吾輩は童貞である。魔法使いになる気はまだ無い。⑬アムウェイ女編

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筆者スペック

身長:160代後半
体型:やや細め
学歴:私立文系
職業:税金関係
趣味:映画鑑賞(ハリウッドからクソ映画まで)
今の心境:公私ともに辛い。いやマジで

最低童貞パラダイムシフト

”元カノ”と形容するほかない人型の生き物に振られた翌日。

俺は、ソレを脳内から消し去るべく高級ソープに行った。

俺「昨日彼女と別れました。忘れさせてください」

嬢「……お客さんに言うことじゃないかもしれないけど、私も昨日彼氏の浮気が発覚して……帰ったら別れることになると思う……」

俺「……」

嬢「……」

俺・嬢「アッハッハ!!」

めちゃくちゃ楽しかったです。

そこに愛はない。なかったが、不思議と俺がそこで感じたものは、いつものような虚無感ではなく、解放感であった。あの時点で元カノから別れ話を切り出されなかったとしても、どうせ長くは続かなかっただろうと、徐々に冷静になっていく頭で考えることができたのが大きいであろう。自分の負担にしかならないのなら、遅かれ早かれ消滅していた関係だ。そういう意味では、この時点で別れることができてよかったではないか。俺はそう思えた。

また、端から見れば同じだろうが、己への評価に「風俗に行かなければ性行為ができない程度の人間」から「彼女を作れる人間→いずれ性行為だってできる人間」へ変化する童貞パラダイムシフトが起こった。ゆえに、風俗へ赴いても、前ほどの虚無を抱えることは無くなったのだ。

それは別にプラスの変化というわけではなかろうが…。

こどおじ童貞、家なき童貞へ

あ、相続税関連の俗語じゃないですよ。(うるせえ)

出すもん出してスッキリした俺は、ふと考える。

──この先彼女を作るうえで、俺が改善できるプロフィールって何だ?

自分のステータスを改めて考える。

身長を伸ばす……骨延長手術でもやれってか?愚かだと思うよ俺は。

年収を増やす……無理とは言わんが今すぐどうにかできることではない。

体型を改善する…やや細身で筋肉が付きにくい体質。ここからマッチョになることは難しいだろうが、太らないようにすることはできるだろう。ただまあ、今すぐどうにかできることではない。(いや運動はしろ)

趣味の幅を増やす……女受けするという不純な動機で始める趣味に、誠実性もクソもないしそんな理由じゃ多分長続きしない。

…。

……。

………。

──するかァ。一人暮らし…

そう、何回か触れたが、俺は未だ実家暮らしだったのだ。

長らくしたいと思っていたが、大したメリットが無かったので、それまでしたいしたいと言いつつも実行には移してこなかった。貯金も大して無かったし、何より職場が実家からの方が近い。

だが…

「機会は最大化すべき」。過去の自分の言葉にならい、俺はついに一人暮らしを決意したのであった。

アムウェイ女、再来

そんなこんなで一人暮らしを初め何か月かが経った後。

アムウェイ女から連絡が来た。

アムウェイ女とは、街コンで俺と出会い、俺を合コンに誘った32歳のフリーランスプログラマー人脈オバケのことである。多分アムウェイではない。詳細は以下を参照。

アムウェイ女「最近どう?日曜の夜飲まない?」

──明日俺仕事なんだけどなァ。

年末にも飲みの誘いが来たのだったが、さすがに嫌なのでお断りした。

んで、そのまま放置していたら懲りずに別日を提案してきたのである。

正直ブロックして終わりでもよかったのだ。別に好みではなかったし、何様発言が多すぎて中身も気に食わなかったので。だが、アレの持つペラッペラの人脈を失うことは惜しい。そこから出会いの糸口が掴めるかもしれない。

──それに、もし向こうに気があったのなら、なあ?

しばしの逡巡。

──いや、仮に付き合うとして、アレと付き合えるか…?

ごめん、それは無理かもしれない。

だが、この調子だと一度誘いを受けない限り永遠に誘われるだろうと、観念して飲みに行くことにした。

乗り気はしないが、これが運命の分水嶺となることを祈って。

俺が最も嫌いなタイプの人間

結果から言えば、ヤれもしなかったし、そんな気も起こらなかったし、アムウェイ女は俺のことを飲み友達程度にしか思っていないし、俺はアムウェイ女がより一層嫌いになっただけで終わった。

俺「俺と会う前も誰かと飲んできたって言ってましたよね。で、俺との後も誰かと飲むわけだ。すごいですよね純粋に。俺にはそんな元気ないですよ」

アムウェイ女「色んな人と会って色んな話を聞くのは楽しいよ?同じ価値観の人とだけ会っててもしょうがないし、人とのつながりで新しい出会いが生まれるかもしれないし。仕事も貰えるかもしれないしね。それに、色んな人と飲み友達になれたら、それってとっても素敵なことじゃないかな」

──テメエにとって俺は友達だってか?

