのタイプもさほどおらず、好感の持てる中身もさしておらず、結局俺の街コンは不作で終わるかと思われた。

そして、運命のフリータイムが始まる…。

童貞しべ長者

──話さなきゃならないから話してたけど、自由に移動していいって言われても別に話したい相手とかいないんだよな。

そんなことを考えながら、友人のヤリチンが目をつけた丸の内OLにアタックをかけているのを横目に酒を飲んでいると、

「…」

誰か見ている。

女性が一人、俺を見ている。

──ん?

実は、先ほどまで、時間の都合で全ての女性卓を回れたわけではなかった。
今まで話してきた中の誰でもない女性が、俺に話しかけてきた。

彼女は32歳。フリーランスのプログラマーで、見た目はまあ普通といった具合だった。特に琴線に触れる要素はない。

だが、それまでの声も小さくて話もできなくて反応も悪いわりに美人でもない(クッソ失礼)人たちとは一線を画すコミュ力を彼女は持っていた。

他の痛い沈黙に刺されるのも嫌だった俺は、その人と話すことにした。

俺「どうですか?この回。気になる人いましたか?」

プログラマー「いや…君は?」

俺「うーん…ハハ」

プ「そっか~。最後に彼女いたのいつ?」

俺「いや、いたことありませんけど」

プ「は?嘘でしょ?」

話しているうちに「弟みたい」だのなんだのかんだの何様発言を言われ、「ああ、これ俺に気が無いな」と完全に捨てゲー状態に入った俺は、他に話したい女性もいなかったので、(途中で風俗を挟んだことを隠しつつも)どういう成り行きで街コンに来たのかをくどくどと説明した。

すると、プログラマーが笑って言った。

プ「来週合コンやるんだけど、来る?」

どういうことだろう。

街コンに来たはずなのに、デートではなく合コンの予定が入ってしまった。

売れ残りが売れ残りたる理由とは

断っておくが、俺は他の参加者を見下す気はない。
現状を変えたくて勇気を出して、出会いの場に足を運んだ。
それは褒められて然るべきだし、馬鹿にする権利は誰にもない。
結果的にそこで彼女を作れなかった俺が、ふんぞり返る資格もない。

けどな、奥手と奥手じゃ何も始まらないんだよ。

プロフィールカードすらないんだぞ?すべてを聞かないと何も分からないし何も伝えることができないのに、黙っててどうするんだ。俺はそう思った。

出会いの場として適しているのはどちらか

昨今の出会いの場としてポピュラーなのはやはりマチアプだ。
だがしかし、童貞が、たったそれだけでマチアプをやり続けようというのは、いささか早計ではないかと俺は思う。

恐らく、こういうものには相性と適性がある。

会うまでに労力を使わなくてはならないマチアプと、金さえ払えばとりあえず会うことはできる街コン。

パターン化したメッセージを送り続け、そのうちの何人が釣れるか期待もできないマチアプと、金さえ払えばとりあえず話すことはできる街コン。

無限の競合とプロフだけで戦わなくてはならないマチアプと、限られたライバル相手に初手で中身で勝負しに行ける街コン。

無数に選択肢がある(ようで実際はほぼない)マチアプと、限られた選択肢からピックするしかない街コン。

恐らく、大多数の人間にとって、街コンは魅力的に映らないだろう。
特に男性諸君にとって、コスパ的には最悪の部類に入る。
「この回はハズレだな」とお互いに思っている不毛な回もあるだろう。

だが、俺のようにマチアプでそもそも会えない奴は、一度行ってみることをお勧めする。自分が戦うべき同性が、どういう奴らか分かるだろう。

大海を統べる鯨にはなれないかもしれない。

しかし、街コンの競合達のどういうところがダメなのか、それを直に見て分析していけば、井の中の蛙にはなれるのではないかと、俺は思う。

これは魔法使い化の未来に抗う、アラサー童貞の記録である。

あ?オチ?

丸の内OLはヤリチンが持って帰ったよ。


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