言っていることは理解できるが、そんなテンションで誘われる俺の身にもなってほしい。お前のつまらん話を聞かされるため”だけ”に、俺はわざわざ身銭を切ってこんなところまで来たのか?それと、俺の友達の定義はお前ほど広範じゃない。陰キャ童貞を嘗めるなよ。

この時点で全てが面倒になった俺は邪気を解放した。

俺「でもそういう関わり方ばっかりだと特定の誰かと関係が深まることってなくないですか?…恋人欲しいとか、結婚したいとか思わないんですか?」

ア「欲しくないわけじゃないけど、今はシェアハウスしてる友達がいるし、別に寂しくないんだよね!」

俺「でも、友達は友達ですよね。友達には友達の人生がありますし。いつまでも一緒ってわけにはいきませんよ」

ア「…」

俺「俺は恋人欲しいですよ。結婚したいとはまだ思えませんけど、そう思える相手に出会えたらいいなと思います。それが俺が女の子と会う理由です

──だから、余計な金と時間を使わせるんじゃねえ。32歳で友達目当てで街コンまで繰り出しやがって。真剣に出会いを求めてるヤツに失礼だと思わねえのか。

「価値観の合う人が良いです!」
なんてのは所詮無理な望みだと思う。合わないのが価値観だ。
だから俺は、その中でお互いが譲歩できる着地点を見つけようと、理性的に話ができる人が好きだ。そうする前に元カノとは終わってしまったが。

だが、ここまで俺の気に入らない要素しか持ちえないとなると、アムウェイ女にはもはやその譲歩をする気さえ起こらなかった。

若干の怒気を孕んで返した言葉。

しかしながら、アムウェイ女は、俺の真意をくみ取ることはない。

ア「来週また合コンやろうと思ってるんだけど、誘ってあげようか?」

相変わらず上から目線で、俺に言葉を投げかける。

ア「女の子の方はそこまで真剣に出会いを求めてるって感じじゃないんだけどさ、ケツアナゴ(筆者)くんには女の子とたくさん話して自信をつけてほしいなって思うんだよね」

俺「そうですか。行きたいですね。予定どうなるか分かりませんけど、ぜひ誘って欲しいですね(棒読み)」

アムウェイ女の人脈という、最後の望みさえ断たれた俺。

もう、用済みというほかなかった。

別に女友達を求めているわけじゃない

合コンには行かなかった。

女友達から新たな出会いがあるかもしれない。その可能性さえ否定するようなことはないが、そこに懸けるには俺にはあまりに金も時間もない。

もう結婚相談所行けよというツッコミは野暮なのでやめていただくとして、アムウェイ女にはどうも俺の出会いに対する熱量は伝わらなかったらしい。

そもそもアレは呑気すぎる。自分の歳を理解しているのか?焦ろとは言わないが、言動の端々から自分の人生ときちんと向き合っている感じがしないのだ。その辺の飲み屋で小一時間飲む程度の関係値の人間を多数抱えて、何が人脈なのか俺には理解に苦しむ。そんなものに何の意味があるんだ?それらがお前を助けてくれることはないぞ。俺がお前を見限ったように。つーか職業柄フリーランスのくせに危機感足りない奴俺嫌いなんだよ。ガチで危機感持った方がいい(私情)。結局お前が持ち得るものが何もないから、関係値の低い人間関係しか構築できないから、質より量を誇ってるだけなんじゃないのか?実際お前が何もなしえてないから、それを誤魔化すために人と会って何かやってる自分を演出したいだけなんじゃないのか?

二度とお前の薄っぺらい”なんかやってる感”に俺を巻き込むなよ。

というわけで、徹頭徹尾散々だったアムウェイとのサシ飲み。
ただ、何も得るものがなかったかと問われれば、そういうわけではない。
ズルズルと都合の良い飲み友達として利用されているということが分かっただけ上々というものだ。これ以上無駄なリソースを割かずに済む。

これは魔法使い化の未来に抗う気が折れた、アラサー童貞の記録である。


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